二次創作小説(紙ほか)

Re: 【角川つばさ文庫短編集】全ては君に逢えたから ( No.14 )
日時: 2015/11/15 00:50
名前: SUZU (ID: 4Sz5tcpQ)

【サトミちゃんちの8男子】

第4話『秋の新作クレープ』


「えぇ〜…いないのぉ?」

そう言いながら秋の新作クレープにかぶりつくカオルン。
生クリームを付けながら近づかないでね…

下校時間。白いタイルじきの道には色々な制服の子たちがいて賑わっている

あたし達はカオルンと一緒にここのお店のクレープを食べにきた。
秋の新作、和栗たっぷりマロンクリームクレープを頬張る二人

11月になり肌寒くなってきたからジェラートはもうやめたカオルン
やっとカオルンに付き合ってた私のお財布も少しは重くかるかな…と思ってたんだけど…
次はクレープですか…

カオルンは今日、うちに泊まりに来る
丁度ブンゴも友達の家に遊びにいくしソウスケもどこか遠くへ仕事しに行くから良い…とは思ったんだけど。それがカオルンにとっては全くよろしくないようで…

「う〜ん…帰ってきてっていえないのぉ?」

「言えば帰ってきてくれるかも知れないけどさ…無理だと思うよ?」

「ソウスケさんは仕事だからともかく、ブンゴ先輩は頑張れるっサトミちゃんがお願いすれば!」

あたしがお願いをすればって…どういう意味よそれ

マロンクリームをなめながら何やら顔を渋くしたカオルン
でも次の瞬間『ひらめいた!!』みたいな顔をして手を叩いた

「じゃぁ…さ、メールは?メールしてみたらぁ?」

「メール?」

「うんっ連絡先は持ってるんでしょ?」

そう言えば…一応連絡先は持っているけどいつも会えるし使う機会なんてほぼほぼ無かったな…

「ね?」

「うん……一応聞いてみるけどさ、無理って言われたら諦めてよね?」

「うんうん!!…ねぇそんなことよりさ、このクレープ焼いてくれてたお兄さん格好よくなかった?」

カオルン…
また目がハートになってるよ……

ほんと、甘いものとイケメンには目がないんだから…

カオルンはペロリとクレープを食べ終えて『もう一回買ってくる!!』なんて言ってアプローチをしにいった


あたしもあれだけ正直に……素直になれたら良いのにな…

Re: 【角川つばさ文庫短編集】全ては君に逢えたから ( No.15 )
日時: 2015/11/15 01:02
名前: SUZU (ID: 4Sz5tcpQ)


一旦家に帰って支度をしに行ったカオルン
帰り際に『絶対ブンゴ先輩に連絡してよね!!』って言われて…

もう、どうすんの!

「ただぁいまぁ」

「おかえりなさいませ〜」

キッチンからする食器を洗うカチャカチャという音と水の音に混ざってシノの高らかな声が聞こえた
声からして多分家にはシノとあとダイカがいるかいないか。
私は自分の部屋へ戻って携帯を覗く

ズラッと並んでる色んな人の連絡先。そんな中の下の方に山下ブンゴの文字が見えた

そこをタッチして画面を開く

と、急に胸がドキドキしてきた



何を送れば良いんだろう……


普段、ソウスケとかに送ってるように送ればいいのにどうしてだろう
物凄く考えてしまう

取り合えず呼ぶだけ呼んでみる


〔ブンゴ、いる?〕


送った後返信が来ないかもしれない、ウザがられるかもしれない何ていう不安感があたしをつつみこんだ

1分、2分と時間が過ぎていく

どうしよう…やっぱり迷惑だったかな…!?

すると、ブブッと携帯が鳴った


〔なに?〕


「…///」

なにって…たった2文字なだけなのに
鼓動が物凄く早くなり、顔が熱くなっていっているのが分かる

返信…きた…

途端に少しだけ嬉しくなったあたし
自分でもよくわからない

でも、また次、なんて送ろうか…とか
まだ返信するには早いかな…とか

また色々悩んでしまう

それであたしはまた思った通りに打った


〔今日…うち、帰ってこれない?〕

〔あの、カオルンが、来てて〕


5分くらいたった後、返信がきた


〔カオルンが来てるから帰んなきゃなんねぇの?〕


嘘、もしかして…怒ってる…!?
そんなことぐらいで呼ぶなって…言うこと?


〔あの、ごめん…やっ〕

そこまで打った時だった

〔サトミは俺に帰ってきて欲しいとか思わないの?〕

そんなメールが帰ってきた


意味がわからない

帰ってきてほしいよ
会いたいって思うよ

それは、家族だからとかじゃない
何か別の感情で
胸がふわふわするような少し不思議な感覚


〔話したいって思う〕

〔へぇ、そう〕


返信はこんな素っ気ないもので少し落ち込むあたし
指が思い通りに動かなくてただ画面をジッと見つめている

やっぱり…駄目だよね




そんなとき着信音が鳴った
画面には山下ブンゴの文字


「もしもし?」

「あ、俺」

「どうしたの?」

「メールより電話の方がめんどくさくないだろ?」


なにそれ



照れ?ワザと?
つんけんした態度とってるくせにブンゴだって案外照れ屋

「なんだよ?」

「なんでも!!」

頬が緩む

いつもみたいに話してるだけなのに
どうしてこう電話越しだとこんなに緊張してしまうんだろう

「ねぇ今日、帰ってきてくれるの?」

「しょうがねぇだろ、もう家の前きてんだから。それと…
クレープ、買ってきた」


クレープの香りが窓から入り込んできた
優しくてホッとするような甘い香り



—…いつもの声
  いつもの顔

そんな君に早く会いたくて、私は急いで玄関へかけていった

甘い甘いクレープを求めて



【完】

※本文中ではメールとありますがLINEのような物でやりとりしています
※本作品では特に携帯所持の有無などが詳しく書かれていないためその辺は私のオリジナルで作成しました