二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【角川つばさ文庫短編集】全ては君に逢えたから ( No.26 )
- 日時: 2017/06/26 01:36
- 名前: SUZU (ID: 4.2P0hz.)
「断固反対」
「意味分かってんの?」
「危険です」
上から王子、エンマ、しおりちゃんの順で色々と言われていますが…
「そんなにダメ!?」
「「「ダメ」」」
「いや、確かに漫画の為だけに部活休むってのはいけないってのは分かってるけど!」
「「「(いや、理由はそれじゃない)」」」
「トウマ先輩の漫画無くなったらそれこそ危機だよ!?」
皆もトウマ先輩のアノ性格知ってるでしょ?
なんで納得してくれないの!?
「………ったくイチゴパンツは無防備すぎんだよな」
「…なんでそこで俺を見る」
「黒崎君も大変ですねぇ」
「お前らなぁ…!! 」
むぼーび?
エンマ達がゴチャゴチャ言ってるけど…でも、何を言われようが私は勉強会に行かなきゃならない!
そう、全てはパーティーの為に!
「ってな訳で、明日から私は少しの期間部活には来ないので!」
「おい!待てイチゴパンツ」
「話は終わってないですよ!?」
あぁもうっ…
なんでこんなにも反対されなきゃなんないの!
「ゆの…」
嫌そうな顔をしながら私の名前を読んだ王子
いくら王子の頼みだってこればかりは聞けない
「ごめん!!」
「あ、おいっ!!」
エンマの声が聞こえたけど私は走った
………大丈夫…だよね?
*****
「あれ、ほんとに待っててくれたんだぁ」
「待ってましたよ …!!」
勉強会当日。
あれから エンマには睨まれるし、しおりちゃんは『青木トウマに大地の災いを…』とか言ってるし、王子に関してはもう…なんか様子おかしいし
散々だったって言うのにこの人はこうヘラヘラと…
「まぁ…取り合えずさ、勉強は置いといて〜 」
「置いとくんですか!?」
「う〜ん、ゆのちゃんは…僕のこと嫌い?」
「いえ、別に…なんですか急に」
キラキラと王子様スマイルを張り付けるトウマ先輩
その笑顔は何だか何かを探るように見えた
「僕ね、漫画なんて地味で初めはすっごぉぉぉっくやりたくなかった」
ですよねー。
孤独で地味な努力が死ぬほど嫌いなトウマ先輩ですもんねー。
「でも、今はなんか…嫌じゃないよ?それはなーんでだ?」
「……達成感が気持ちいいから!?」
「えー…なにそれギャグ?」
なっ…世界中の努力してる人に対しての無礼ですよそれ!!
ギャグって…大真面目ですけど!?
「正解はぁ…」
ピッと私のおでこにトウマ先輩の人差し指がささる
「ゆのちゃんがいるから」
「へ?」
「……ゆのちゃんがいるだけで面倒な事も楽しくなってきた」
真っ直ぐに私を見つめるトウマ先輩
思わずトウマ先輩から視線を外そうとうつ向いたとき
突然、胸元のリボンをグイッと引っ張られた
…顔が近い!
「ゆのちゃん、好き。付き合ってくれないかな」
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
散々下僕下僕言ってきたトウマ先輩が?
女の子のことは小鳥ちゃんとかよんでイチャイチャしてた人が?
私なんかに告白ぅぅぅうっ!?
で、でもあれだよね?ほら、西園寺生徒会長とかエンマみたいに何か事情が…
「アノ二人とは一緒にしないでよね」
「いっ…」
「……ハイって言わないとキスするよ」
それは強制尋問というのではないですか?
冗談混じりにそう言おうときたけれど…
やっぱり、本気だ
「どうすんの?」
「………王子…(ボソッ」
「へぇ…この期に及んで他の男の名前ねぇ…」
「っっ…!!」
なんだろうっ
無償に嫌だ
そしてさっきから王子のことばっかり脳裏を横切っていくのはナゼ?
「王子っ!!」
ガラッ
「ハァハァハァ…お前っだから言ったろ馬鹿!!」
「王、子…?」
息切れをしてクタクタな姿の王子
髪はクシャッとしていて今にも崩れ落ちそうな様子
「先輩、遊びにも度が過ぎます」
「は?僕が遊びで告白するとでも?なめてんの」
「……なら尚更、ゆのをこのままにしておけない」
すると急に王子はポッケから何かを取り出した
そして途端にそれを撒き散らした
出てきた物体は小さく、高く跳び跳ねてとてもカラフル……って
「「スーパーボール!?」」
「行くぞゆの!!」
「うぇっ!?」
腕を強く引っ張られて思わず変な声がでた
トウマ先輩はスーパーボールに気をとられている
この隙にってことか
さすが頭がいい…
教室をでる時、振り替えってトウマ先輩を見るとどうしてか手を顎に当ててニヤリと微笑んでいた
*****
「はぁ…………っ馬鹿!!アホ!!無防備!!とんちんかんっ!!」
「そ、そこまで言う!?」
王子は屋上にでるなり私に罵声を浴びせた
とんちんかんって……
「そこまで言うほど心配させたのはどっちだ!」
「スミマセン……」
「はぁ…あんだけ言ったのに…」
ちゃんと、皆の言うこと聞いてれば…なんて今更後悔しても遅い
現に王子に助けてもらわなければキスされてたかもしれないし!?
「あのさ…お前は、どうしていつもそう…………あ"ぁっ…違う!」
髪をクシャリと押さえて苦い顔をした王子
そして、さっきのトウマ先輩みたいな真っ直ぐな目を向けた
「そういうことか言いたいんじゃないっ…!」
「は?」
「…………好きだ、ゆの」
は?え、……はい?
「なに、ドッキリ?」
「…………勇気振り絞ってコクったのになにそれ、怒らしたいの?」
「ち、違っ…」
「いい?付き合ってっていってんの」
あぁもう…何でこんなことになるの!?
でもどうしてかトウマ先輩の時よりもほんのすこし
ほんのすこしだけ、嬉しいかもしれない
ほんのすこし………だけ、ね
パチリと目が合う
答えは…決まってる…………
「あt「はい、しゅーりょーっ」」
え?
突然後ろから出てきたトウマ先輩
は?
「うんうん、良いねぇ黒崎君も突然ごめんねぇ」
「パーティーの為とか言われちゃやるしかないですよ」
待って、頭が追い付かないんですけど
「あー、ゆのちゃんごめんねぇ」
「トウマ先輩?」
「いい材料になったよ!」
ザイリョウ?
意味がわからないんですけど?
「だからいったじゃん、初めから…漫画のネタのために勉強会をしたいって。ネタ集めだってば」
はい?
じゃあなんですか…いままでのは全て…………
「演技!? 」
「当たり前じゃん。僕がゆのちゃんに告白って…笑わせてくれるよね笑」
「王子も!?」
「まぁ…」
よかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………
なにこの脱力感
でも、これでトウマ先輩は漫画を書いてくれる!
よぉっし
結果オーライ?
「ま、どこまでが演技か分かんないけどねぇ☆」
「…っ」
「僕は黒崎くんにゆのちゃんを助けてとしか言ってないのにねぇ。ま、面白かったからいいけどさ」
トウマ先輩が王子に何か言ってるけど…ま、いいか
──でも、ただ少し思うんだよね
もし演技じゃなかったらって
どうしてだろう
ほっとしている筈なのに
少し胸が痛んだ
アノとき言われたアノ言葉…私は2度と忘れない
《…………好きだ、ゆの》
《あたしもだよ、王子》
[完]