二次創作小説(紙ほか)

Re: 【角川つばさ文庫短編集】全ては君に逢えたから ( No.3 )
日時: 2015/11/02 23:35
名前: SUZU (ID: 02GKgGp/)

【イケカジな僕ら】

第1話『昔も今もこれからも』


「は?泊めろって…お前んちすぐ隣じゃねぇか」

「……いや、その…ほら今家に誰もいなくて…」

「そんなの今に始まったことじゃないだろ、昔だって何回か一人で留守番して、俺んち来るかっつってもお前は頑固で留守番できるっとか言い張って…そう…その度に余計なことしでかして俺に泣きついてきた…ってまたか!!」

「んなわけ無いでしょ!?」

私の前でちらつくブラウンの髪
マリン系のスーッとした香り
整った顔立ちに高い身長

これが私の幼馴染みでお隣さんの井上一弥

顔は良いけどすっごくチャラい
ほら、煽られて調子乗るタイプって言うか…

ま、根は真面目で優しいんだけどね

そんな一弥の幼馴染みの私は立川葵。
ママの言ったステキな女の子を目指すべく、今は家事力を上げるためにイケカジ部っていうのに入ってるんだ

あ、それとこう見えて有名モデルになるためにも特訓中なんだよ?
今は色んな事情でモデルの活動はできないんだけどいつか絶対皆をアッとさせる有名モデルになってみせるんだから!!

…で、こんな私がどうして一弥んちに泊めてもらいたいかというのは…




出ちゃったんです。アレが。

ほら、サッと素早く動いて黒光りの鎧を身に付けたあの恐ろしいm「もしかして、ゴキブリでも出たのか?」

……

「馬鹿っなんで言っちゃうの!!」

「嘘、マジで?お前…朔太郎さんがいないからってお菓子とか開けっぱにしてたんだろ」

「どうして知ってるの!?」

もう、昔からなーんでもお見通しなんだから…
いくら泣き虫だったとは言え、勘だけはほんっと良かったよね…

「図星かよ…で?だから俺んちに?」

「お願い一弥っパパが帰ってくるまでは一緒にいさせてっ」

「お前っ…そういうこと他の男には言うなよな!!」

「え?」

頬を赤らめた一弥。
ぷいっと目を反らされる。

もう、最近こう言うこと多いんだよなぁ一弥。

「……ま、いいけど。上がれよ」

「やった!!昔もやったよねこうゆうお泊まり会!」

「お泊まり会って…あ、今日は俺んちも親いねぇから………あ」

そう言ってまた赤くなる一弥。
いったいどうしちゃったの…熱でもあるんじゃない?

「えっと…じゃ母さんの部屋使えよ」

「えーっ折角だし一弥の部屋で寝たいっ」

「何?お前は俺に何をさせたいわけ?」

「は?」

「あぁもぉぉぉ…これだから葵は無防備って言うか危なっかしいんだよなぁ」

「意味わかんないしっ」

一弥は私と会うと必ず溜め息を5回以上つく
ほんと、意味が分からない!どうして私が駄目な子みたいになってるのよ!

Re: 【角川つばさ文庫短編集】全ては君に逢えたから ( No.4 )
日時: 2017/06/26 01:34
名前: SUZU (ID: 4.2P0hz.)

そんなこと話してるとふとキッチンから良い香りが漂ってきた。
嘘?まさか、一弥が料理!?
イケカジ部入ってからなんだかんだ言って一弥の家事力もUPしてきてるんじゃない!

「いったい何を作ってたのかな?…って……」

リビングに置いてあったのはコンビニで売ってるカップラーメンだった。

「お前、俺に何を期待してたんだよ」
「いや、一弥の事だから和食とか洋食とかパパーッとこなせちゃうかなー…なんて」

言葉の最後の方で無意識に目を反らす私。
一弥がはぁっと溜め息をついて私を軽ーく睨んだ

「悪かったなカップラーメンで」
「い、いや!!美味しいしねっそれにお湯沸かせるなんてすごいじゃんっ」
「馬鹿にしてんのか?」
「い、いや…だって!」
「まぁそうだよな、お前は小五まで一人でお湯沸かせなかったもんな」
「うるさいっ!!だってあれは一弥が火傷したらいけないって私にヤカン触らせてくれなかったんだもん」
「その前にお前がヤカンの中に、暖まったかな?とか言って指突っ込もうとしたかだろ!?」
「だって分かんないじゃん!」
「暖まったら沸騰するっつったじゃねぇか!」
「沸騰ってなにか分かんなかったんだもん!」
「ブクブクって言えば良かったのか?え?」
「言えば良かったのよ!」

「「はぁはぁはぁ…………」」

言いたいこと言い過ぎて二人とも息が切れる

もう、大体一弥が子供なんだって、何でも言い返してきてさ
でも、もうそんなの慣れっこ

「…ラーメン、伸びちゃうよ」

「あ、いけね…葵その辺の食っといていいぞ」

「うん、あ、卵と鶏肉があるよ!これで親子丼……」

「作りません」

私はカップ焼きそばを手に一弥が沸かしたお湯の残りをカップへ注いだ

昔から…変わってないな、なんて思ってた一弥の背中はすっかり大きくなっちゃって、椅子に乗らないと届かなかった水道も今では軽々届くようになった

今まで色々あったし、乗り越えてきたけど来年もこうして一弥といられるのかな…

「ちょ、おいっお湯入れすぎだ馬鹿!」

「あっちょっ…えっどうしよ!?ねぇどうしよ一弥!!」

「ほんと、お前は俺がいないといつもこう…いつまでも俺に頼ってんじゃねぇぞ」

「…………そんなの分かってるもん」

分かってるけど…やっぱり、そんなの…なんか、嫌だ…………
一弥がどんどん離れていっちゃうみたいで嫌だ

「……それとも、俺と…ずっといたい?」

「はっ!?////」

顔が熱い、心臓がうるさい。
どうしよう…すごいドキドキしてる……

「ごめん、忘れて」

「無理!」

「は?」

自分でも何いってんのか分からない……
…けど、私の口が勝手に動き出す

「忘れない。それに、ずっといたいもん。一弥に頼るななんて言われても頼るし、来るなって言われても行くから!」

「……………バーカ。来るななんて言う分けねぇだろ」

クシャッと笑う一弥
その笑顔に私は少しだけホッとする

「それに、俺にはお前を撮るっていう使命もあるしな!」

「そうだよ!!!…私が有名モデルになるまではずーっといてもらわないと困るんだから!」

「そ。ま、それまでにお前は焼きそばを作れるようにしとけよな」

「ち、ちが…今は考え事してて!」

「言い訳すんなー」

「してない!」


──昔から支えてくれてありがとう
  今も見守ってくれてありがとう

  これからもずーっとよろしくね

【完】