二次創作小説(紙ほか)

Re: 【角川つばさ文庫短編集】全ては君に逢えたから ( No.6 )
日時: 2017/06/26 01:34
名前: SUZU (ID: 4.2P0hz.)

【怪盗レッド】

第2話『無人島』


「もしも、無人島に1つだけ持っていくとしたら何持ってく?」

午前中の授業が終わって昼休み
教室ではクラスメイトがあちこちで机をくっつけてお弁当を広げてる

「私はやっぱり食べ物だと思うんだけど腐るかもしれないし食べ物っていっても何を持っていけばいいんだろう…ねぇアスカどう思う?」

向かいに座る実咲が思い悩んだ顔でこっちを見た
いや、そんなこと言われても…無人島に行く機会なんてあるわけないし



…なんて、そうも言えないんだよね
なんせ私、紅月飛鳥…こう見えて、あのかの有名な怪盗レッド2代目なんだから!

正義の泥棒なの。盗まれたものを盗み返して元に戻す…みたいな?

まぁそんなこと実咲に言えるわけないしね…

「どう思う?って言われても…ケイはどう思う?」

取り合えず私は後ろで本を読んでいるケイに話をふった

そうそう、この歩く計算機みたいなコイツ…私の従兄弟なんだけどさ。
コイツも怪盗レッドなんだ、なんていうの?指示担当的なやつ!!

だからすっごい頭がいいらしいの、IQ200だとかなんとか

「どう思う?って言われても…春川さんは?」

あ、今絶対ケイめんどくさくて流したな

「えっ…私は…その、実咲ちゃんはどう思うの?」

「うーん……て、戻ってきちゃったよ」

美咲の軽いツッコミに私と優月は同時に笑いだす
ケイは相変わらず鉄仮面だなぁ…レッドの時は大分性格変わるのにねぇ

「ま、まずはあれだ、火が欲しい」

「わーアスカらしい野性的な考え」

「馬鹿にしてる?」

もう、実咲は分かってないなぁ食べ物なんて無人島のどっかの木になってるってば
やっぱ火だよ!火!

「火かぁ…そうだね、明かりにもなるしね」

「うんうん!そうだよっ優月の言う通り!」

「そっか、明かりね…真っ暗だと気分まで暗くなっちゃうもんね」

「そうそう、実咲もやっと分かってくれたか」

「優月に肯定したんです!」

でも気分まで暗くなるのは本当に困る
ほら、病も気が大事とか言うでしょ?

「………明るい…か」

「ん?なんか言った?」

実咲と優月ちゃんが二人で話し合ってるとき、ふとケイがつぶやいた

「なら僕は……アスカがいれば何もいらない」

「……っ」

何だろう

どうせまた馬鹿にしてるんだろうけど
どうせまた動物みたいにうるさいからとか言うんだろうけど

なんだかすっごく顔が熱い

「アスカだけでいい……」

ボッ

そんな効果音が聞こえた気がした

いつも無口で口を開いたと思ったら勉強のことばっかしか言わないケイがこんなことを言っている
本当にどうしちゃったの?


なんとも思ってないでいってるんだろうけど
物凄く照れるからやめて欲しい

ねえケイ、

もし私がケイと同じこといったらケイは照れてくれるの?



──私もケイがいれば何もいらないよ





言えないその言葉

そっと胸に隠しておこう

【完】