二次創作小説(紙ほか)

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.141 )
日時: 2016/08/18 12:47
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 「ライリー。一緒に次の授業へ行きましょ……『魔法史』よ。本当に最悪だわ。だって、あの授業とっても眠いんだから!」
 「でも寝てても全然怒らないしいいけどねー。ほら、どうしたの、ライリー。早く行かなくっちゃ!」

 『呪文学』が終わった途端、後ろの席のパーバティとラベンダーが、ライリーに声をかけてきた。それを見て、ハリーとロンは「ばいばい」と言って他の男子達(さっき羽を爆発させてしまったシェーマスとディーン)に声をかけて教室を去った——ロンはハーマイオニーに悪態をつきながら。
 ライリーは複雑な気持ちでそれを聞いていた。

 「このスカーフとっても可愛いでしょ?同じ柄の、ラベンダー色の物も持ってるの!こうやってカチューシャみたいに巻いて、髪の毛は緩く二つ結びにすると可愛いのよ!」
 「ポニーテールの方が可愛いわよ。活動的で爽やかだし」
 「あー、でも確かにラベンダーはポニーテールが似合うと思うよ。今度ポニーテールにしてみたらいいんじゃないかな。絶対可愛いって」

 三人は、そんな風に女の子らしい話をしながら(これがライリーにとってはかなり新鮮だった)眠いと悪名高い『魔法史』の授業に向かった。
 ライリーがやっと、ロンの悪態の時の複雑な気持ちを忘れかけてリラックスし始めた時——それは起こった。

 「——それに『レビオーサ』よ!貴方のは『レビオサー』!」
 「はははっ、グレンジャーにそっくりだ!」
 
 ライリーの後ろから、ロンたち一行が笑いながらやってきたのだ——ハーマイオニーの悪口を言いながら。
 パーバティとラベンダーがぎょっとし、ライリーがぽかんと口を開けているのにも気づかず、ロンは更にハーマイオニーの悪口を言った。
 
 「あいつにそっくりでも、全然嬉しくないけどね、シェーマス。僕物真似の才能はあるんだよ——でも酷いだろ?本当、あいつって悪夢みたいなやつだ。唯一の友達だったライリーにまであんな事言ってさ、ライリーでさえ友達じゃなくなった。誰があいつなんかと友達になりたいと思う?」
 
 すると、ハリーはライリーに気づいたらしく、神妙な面持ちで、ロンに「さすがにそれは言いすぎだよ……僕のパパがクィディッチ選手だって、教えてくれたのはハーマイオニーだし」と言った。
 だが、ロンはそんな事に聞く耳を持たない。

 「ライリーだって、あんな奴とオサラバ出来て喜んでるさ」

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.142 )
日時: 2016/09/25 15:40
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 「私、ライリーは髪を伸ばしたら三つ編みにするべきだって思うわ……」
 「え、ええ。三つ編みの一つが特に似合いそうよ。ハッフルパフのスーザン・ボーンズとか……ハンナ・アボットみたいなのも良いわ」

 明らかにライリーを気遣って話題をそらそうとする二人に、ライリーは「ありがとう」と言ってから、重なってだいぶ重くなった教科書を持ち、ロンの方に近づいた——何をする気か、パーバティ達は一瞬にして理解した。
 そしてその時、ハーマイオニーがハリーにぶつかって、泣きながら通り過ぎていくのに、ライリーは気付かなかった。

 「い、痛いわよ?ロンが……さすがにそれはやめた方が……」
 「そうよ。ウィーズリーの言葉って意外と正しいし!だってハーマイオニーって感じ悪いじゃない。ライリーが謝ったって、無視だし。勉強ばっかり!お節介だし、私たちだって『あんなの』がルームメイトで最悪なのよ」

 ライリーは、ハーマイオニーに関する悪口を言い続けたラベンダーを一睨みし(この後ラベンダーはパーバティに叱られていた)、とうとうロンを、重ーい教科書でひと思いに叩いた。——ライリーの目は、真っ赤になっている。

 「最っ低だ、ロンなんか大っ嫌い!笑ってた皆も!最低!」

 そう言って、ライリーは駈け出して行った。『魔法史』の授業がある教室とは真反対の方向だ。「ライリー!」ロンとハリーが追いかけようとするのを、パーバティが止めた。

 「……今は多分、ライリーは、ただ涙が枯れるくらい泣いてた方がいいわ。その方が、頭もすっきりするから。泣き終わった後、励ませばいいの。『魔法史』の授業なんて大した事ないし。テストに出そうな事は貴方達——特にロンよ!兎に角貴方達がきちんと書き留めればいいの。ライリーを泣かせた罰よ。それと、ライリーは体調不良、って事にしとけば、ビンズ先生も納得するでしょ。行きましょ、ラベンダー」

 そう言って颯爽と去っていくパーバティを、ディーンは見惚れながら、ロンは若干恐れ慄きながら、シェーマスとハリーはぽかんとして見ていた。

 「僕達も一応起きて受けた方がいいよな、ディーン」
 「僕等も泣かせたうちの一人だしな、シェーマス」
 「「まあ、ロンほどじゃないけどな」」
 「うっさい!」

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.143 )
日時: 2016/08/19 08:39
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 それから、散々人に見つからないような場所で泣いた後、結局ライリーは部屋の、自分のベッドにこもってまた泣いていた。——此処で寝坊して、ハーマイオニーに叱られたりしたっけ、なんて考えるともっと涙が出てくる。

 「貴方は本当は才能があるの!」

 ハーマイオニーばっかりが、ライリーの頭を独占している。ハーマイオニーが、ライリーの心のど真ん中に居座って離れないのだ。
 ——ハーマイオニーはこの言葉を、何回、いつ、どんな時に言ったっけ?

 「もう!全然できてないじゃない、ライリーったら。仕方ないわね」
 「此処は授業中マクゴナガル先生が仰っていたわ」
 「——ほら、動物と話せる事よ」

 その瞬間、ライリーは餌をあげる以外特に何もしていなかった哀れなペット、シュシュの存在を思い出す。ベッドのそばに置いてある、おばさん特製の猫籠の中に、シュシュは入っている。
 猫籠の戸をあけて、シュシュを抱き上げて見る。
 ——ライリーはまるで、シュシュの事を何も知らなかったみたいな気持ちになった。
 ただの黒猫だと思っていたシュシュは、実はすっごく毛並みがフカフカしてて気持ち良くって、黒じゃなくて、グレーや青みたいな、いろんな色の毛で、瞳はとっても綺麗な黄色だ。

 〈凄い綺麗な色だね、シュシュ……分かるわけないか〉
 〈あんたの色も綺麗だけどね、飼い主さん。ううん、ライリー〉
 〈喋れるの?〉
 〈うん。こっちこそ、あんたがこっちの言葉を理解できる事に驚きだよ——ずーっと話しかけてくれなかったから、分かんなかったし〉

 それから、シュシュはいろいろな事を話してくれた。マクゴナガル先生とミセス・ノリスと、シュシュは友達で、夜中にこっそり会ったりしているという事や、この猫籠をとっても気に入っている事。
 ライリーは、涙を拭いて、笑顔でシュシュと話していた。
 
 〈それとさ、あんた……ハーマイオニーって子は、良い子だよ。あんたの事で悩んでる。あんたの事を思って、行動してるんだ〉
 〈……どういう事?〉
 〈あの子はね、時々私に相談してくるんだ。勿論猫の言葉なんか分かんないけどね、皆が寝た頃に。「ライリーは、ハリー達といた方がいいわよね?私は邪魔よね」って。あんたに嫌われようと頑張ってたんだ〉

 シュシュの言葉に、ライリーはただ、口をあんぐりと開けて驚く事しかできなかった。

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.144 )
日時: 2016/08/19 08:41
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 〈『魔法薬学』の時、あの子は確かに怒ってた。でも心配もしてたんだ——ただ、素直に伝えるやり方が分からなかっただけで。それから、喧嘩して。こう言ったんだ。私、ライリーにとってお節介で邪魔な存在ねって〉
 
 そんな事ない、ライリーの消え入るような小さな声は、開けっ放しの部屋の窓から吹いた風に消された。シュシュは、黄色い眼で、じっとライリーを見ている。

 〈ハリー達といる時のライリーの笑顔が、一番ライリーらしい。だったら、私は邪魔だから。でもライリーは仲直りしたがってるし、どうすればいいか分からない。無視しちゃったの——〉
 
 シュシュはまた、ハーマイオニーが言った言葉を伝える。ライリーは息苦しいくらいに声をあげて泣いていた。自分が如何にハーマイオニーの事を考えて無かったか、今頃やっと気付いたのだ。

 〈きっとライリーに嫌われたわ……そうよ、嫌われちゃえばいいの。そうしたら、ライリーは罪悪感なくハリー達と笑いあって、楽しい学校生活を送れるの。勉強だって、きっとパーバティが教えてくれるわ。だってあの子、意外と頭いいもの。フレッドやジョージだって、上級生だし。

 私は、ライリーに必要ないの。〉

 ライリーは「そんな事ない!」と言いながら泣いていた。ハーマイオニーは、ライリーの事をよく考えてくれてたんだ。それなのに、まるで、自分だけが被害者みたいで。ハーマイオニーの事を責めていた。

 〈どうすればいいかな……私〉
 〈——あのお真面目さんは、多分いっつもふざけてないだろ?ハロウィンくらい、羽を伸ばさせてやんなよ——悪戯でも仕掛けて。あの、あんたと仲の良い赤毛の双子達と一緒にさ。ちゃんと自分の意思を伝えるんだ〉

 ライリーは、小さく〈うん〉と頷いて部屋から出た。
 ずっと泣いてたんだから、相当な時間が過ぎているはずだ——きっと、フレッドもジョージもリーも、談話室で煩く騒いでるだろう。
 恐る恐る、階段を下りる。

 「あっ、ライリーじゃないか!俺だよ俺、リー」
 「分かるよリー。フレッドとジョージは?」
 「……あー、一応極秘なんだけどな……まあいいか、言っちゃおう!実はさ、今日はハロウィンだから、悪戯カップケーキを作りに厨房に行ってるんだよ——あ、俺が配る係ね?俺、三人組の中では比較的周りからの信頼高いし」

 それからライリーは、リーに教えられ、双子がいる厨房へと向かったのだった。