二次創作小説(紙ほか)
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.154 )
- 日時: 2016/08/18 21:25
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
第二十四話 トロール
「ハーマイオニー!私だよ、ライリー・アークロイド!」
トイレに入るなり、ライリーは一つだけ扉が閉まっている個室に、大きな声で呼びかけた。ずずず、っとすすり泣く声が聞こえる。絶対に、ハーマイオニーだ。
「何よ、アークロイドさん。……うっ……私、貴方なんかと、うっ、話す気っ、なんって、ないんだっから!帰ってよ、からかいにっ、来たんでしょ」
「違うよ、謝りに来たの」
ライリーは、さっきとは打って変わってしんみりした声で言った。——ハーマイオニーはやっぱり、自分に嫌われようとしている。本当は、そんなのしたくないのに。そう思うと、ライリーの心はちくりと痛んだ。
「私、すっごく子どもだった。ハーマイオニーの気持ちなんて考えてなかった。私、自分だけが被害者ぶって、ハーマイオニーの事酷い人だって、最低だって思ったら楽になるって思ってた」
「……そう思えばいいじゃない」
「嫌だよ、そんな風に思えないもん。真面目でお節介で面倒臭いハーマイオニーの事、そんなふうに思えない。だって、友達なんだから!」
そう言って、ライリーが大きな声で泣き始めた——ハーマイオニーはとても嬉しくって、泣き始めた。「友達」だなんて、そんなふうに思ってくれてたのが、嬉しくって。自分を探してくれたのが嬉しくって。
「シュシュから全部聞いた。話せたんだよ、シュシュと。ハーマイオニーの言葉、思い出したんだ。ハーマイオニーのおかげだよ?勉強が嫌いで、面倒臭がり屋で、馬鹿で、情けない私だけど、ハーマイオニーと友達でいたいから、探したんだよ。お菓子も持ってきたからさ」
ライリーはそう言って、フレッドからもらったお菓子を個室に投げ込んだ。——なんの悪戯かは分からない。ライリーもお菓子を一口で飲み込む。これでハーマイオニーを笑わせられるのなら十分だ。
「……美味しいわ、とっても甘くて。ライリー、私にゃ?にゃ、にゃに?にゃんにゃの、これ!?ちゃんと喋れにゃいじゃにゃい!」
「えー、それ猫になっちゃうお菓子かあ……私のはにゃんだろう?えっ、どどど、どうしてこんなところに耳が?にゃんで?」
驚いたハーマイオニーがトイレから出てきた——頭の上に耳が生えて、頬に髭が生えている。それから尻尾もだ。どうやら、ライリーも同じ姿になってしまっているらしい。二人はお互いの姿を見て笑いあった。
「ははっ、ライリーったら……!もう……ふふっ!」
「にゃんでこんにゃ事にぃ……フレッドの奴!」
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.155 )
- 日時: 2016/08/19 09:48
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
「もう、これからは喧嘩はしにゃい!見栄も張らにゃい!」
「私も。もう、嫌われようとしにゃいし、ちゃんと自分の気持ちを言う……というかライリー、あにゃた、どうして、そんにゃ格好してるの?かぼちゃの帽子に、オレンジ色と黒のワンピースなんて!」
「ハロウィンだからだって!さっきまでフレッド達と暴れまわってたんだ、トリック・アンド・トリートってさ」
もう、にゃにやってるの!——とハーマイオニーが笑い、ライリーも笑い、そしてようやくトイレを出ようとした。だが、出入り口は塞がれている。——何故って、目の前に、棍棒を持った、薄汚くて、とってもでっかい生き物がいるからだ。
〈貴方、誰?……あっ、仮装ね?とっても凝ってる、凄い!〉
〈あれ、俺は何でここに来たんだ?〉
〈えーっ、貴方男の子?此処、女子トイレだよ?〉
〈俺の飼い主は、何をしてもいいって……〉
〈飼い主?〉
「ライリー!にゃにをやってるの?急いで!」
「だって、仮装でしょ?」
「仮装じゃないわ……本物の怪物、『トロール』よ!」
ハーマイオニーのその言葉に、「へ」と間の抜けた返事をしつつも、ライリーはハーマイオニーに手を引かれる方に逃げた。
「どうしよう……」とライリーはハーマイオニーに呟いた。
「ハーマイオニー、ごめん!……え、ライリー?」
「——大丈夫!?あー、えーと……何故に頭に耳が?」
ライリーが不安に思ったその瞬間、ハリーとロンが急いで現れた。それから、ライリー達の耳や髭、それから尻尾を見てかなり、驚いているようだ。
ハーマイオニーはそれが恥ずかしいのか、耳と髭と尻尾を隠そうと躍起になっているが、ライリーは耳だけを隠した。
「二人とも、にゃんでここが分かったの?っきゃあ!来ないで、今、杖を持っていにゃいのよ!?」
「馬鹿、そんなのトロールに行っても分かるわけないだろ!——というか、君達のその格好、とってもマーリンの髭さ」
こんな場面でも人を笑わせられるって君達凄いよな、だとか何とかロンが言い、ハーマイオニーは少し笑いながらそれを否定した。「君達じゃないわ、ライリーだけよ!」
「って、笑ってる場合じゃないよ!僕達、何かしなくっちゃ……追いかけられたままで死んじゃうぞ……うわっ!」
「きゃあっ……凄いわ、ライリーが悲鳴をあげてにゃいわ!って、にゃいてる(泣いている)じゃにゃいの!落ち着きにゃさい!落ち着いて!」
「君、この期に及んで僕を笑わせる気かい?……ライリー、君どれだけ臆病なんだよ。君だって、帽子に選ばれたグリフィンドール寮生だぞ」
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.156 )
- 日時: 2016/08/19 09:50
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
「帽子に選ばれてなんかにゃいよ、私……うっ……きゃあ!?」
〈俺は暴れていいって言われたんだ。お前を捻り潰しても大丈夫だ〉
〈何で?何でそんな事するの?私、貴方に何もしてないのに〉
ライリーはトロールにひっ掴まれ、潰されそうになりながら尋ねる。——ハリーとロン、勿論ハーマイオニーにも、「今はこの子に何もしないで」と言ってから。
〈うるさい黙れ、お前なんか……〉
「『エクスペリアームス!』大丈夫か、ライリー?」
トロールが頭から後ろに倒れ、棍棒を同じく倒れ、ライリーはその衝撃でトロールの手から解放された——フレッドだ、フレッドが助けに来てくれたんだ。ライリーはふっと安心してフレッドのもとに駆け寄る。
「うわっ、このバカちん!馬鹿ジョージ!」
「フレッドだって……それと、今頃だけど、お前って全体的に……言い方古いよな。いまどき『バカちん』なんていう十代いないぜ?……え?」
「トロールが興奮して暴れだしてる!……うわーっ!離せ!」
どうやら、さっきの呪文でトロールが更に凶暴化してしまったらしい。今度はハリーをひっ掴んで暴れている——「ほーら、こっち来いよ馬鹿!もう一回さっきのやってやるぞ!」フレッドが笑いながら走り回る。
「やめにゃさいよフレッド、危にゃいのよ!」
ハーマイオニーが慌てて、フレッドに叫ぶ。トロールの標的がフレッドになりかけている——危ない、とライリーは思った。
〈お願いだからハリーを離して……友達なんだよ。フレッドも〉
〈そんなのは知らない、お前らは俺をぶっ飛ばした!〉
〈ごめん!でもハリーはそんな事してないし、フレッドも勘違いだよ……それに、貴方だって暴れまわってるし。ハリーをひっ捕まえる前に、わ、私を殺してよ!それから皆には何もしないであげてよ〉
〈分かった、コイツを殺してから皆を殺す〉
どうやら、トロールに理屈は通じないらしい。ライリーは溜息をついた……それに半泣きどころかもう完全に涙が零れてしまっている。溢れて止まらない、今日はどれだけ泣けば気が済むんだろうか。
でも、このままトイレで死んで行くなんて嫌だ。
ハリーはトロールの頭によじ登ってぽかぽか殴っているが、あまり効果は無い——トロールが、ハリーを殺そうと棍棒を振り上げた。
「ハリー、ちょっと待って!今そっちに行くから!」
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.157 )
- 日時: 2016/08/19 10:01
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
そう言うなり、ライリーは『トロール』の足に掴まって、出来るだけ『トロール』の邪魔になるように頑張った——くすぐったり、かぼちゃの帽子で殴ったり——だが、どれも効果は無かった。
「ビューン、ヒョイよ、ロン!ビューン、ヒョイ!」
「『ウィンガーディアム・レビオーサ』!」
ロンは、トロールの振り上げた棍棒を浮かせ、それから落とした。すると、『トロール』は自分の棍棒の衝撃に耐えられなかったのか、また頭から倒れた——まさか、死んでは無いはずだ。
それからハリーは、トロールから解放され、自分の、トロールの鼻の穴に突っ込んでしまった杖をロンのローブで拭いてから(「こらっ、何すんだよ、ハリー!」)安心したように溜息をついた。
「ロン、凄いわ。呪文、出来たじゃにゃい」
「……ま、まあね。君のおかげだよ、ありがとう」
「ええ、助けてくれてありがとう」
それから二人は前の様な険悪な雰囲気ではなく、まるで仲の良い友人の様に——いや、今そうなったのだ——笑いあっていた。フレッドは、腰を抜かしたライリーを抱きかかえ、ハリーは何だか気まずそうにもじもじしていた。そして、視線をライリー達から逸らし……その目が二人の男子生徒を捕らえた。
「あっ、ジョージとリーだ!」
「おっ、トロールは片付いたか?ちょーっと遅かったな、実況仲間のマクゴナガル先生と、『親愛なる』スネイプ先生を呼んできたんだけど」
「私は貴方の仲間ではありません、大体貴方のクィディッチの実況はえこ贔屓が過ぎます!——まあ、なんと……」
「これを、この五人がやったと」
マクゴナガル先生は気絶したトロールを驚いて見つめ、「『山トロール』の中でもかなりの凶暴種です、本来なら大人が五人集まって倒すレベルですが……」とやはり驚いたように言った。
「……で、一体全体、あなた方はどういうつもりなんですか。殺されなかったのは運が良かった。寮にいるべき貴方達がどうしてここにいるんですか?」
「俺が悪いんです。俺、あの、ハロウィンだから……えーと、その、トロールを捕まえてホグワーツの天井から吊るしたら面白いんじゃないかと思って。四人は俺を探しに来ただけで……」
しどろもどろになりながら、フレッドがそう言った。マクゴナガル先生を含め、その場にいる全員が「はあ?」という顔をしている。
——こんな嘘でバレないと思ったのかよ、とリーは爆笑していた。
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.158 )
- 日時: 2016/08/19 10:17
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
「違うんです……私が全部悪いんです」
ハーマイオニーがしゅんとした様子でマクゴナガル先生の前に進み出た。どういう事だ、とハーマイオニー以外の全員が眉をひそめた。特にマクゴナガル先生とスネイプ先生はさっきのフレッドの事があって余計混乱しているらしく、とっても険しい表情をしていた。
「私……トロールについてはよく本で読んでいました。正直、それ程知能が高くないし、一人で倒せるレベルだと思ったんです。でも、まさか——まさか、こんな凶暴な『山トロール』だなんて思わなくって」
先程のフレッドの嘘との違いに——といってもマクゴナガル先生とスネイプ先生はハーマイオニーのこれが嘘だと思っていない——皆があんぐりと口を開けた。
これが演技力の差か、とフレッドも驚いていた。
「パニックになっていたら、四人が助けに来てくれたんです。私、四人がいなかったら今頃死んでいました。全て私の責任です。四人とも、誰も呼びに行く時間がなくって……」
「ミス・グレンジャー!——まあなんと、愚かしい行動でしょう。貴方はまだたったの十一歳ですよ?それなのに野生のトロールを一人で殺そうとするなんて。貴方には失望しました。グリフィンドールから五点減点です」
皆が口をあんぐりと開ける。ハーマイオニーがそんな事をするはずがない。ロンはまるで酸欠の金魚のように口をパクパクとさせ——ようやく落ち着いてから、今度はまともに口を開いた。
「違います、先生!全部、僕のせいなんです」
ロンが泣きそうな声で言ったので、マクゴナガル先生とスネイプ先生、ジョージとリーは「今度は何だ」という顔でロンを見た。
「僕、ハーマイオニーの事が嫌いだったんです。それで、ライリーとハーマイオニーが喧嘩したらざまあみろって思ってました。悪口ばっかり言ってました、僕……ハーマイオニーの。それから、今日の呪文学で、ハーマイオニーが教えてくれたのに、それがムカついて、酷い事言っちゃったんです。それで、ハーマイオニーはずーっとトイレに籠って、泣いてたんです。僕が悪口言ったから。だから、僕から減点してください」
「わ、私も——ハーマイオニーの気持ち全然考えてなくって……」
「僕も、ロンの悪口に笑っちゃったんです!」
ロン・ライリー・ハリーの三人が泣きそうな声でマクゴナガル先生にそう懇願すると、マクゴナガル先生は悪戯っぽい笑顔でこう言った。
「……幸いにも、今日はハロウィンです。加点こそすれど、減点は出来ない日ですからね。素晴らしい友情と勇気に、一人五点ずつあげましょう。それから、冷静な判断をし、私達を呼びに来たジョージ・ウィーズリーとジョーダンにも」
「さっきの減点は……どうなるんでしょうか」
「ミス・グレンジャー。私は減点なんてした覚えはありません。言ったでしょう、『一人五点ずつあげましょう』と」
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.159 )
- 日時: 2016/08/19 11:26
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
「大広間では、ハロウィンのご馳走が再開されるので、ご馳走を食べたければ行ってきなさい——ただし、ミス・アークロイドとミス・グレンジャーは医務室に行ってきなさい。特にミス・アークロイドは支えが必要ですが……」
此処でマクゴナガル先生はまた悪戯っぽく笑ってこう言った。「フレッド・ウィーズリー、お願いできますね?」
フレッドは上機嫌で元気よく返事をし、ジョージとリーはにやにやし、ハリーは若干不貞腐れ、ロンはご馳走に胸を躍らせた。
「——しっかしまさか、猫の奴を渡しちまったとは」
「本当、もう、吃驚しちゃったのよ!いきなり耳が変にゃ場所に生えてくるし、髭も頬に生えてくるし、尻尾だってお尻に」
「ああ。それ、『ギャンボル・アンド・ジェイプスいたずら専門店』に売ってる『猫薬——猫耳が生え、髭が生え、尻尾が生える可愛い猫娘製造薬!ハロウィンの仮装にぴったり!』でさ、なかなか便利だぜ?」
フレッドが笑いながらそう言うので「一回貴方も飲んでみにゃさい、この気持ちがわかるから!」と言った。——悪戯する側は、される側の気持ちもわかるべきだわ、とハーマイオニーは思った。
「——ライリーは寝てるの?」
「ああ、そうみたいだ。こりゃ起きねえぜ……こんな不安定な場所で寝てるんだからさ、ゆさゆさ揺れてるし」
背中におぶったライリーを見て、フレッドはまた笑った——でも今度はさっきとは違って、何処となく優しさを感じさせる笑みだった。
ハーマイオニーは思わずニヤッとする。
「ねえ、貴方、ライリーに気がある?」
「え?そんなの無いよ、ただ妹みたいだなあってさ」
「ほんと、男の子って鈍いんだから」とハーマイオニーは呟く。夕食の席にいつもいつもライリーに近づいてくるし、兎に角隙あらばライリーに近づいてくるくせに。
「まあ、ライリーってどう考えても妹タイプだけどね」
頭の上に生えた猫耳を触りながら、ハーマイオニーは笑う。
でも、フレッド・ウィーズリーは明らかにそれとは違う気持ちを抱いている——いや、もしそうじゃなくったって、いずれは抱くようになる。予感なんて言葉は好きじゃないけど、この予感は当たる気がする。
そしたらライリーはロンのお姉さんか、等と思うハーマイオニーだった。
