二次創作小説(紙ほか)

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.29 )
日時: 2016/07/30 21:24
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

第十話 ハッピーバースデー

 そしてオリバンダーの店を出て、三人は再び漏れ鍋に向かった。ハリーは気付いていなかったが、ライリーとハグリッドはもじもじしながら、ひそひそ声でハリーの誕生日プレゼントについて相談し合っていた。

 「……やっぱりオリバンダーの店でササッと渡した方が……」
 「……それから二段重ねで私のプレゼントのサプライズ?それもよかったかも——でもやっぱりまとめて渡した方が良いって……いやぁ……でもなぁ」
 「あぁ、もう我慢ならん——ハリー!」

 ハグリッドは紙袋から雪のように真っ白で、賢そうな梟が入った鳥籠を取り出した。ハリーは突然の出来事であわあわしていたが、ハグリッドに「ありがとう」と言って鳥籠を胸の位置で抱きしめていた。

 「ハッピーバースデー、ハリー!」
 「おめでとう」

 この状況でプレゼントを渡せないことに、ライリーはもやもやとしていた。この流れで自分も「ハッピーバースデー」と言って『例の物』を取り出したいのだが、やはり二段重ねサプライズの方が良い、うん、そのはずだ。



 漏れ鍋についてからも、ライリーはやはりそわそわしていた。さすがのハリーもライリーの異変に気が付き、「どうしたの?」などと尋ねたがライリーは首を振るばかりだった。

 「——あ、あのね、ハリー……ハッピーバースデー!」

 そう言ってライリーは、ハリーが欲しがっていた本を取り出した。グリンゴッツに行く前、『フローリッシュ・アンド・ブロッツ書店』で読みふけっていた本だ。

 「『ドラゴン飼いのアルヴィン』——これ、僕が欲しがってた本だ!」
 「すごく面白かった。しかも挿絵が動くって、本当にびっくりした。やっぱり魔法界ってすごいね!」

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.30 )
日時: 2016/07/26 08:24
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 「おっほん」——ハグリッドが大きく咳払いをしたのでライリーとハリーは話すのをやめた。なんだか大事な話がある様な雰囲気が、ハグリッドの周りには漂っていたので、ライリー達も自然と真面目な顔になった。

 「つい最近誕生日だったのはなぁ……その、ハリーだけじゃ無ぇよなぁ」

 にんまりしながら、ハグリッドはそう言い、ハリーの梟を出したその紙袋から、可愛らしい子猫が入った籠を取り出した。

 「ハッピーバースデー、ライリー!」
 「う、うわぁハグリッド!すごいよ、猫なんて……一生感謝するよ!ハグリッドにも今度、プレゼントあげるからね!誕生日は?」
 「あぁ、ありがとうライリー。十二月八日だ。忘れんなよ、お前さんはちぃと……そそっかしいからな」
 「うん——絶対に忘れない!」

 そんなライリーとハグリッドを見ながら、ハリーは少し、悲しい気持ちになった。——僕はプレゼントをもらったのに、僕はライリーに、何にももあげられてない。

 「あとハリー。クリスマスプレゼントは、誕生日プレゼント分、二倍にしてよ!」
 「勿論だよ!」

 ——何も心配する必要なんてないんだ。
 ライリーはきっと、僕の友達でいてくれる。きっと、そうに決まってる。

 「お菓子がいいなー!あーでもやっぱり……」
 「ちょ、ちょっと待ってよライリー!僕そんなにお金ないよ!?」
 
 ハグリッドはそんな二人を微笑ましく眺め——どうやら気がついたようだ、「もうそろそろ別れにゃならん……」と名残惜しそうに言った。

 「えーっ!もう?」
 
 またあの家に戻るのか。
 ハリーは少しため息をついた後——思い出した、ハグリッドがダドリーのお尻に、豚の尻尾を生えさせてしまった事を。

 「これでしばらく僕は、ダドリーのサンドバッグにはならないぞ!」
 「どうしたの?」
 「ううん——ただちょっと、家に帰るのが少し、嫌じゃなくなっただけ」
 「良かったね!だって、ハリーから聞いただけだけど、私だったら家出しちゃうよあんな家!——ってそんな事はどうでもいいんだ、あのね、一緒に行かない?キングス・クロス駅に」

 キングス・クロス駅——そこの九と四分の三番線にホグワーツに行く汽車があるとハグリッドは言っていた。
 ハリーが「勿論」と返事をすると、二人は何時にどこで待ち合わせ——だとかそんな詳しいことを話し合った。