二次創作小説(紙ほか)
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.40 )
- 日時: 2016/08/02 21:34
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
「ネビルのヒキガエルを知らない?」
入ってきたのは、豊かな——というよりボサボサな——栗色の髪に、少し大きめの前歯を持つ女の子で、コンパートメント内をぐるりと見まわしてからロンのほうを向き、「あら、貴方魔法をやるの?」と言ってロンの前(つまりはライリーの隣)に座った。
それからロンは、少し緊張したように、呪文を唱え始めた。
「お日様、雛菊、とろけたバター。このデブネズミを黄色に変えよ!」
だが、デブネズミ(スキャバーズというらしい)は全く変わらずチチチッという音を立てて『百味ビーンズ』(鼻くそ味からマシュマロ味までいろんな味がある)やらなんやらのお菓子を漁っていた。
「その呪文、間違えてるんじゃない?」
その言葉を皮切りに、女の子は聞いてもいないいろいろな事を喋り始めた。今までに自分がいろいろな呪文を試してきて、それが全て成功した事や、教科書は全部読んで暗記した事、マグル生まれである事、そして自分の名前がハーマイオニー・グレンジャーである事——それをロンとハリーは欠伸をしながら、ライリーは『蛙チョコ』を食べながら、真剣に聞いていた。
「あら、私まだ貴方たちの名前を聞いてなかったわ!教えてくれる?」
「僕、ロン・ウィーズリー」
「僕はハリー・ポッター」
そしてハーマイオニーは、当然の如くハリーの名前に反応した。そして「近代魔法史に載っていたわ、それによると……」だとか「二十世紀の魔法大事件にはね」だとか、本に書いてあったいろいろな事を本人に確かめようとした。
「で、でも僕、あんまりよく知らないから……」
「まあそうよね、だって貴方マグルの親戚に引き取られてたんでしょ?」
「そんなことまで知ってるのかい!?『マーリンの髭』!さ!」
「『マーリンの髭』って何?」
「驚いたときに使うんだよ」
それからライリーとロンの『マーリンの髭』談義をハーマイオニーは途中で止め、ライリーの名前を聞いた。「ライリー・アークロイドだよ……どうせ知らないだろうけど」とライリーが言うと、意外にもハーマイオニーは知っていると答えた。
「だって、ハリントン・アークロイドの著書の『純血主義は本当に正しいのか——歴史とその影響を見て考える——』なんて、とっても参考になったわ。それと全く対照的だったのはイーデン・ヘティングズが何処までも純血主義を突き詰めていた事よ!これはいろんな資料に書いてあるわ——」
「ヘティングズはママの旧姓だよ」
「凄いわね、ヘティングズ家もアークロイド家も『とっても素晴らしい家柄トップスリー』に入ってるのよ。まあ、大したランキングじゃないけど」
- Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.41 )
- 日時: 2016/08/03 16:41
- 名前: すず (ID: 3NNM32wR)
それからライリーが、「ネビルのヒキガエルはどうなったんだろう」と思った頃にハーマイオニーはようやく立ち上がった。
「もうそろそろホグワーツに着くわ、貴方たち早く着替えた方がいいわよ」
「そうだね、着替えるから早く出てってくれよ、君」
ロンは嫌悪感丸出しでハーマイオニーを見た。扉の方を顎でしゃくった。「そこまで悪い子じゃないと思うよ」とライリーが小さな声で言うと、「君はお人よしだね」と言ってまたハーマイオニーを見た。
「ちょっと……貴方達、ライリーの前で着替えるつもり?」
そう言うと、ハリーもロンも真っ赤になった。ハーマイオニーは、さっきまで偉そうだったロンが恥じらっている様子が面白かったらしく、「ライリーを貴方たちの前で着替えさせるつもり?」等と畳みかけたので、ライリーまで真っ赤になってしまった。唯一、ハーマイオニーだけが勝ち誇ったような笑みを浮かべている。
「じゃあ行きましょ、ライリー。——それと、貴方。鼻に泥がついてるわよ、ここにね」
そう捨て台詞を吐き、ライリーを引き連れてハーマイオニーはコンパートメントを出た。ロンは鼻のあたりをごしごしと擦っている。
それからハーマイオニーのコンパートメントに着くと、半ベソを書いた男の子が一人座っていて、「僕出るよ」と言って何処かに行った。
「何だか申し訳ないな」とライリーが言うと、ハーマイオニーはさほど気にしていない様子で「当たり前、マナーよマナー」と言った。
「そんな事より!貴方、何処の寮に入りたいの?私はやっぱりグリフィンドールかレイブンクローよ。ハッフルパフもスリザリンも何だか魅力が感じられないの」
「私はどこでもいいな。だって、何処の寮にもきっといいところはあるだろうし……自分が何処の寮にあってるかなんて分からないし、入れるだけでいいやって」
「志が低いわ!」
ハーマイオニーはそう嘆くと、ライリーの着替えを準備して——「あなたの制服、男の子用じゃない!」と驚いた顔をした。勿論、試着なんてしていないライリーも驚いて、「私、女の子だよ!」と言った。
「仕立て屋のくせに間違えるの?確かに貴方、男の子にも見えるけど」
「いや、おばさんは私の事女の子って知ってたからそれはないよ」
「じゃあ嫌がらせ?」
ハーマイオニーにそう言われた時、ライリーは思い出した。随分と昔(ライリーが五、六歳の頃だ)、「アイリスって男の子みたいだったの、制服だってズボンで」なんておばさんが言っていたことを。
——あの頃、おばさんがママの話をするのが珍しくって、ライリーはその一言をよく覚えていた。
「きっと、ママと重ねてたんだよ」