二次創作小説(紙ほか)

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.42 )
日時: 2016/08/03 16:40
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

第十二話 組み分け

 それから汽車がホグワーツに着くまで、ハーマイオニーは何度も何度も「職権乱用よ!」と言っていた。語彙の少ないライリーにはそれがどういった意味なのか、全く分からなかったので取り敢えず「うん」と頷いておいた。

 「イッチ年生、イッチ年生はこっちだ!」

 汽車から降りると、ハグリッドがランプを持って新入生たちを誘導している。ハグリッドに気付いたライリーがにっこりと笑いかけると、ハグリッドもにっこりと笑い返した。

 「とっても大きいわ」
 「きっと凶暴なのよ」

 ライリー達の後ろで、可愛らしい顔をした双子の女の子がそういうのが聞こえた。なのでライリーは後ろを振り向いて、「とっても優しいんだよ!」と二人に言った。すると二人は「「へえ……」」と息ぴったりに言ってから「「あなたの名前は?」」とまた息ぴったりに言った。

 「ライリーだよ、ライリー・アークロイド」
 「私はハーマイオニー・グレンジャー。貴方たちは?」
 「あたしがパーバティ・パチルでこっちが双子の妹のパドマ」
 「ハアイ、あたしがパドマ。区別つく?」

 「ううん、全然」とハーマイオニーは言い、「フレッドとジョージみたいだ」とライリーは言った。それから四人は一緒にボートに乗って、黒い湖を渡った。

 「あたし、レイブンクローがいいわ」

 パーバティが、長い黒髪を指に巻き付けながらそう言った。彼女はさほど、ホグワーツや魔法について興味が無いようだった。「だって、シンボルカラーの青と銅はお洒落だし、モチーフの動物の鷲も」と呟いている。
 ハーマイオニーはそれを聞いて鬼の様な表情でパドマを見ていた。

 「あたしはグリフィンドールよ」

 今度はパドマがそう言った。「だって、グリフィンドールが一番、イケメンが多いらしいし」と言う。こちらもパーバティと同じく、さほどホグワーツや魔法について興味がなさそうに、髪を梳りながらそう言っている。

 「二人とも意識が低すぎるのよ!」
 「あんたの意識が高すぎるのよ、ねえパドマ」
 「そうよ、あたしたちの倍くらいあるんじゃないの?ねえライリー」
 「私は別に、そこまで意識が低いわけでもないし、高いわけでもないし」

 ふうん、と言ってパーバティとパドマはまた髪の毛をいじる作業に戻った。ライリーはといえば、眠たそうに欠伸をしている。
 ハーマイオニーは、大きくため息をついていた。

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.43 )
日時: 2016/08/03 20:56
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 「やっとホグワーツに着いたわ!私本当に楽しみだったのよ!こんなに素晴らしい場所があるなんて、夢にも思わなかったから」 

 ハーマイオニーはとても興奮している。目をキラキラと輝かせ、髪を振り乱してきょろきょろといろんなところを見ている。だが、パーバティとパチルは相変わらずで、ライリーは「こんなだだっ広いだけの玄関ホールなんか何が面白いんだろう」と思いながら、それでもやはり周りを見渡していた。

 それから如何にも厳しそうな女の人——ひっつめ髪に四角い眼鏡が特徴で、エメラルド色のローブを着ていた——が何か長くて面倒そうな話を(ハーマイオニーはとても真面目に、ライリーとパーバティとパドマはとても不真面目に聞いていた)した後、部屋を出て行った。

 その時初めて、ライリーは自分と同じ最前列にいた、ハリーとロンに気が付いた。

 「ハリー、ロン!久しぶり!」
 「久しぶり、ライリー。——その制服……君、まさか、」
 「ライリー、君、男の子だったのかい?そりゃマーリンの……」
 「違うよ二人とも!店の人が間違えてたんだよ!もう、最悪だよ」

 パーバティもパドマも多分男の子だと思ってるよ、とライリーはつぶやいた。かと言って「女の子なんだよ」といきなり言ってもおかしいし——とライリーは嘆く。「大変だね」と二人は同情するようにそう言った。

 「本当だったんだ。……ハリー・ポッターがホグワーツに入学するって。まさか、君がハリー・ポッターだったなんてね」

 するといきなり、後ろの方からそんな言葉が聞こえてきたので、ライリー達は後ろを向いた。いたのはプラチナブロンドをオールバックにした、如何にも金持ちそうな男の子で、両隣にはボディーガードの様な太った取り巻きを連れている。
 それから男の子はハリーの方まで近寄ってきて「家柄のいいのと悪いのが」だとかうんたらかんたら言った後(ライリーにはなんだかよく分からなかったが、取り敢えず感じの悪い男の子だと思った)、ハリーにフラれた挙句、ライリーのもとにやってきた。

 「君には良家の親戚でもいるのかい?僕の父上と一緒に写っている女性が君にそっくりなんだ——まあ、君が女性かどうかはわからないけどね」

 そう言って男の子はライリーが履いているズボンに目を向けた。ライリーは恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら、「店の人が間違えたんだよ」と言った。それから男の子は興味なさげにうなずいてからこう言った(因みにこの時ハーマイオニーが「貴方失礼じゃない!」と喚いていたが、男の子は完全に無視していたのでライリーは少し嫌な気持ちになった)。

 「ふうん、まあそれは知らないけれど——仲良くしてやってもいいよ。君は僕と友達になるべきだ。僕はドラコ・マルフォイ、よろしく。ああ、こっちがクラッブでこっちがゴイルだ」

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.44 )
日時: 2016/08/03 21:14
名前: すず (ID: 3NNM32wR)


 「それで、君の名前は?」
 「ライリーだよ、ライリー・アークロイド」

 なんて偉そうなんだ!——という態度を前面に押し出しながらライリーは渋々名前を言った。出来れば早く話をやめたい。

 「とっても名門じゃないか!父上から、アークロイドの家とは仲良くしようと言われているんだ。仲良くしようじゃないか、ライリー」
 「ごめん、ドラコ。友達って、言われてなるものじゃないからさ」

 ドラコの差し出した手を、ライリーは握らなかった。それから、「そういう事抜きに、友達になるんだよ。それが友達なんだよ」そう言ってライリーは、ぶらんと垂れ下がりそうなドラコの手をぎゅっと握った。

 「何で僕が、お前に偉そうに言われなきゃいけないんだ!本当なら、君が『仲良くしてください』って言うべきなんだ!」

 ライリーは呆れた様な顔をする。「ドラコは、『友達』の意味を分かってないよ」と言った。その時ちょうど女の人(ハーマイオニーが「マクゴナガル先生よ」と教えてくれた)が戻ってきたのでドラコはライリーを一睨みして元の場所に帰っていった。
 それから、マクゴナガル先生が「組み分けの儀式があります、さあ大広間に行きますよ」と言ったので皆急いでついて行った。

 「あのマル“フィ”って人、とーっても失礼だったわ!」
 「マル“フォイ”だよ、ハーマイオニー」
 「どっちでもいいわよ!」

 ハーマイオニーは、無視された事に相当ご立腹らしく、ずっとドラコの悪口ばかり言っていた。ライリーは面倒だったのでところどころ聞き流して、ハリーやロンと話していた。

 「組み分けってどうやってやるんだろう?」
 「フレッドはものすごく痛いって言ってたけど——」
 「トロールと殴り合いでもするんじゃないかしら!」
 「ちょっとハーマイオニー、何でそんなに怒ってるの?」
 「もう!ごめんなさい、イライラしてるのよ。テストって何なのかしら」
 「君が分からないのに僕らが分かるわけないよ。もし分かったなら、それこそ、マーリンの髭!だね!」

 そんなこんなで、四人は大広間を進んでいった。途中、ハーマイオニーが綺麗な天井——まるで本当の空みたいな——の説明をしてくれたりして、四人のドキドキはだんだんと高まっていった。

 そして。

 マクゴナガル先生が椅子に古びたとんがり帽子を置いた。その途端、在校生も教職員も、新入生も皆がそちらを向いて、大広間がしんと静まり返る。
すると、帽子が動き始めた。——なんと、歌い始めたのだ。
 そして、歌が終わると大広間中が拍手喝采で包まれた。

 「まさか、僕たちってあの帽子をかぶるだけでいいのかい!?マーリンの髭!」

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.45 )
日時: 2016/08/03 21:40
名前: すず (ID: 3NNM32wR)


 それからライリーは、帽子の歌を思い出していた。
 『勇猛果敢なグリフィンドール、忍耐強いハッフルパフ、学びのレイブンクロー、狡猾なスリザリン』おじさんが言ってた事と、少し同じで少し違う。
 でもやっぱり、自分はどれにも当てはまらない気がする。
 
 「ABC順に名前を呼ばれたら、前に出てきて椅子に座り、組み分けを受けてください」
 
 マクゴナガル先生が、一歩進み出てそう言った。——アークロイドは……『Arclloyd』だから、きっとすぐに呼ばれるはずだ。

 「アボット・ハンナ!」

 その子はハッフルパフに組み分けされた。それから何人かの名前が呼ばれ、しかも全員が短時間だったので、ライリーの名前が呼ばれるのはあっという間だった。

 「アークロイド・ライリー!」

 ライリーはカチコチになりながら、前に進み出る。「頑張れよ」とロンが言い、「頑張って」とハリーが言い、「大丈夫よ、ライリー」とハーマイオニーが言った。
 そして帽子を被ると、低い声が聞こえた——「フーム」と考え込んでいる。まさか、帽子が考えてる事って外にダダ漏れなんじゃないだろうか?

 「勇気もあるし、我慢強く、頭も良く、才能もある」

 こんな事が周りに聞こえてたらとんでもない!帽子は自分を褒めちぎりすぎだ、そんなの、何一つ当てはまっていない。

 「大丈夫だよ、私のこの声は君にしか聞こえていない。——何一つ当てはまっていないと?いいや、それは違う。君は気づいていないだけだ。確かに今は臆病かもしれない。けれど、内に秘めた勇気がある、困難に耐えうる心もだ。確かに今は勉強なんて大嫌いかもしれない。だが、少し努力するだけで知識は君の頭に吸い込まれていく。それに、いざとなったら論理的な考え方をすることもできる。圧倒的な才能もある!」
 
 そんなの、やっぱり違うや。
 ライリーは褒められすぎた恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、必死に心の中で否定した。——自分は、臆病で頭が悪くって平凡で、少し男の子っぽい、ただのライリー・アークロイドだ。

 「そうか……なら私は何も言うまい。少し自分で考えてみるといろいろな事が見えてくる」
 
 ——寮っていうのはどんなものか。まずライリーが考えたのはそんな事だった。性格や才能、一つのカテゴリに入れられて同じような仲間で過ごす。それがホグワーツの寮だ。
 でもきっとそれでは、考え方も何もかも怠ってしまうはずだ。
 新しい発見がないかもしれない。それはきっと、とってもつまらない。

 「君はレイブンクローに入っても上手くやっていける程賢い……」

 それならばむしろ、自分に「足りない」物がある寮か、自分と正反対の寮に入った方が面白いのかもしれない。

 「帽子さん、私には何が足りない?」
 「強いて言うならば、少し勇気が足りないかもしれない」
 「じゃあ私、グリフィンドールに入りたい」
 「そうか、それならば——グリフィンドール!」