二次創作小説(紙ほか)

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.5 )
日時: 2016/08/29 09:08
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

第一章 賢者の石編
第一話 十一歳の誕生日

 イギリスの閑静な田舎町が更に静まり返っている朝の五時、ライリー・アークロイドは目を覚ました。いつもより二時間ほど、目覚めるのが早い。ライリーは心なしか得意げにベッドから起き上がり、小さな声で呟いた。

 「ライリー・アークロイド、誕生日おめでとう!」
 
 そう、今日は七月二十四日、ライリーの十一歳の誕生日だ。それからライリーは、忍び足で階段を下りて、こっそりと自分のプレゼントを確認した。——どうやら、ライリーがずーっと欲しがっていた流行り物のファンタジー小説の様だ。しかも全巻だなんて、本当にツイている。

 「おはようライリー、早いのね」

 ライリーがあまりの幸運に思わずニヤニヤしていると、いつの間にかライリーの保護者であるクレア叔母さんが起きてきていた——クレア叔母さんは、肩のあたりまで伸ばした金髪に、綺麗な紫の瞳の、長身の美人だ。
 ライリーは慌ててプレゼントを包みなおした(元より少し雑だった)。

 「うん、誕生日だから」
 「そうね、おめでとう。いっつもは寝坊してるのに——ちょっと、洗面所に行ってきなさい。貴方髪が爆発してるし、目やにが酷いから」
 
 ライリーは目を擦りながら頷いて、洗面所に向かった。そして、「確かにこれは酷い」と寝ぼけた頭なりに思った。ただでさえふわふわの金髪が爆発しているし、目やにも酷い。ライリーは顔をごしごしと擦り、髪をきちんと梳かしてからまたリビングへと向かった。

 「おはようクレア!君の美しさには太陽もおっかなびっくりさ!」

 すると、ウィリアム叔父さんが起きてきて、「毎朝恒例」の、歯の浮くような言葉をクレア叔母さんに言う、という行事が開催されていた。
 ウィリアム叔父さんは、ライリーのもう一人の保護者で、クレア叔母さんの旦那さんだ。薄茶色の髪をオールバックにしていて、青い瞳と白い歯がキラリと輝いている、「如何にも仕事のできる男」だが、ライリーは叔父さんの事を無職だと思っている。
 因みにケチで、ファンタジー小説を全巻——つまりは七巻——も買う決意をしたのはきっと叔母さんの方だ。

 「ところでライリー、誕生日おめでとう。多分今年は、ライリーにとって最高の誕生日さ——何故って、プレゼントが二つもあるんだから」

 叔父さんがニヤリとしながらそう言ったので、ライリーは吃驚した。
 ——あのケチな叔父さんが二つも!?ファンタジー小説を全巻買うだけでもケチ心が黙って無かっただろうに?

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.6 )
日時: 2016/08/29 10:00
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 「まずはこれ、ライリーがずーっと欲しがってた『ファイアー・フェアリー』シリーズ七巻だ。あ、これ叔父さんが買ったんだからな?別に今回はケチらずに買ったからな?勘違いするんじゃないぞ、ライリー」
 
 そう言って叔父さんが『ファイアー・フェアリー』シリーズの包み紙を開けた——「あれ、雑だな包み方……なんだよあそこの店員」とか言うのでライリーは少し怖々していた——。

 「それともう一つ、あれ?あ、違う……此処か、お、此処だ」

 いろいろな場所を探し、ようやく見つかった手紙を、叔父さんがライリーに手渡しした。それから、「ヤバい、ふくろう便を」とか何とか言いながら大急ぎで二階に上がり、叔母さんは「貴方まだ出してなかったの!?」と怒っていた。

 ——エセックス州 スプリングフォード
   アビー通り四番地 二階の子供部屋
   ライリー・アークロイド様——

 何やら分厚い、重い、黄色みがかった羊皮紙の封筒に入っている。宛名はエメラルド色のインクで書かれている。切手は張っていない。封筒を裏返すと、紋章入りの紫の蝋で封印がしてあった。真ん中に大きく「H」と書かれ、その周りをライオン、鷲、穴熊、蛇はとり囲んでいる。

 「これ、中……見て良いの?」

 叔母さんが頷いたので、ライリーは中から手紙を取り出し、声に出して読んだ——あまりに可笑しな事が書いてあったので、時々つまる事もあった。

 ——ホグワーツ魔法魔術学校
   校長 アルバス・ダンブルドア
   マーリン勲章、勲一等、大魔法使い(「魔法使いだって!?」)、
   魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会長——

 それから「ホグワーツ魔法魔術学校」に自分が入学する事と、九月一日に新学期が始まる事を理解してから、ライリーは遠慮がちに口を開いた。

 「私が魔法使いって事?」
 「ええ。貴方のママも、貴方のパパも。それからお祖母ちゃんもお祖父ちゃんも。私は魔法が使えない『スクイブ』だったけど」

 それから叔母さんは頭を下げた——謝ったのだ、ライリーに。

 「叔母さん、嘘をついてたの。貴方のママのアイリスも、貴方のパパのエドモンドも、交通事故なんかで死んだりはしなかった」