二次創作小説(紙ほか)

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.96 )
日時: 2016/08/11 21:28
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 「あ、ヤバい、「『腫れ草』の膿を手袋をして取り出す」って書いてあった気がする……ちょっと取りに行ってくるね、ネビル」
 「ええっ!?でも僕、君がいなくちゃ何だか見逃しちゃいそうなところが多くって、不安だよ。山嵐の針の入れ方だって三回にって……」
 「大丈夫、すぐ戻ってくるから」

 そう言ってライリーは、材料が置いてある棚に向かった……『腫れ草』は予想通り真ん中に置いてある。
 それから、つい最近あった『薬草学』の授業でこれによく似た植物があったのを思い出して、ライリーは溜息をついた——前の授業はとっても楽しかったけど、今度からはもっとおかしな植物を育てさせられるんだろうな、と思うと憂鬱としか言いようがない。

 「ネビル、取ってきたよ。大鍋の火加減はど……ネビル待って、そんな事したら大鍋が溶けちゃう!」

 ネビルのもとに戻った途端、ライリーはネビルの手元を凝視し……ネビルを大鍋の前から押し退け——そして自分は動くのを忘れたまま、ぽんぽん弾むように飛び出してくる溶けかけの大鍋を見つめた。
 ライリーに「少しトロい」所があると言え、さすがにこれは「少しトロい」ですまされて良いレベルの話ではない。

 「ライリー貴方何やってるの!?」

 そう言ってハーマイオニーが駆け寄って来る少し前か後か、ライリーは背中に激痛と火傷する様な熱さを感じた。
 ——薬だ、失敗した薬がかかったんだ——それはやがて腕や脚にまで広がり始め、気絶したライリーは自ら申し出たロンとハーマイオニー、それからネビルによって医務室に運ばれた。

第十七話 喧嘩

 「ライリー、貴方何やってるの!?」

 医務室に運ばれて半日、ホグワーツの校医である、マダム・ポンフリーのおかげで醜いおできは完治したものの、目覚めた途端に気絶した時と全く同じ言葉でライリーはハーマイオニーに怒鳴られた。
 それからネビルはおろおろして謝り、ハリーとロンは「無事でよかった」とライリーの回復を純粋に祝ってくれた。

 「ぼ、僕のせいだよ……ごめん。ライリーは教科書を見てってきちんと言ったのに、僕がちゃんと見なかったせいで……山嵐の針を、大鍋を火から下ろす前に入れちゃったから」
 「大丈夫だよ、ネビル。私だって教科書を見ずに説明しちゃったし……ほら、物凄くカッコ悪いけど、カッコ良い所見せたくって……」

 その途端、少しの間黙っていたハーマイオニーが立ち上がり、周りの皆が青ざめる様な表情で、こう言った。

 「だから私、言ったのよ!きちんと教科書を読みなさいって!きちんと先生の話を聞きなさいって!」

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.97 )
日時: 2016/08/10 14:12
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 「スネイプ先生が仰っていたわ!「『おできを治す薬』はきちんと作らねばむしろ、『おできを作る薬』になる」って!教科書をきちんと読めって、どんな細かい作業工程も見逃すなって言っていたでしょう!?」
 「そ、そんなの……ハハハ、髭……」
 「現によ、カッコつけたいだか何だか知らないけれど、貴方がきちんと指示しなかったせいでネビルが失敗したのよ?減点だって、『ネビル・ロンボトムのせいで』ってそうなってるの!確かに、きちんと読まなかったネビルにだって責任はあるわ!でも貴方だって……」

 ハーマイオニーは泣き腫らして赤くなった目を擦ってから続ける。

 「『腫れ草』の膿を取り出す工程はもっと——随分後の物だったのよ!?貴方がきちんと教科書を読んでいて、『腫れ草』なんて取りに行かなかったらこんな事にもならなかったのよ」

 そう言われ、ライリーはがっくりと項垂れた——まさか、『腫れ草』の工程がもっと後だったなんて——自分のせいでネビルが減点されたなんて、と思うとネビルにも、グリフィンドール寮の皆にも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 「ごめん、ハーマイオニー……でも、」

 そこまで言わなくったって。
 もっと、心配してくれたっていいじゃないか。
 確かに『腫れ草』を取りに行ったのは早かったけど、早めに取りに行ったら作業だって円滑に進むじゃないか。
 ネビルにだって責任はあるのに、なんで自分だけ責められるんだ。
 ハーマイオニーはずっとネビルの隣にいたのに、気付いてないじゃないか。球根を細かく刻むくらい難しくないじゃないか。

 そんな言葉が、ライリーの口から溢れ、ハリーとロンは「あのライリーが」と言った顔で、ネビルはやはり、申し訳なさそうな顔で、ハーマイオニーは相変わらず怒ったままの顔で、その言葉を聞いていた。

 「なにも反省してないのね、貴方」

 ハーマイオニーは、驚くほど冷やかな声でそう言った。

 「貴方をこれ以上落ち込ませまいと、言わないで上げようと思ってたけど——私まで減点されたのよ?あれのせいで、グリフィンドールから三点も減点されたの!私、きちんとネビルを見てって言ったでしょ!?きちんと人の話を聞かないからこうなるの!私何度も言ったわ!」

 そう言って、ハーマイオニーは医務室を出て行った。医務室が急に、水を打った様に静かになった。——そしてマダム・ポンフリーがこう言う声だけが冷たく響く。

 「……私、貴方達に『静かにしなさい』と何度も言ったのですがね」

Re: 正しい魔法使い 【ハリー・ポッター】 ( No.98 )
日時: 2016/12/04 14:44
名前: すず (ID: 3NNM32wR)

 それから少し授業を挟んで——この時、ライリーとハーマイオニーは決して一緒に行動せず、ハーマイオニーは一人ぼっちだった——ライリー達はいつもの様に夕食を食べていた。

 「それはおったまげー、さ」
 「まさにマーリンの髭!さ」
 「まさか、君とミス大鍋が喧嘩するなんてね」

 双子とリーがいつもよりも幾分か真面目そうな表情でそう言った。
 するとその後ロンが、「あの時、スリザリンと合同授業だったろ?」と言ったので——存在感が薄いんですっかり忘れていた、と思いながら、ライリーはロンの言葉に頷いた。

 「あのマルフォイが、自慢げに話してたんだよ——『グレンジャーは唯一の友達にも見放された』って。僕も同じ気持ち、アイタッ、何すんだよ!(フレッドがロンの頭をベタベタ髪のカツラで叩いたのだ)だってそうじゃないか」
 「いやはや、ロニー坊やにはデリカシーたる物が無い様で」
 「そんなんじゃ女の子にはモテないぜ、親愛なる我が弟よ」
 「そうだそうだ!坊ちゃんの心の傷をえぐりまくりだぜ!」
 「リー、坊ちゃんなんて言うと、ミス大鍋に叱られるぞ!」

 最後にジョージがとどめの一発を刺したところで、ライリーは半泣きの顔でハリーの方を向く。ハリーは慌てて「大丈夫だから」と言いながらライリーの背中をさする。

 「良かったな、英雄殿。ようやく待望の出番じゃないか!」
 「これで一発、ライリー嬢のハートを狙い撃ち!きゅん!」
 「お前らだって大概デリカシー無いだろ!」
 「「リーには、リーにだけは言われたくない!」」
 「っていうか全員ないだろ!もう黙ってろよ!」

 それからいつも大食いのライリーはすっかり少食になり、双子達はようやく事態の深刻さを理解した。そしてライリーを笑わせようと奮闘したのだが、見事に逆効果でハリーに追い払われる結果となった。

 「ほ、ほら、ミス大鍋だって……」
 「ハーマイオニーの大鍋、溶かしちゃった……」
 「駄目だフレッド、これは再起不能さ」
 「僕がフレッドでこっちがジョージさ、リー」

 ——とまあ、こんな調子でライリーの前で会話を繰り広げたのだから追い払われるのも無理は無い。そして、代わりにネビルがやってきて、しゅんと申し訳なさそうな顔をしてライリーの前に座った。

 「ハーマイオニー、謝られても許す気は無いって……」