二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方怨崎録 ( No.1 )
日時: 2016/03/25 18:50
名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)

 01 対面

少年は、夢を見ていた。 夢といえるほど確かなものでもなかったが、『自分は自分の意識下にいる』ということを、少年は初めて実感した。

「ここ…どこだ?」

とまどっている少年に、とつぜん『声』は語りかけてきた。

「あなた、『スキマ』を開いたのね……と、言っても開かせたのは私なのだけれど。」

声は女性だった。

「誰だ……どこにいる?!」

「そう身構えないでちょうだいな。落ち着いて…」

まるで、生まれたての赤ん坊をあやすような女性の声に、少年は少しずつ落ち着きを取り戻した。

「おちついたぞ。だから頼む、姿を見せてくれ。このままだと不安でかなわない。」

その頼みを了解したのか、声の主は姿をあらわした。不思議な形の傘を持った、美しい金髪の女性だった。

「こんにちは……かしら、それともこんばんは……かしら、まあ、 どちらでもいいわ。私の名前は、八雲紫。あなたをあの世界から連れ出したのも、これから別の世界へ連れて行くのも私よ。」

そして八雲紫は説明してくれた。

少年が行く世界は、幻想郷だということも含めて、何もかも。

「ただ、あなたをどこへ置いていくかは、まだ決まってないのよねー」

楽しそうに紫は言った。それを聞いた少年は、

「え、俺おいて行かれるのか!?」

と、驚いて言った。

「? とうぜんよー あなた、知らない土地に放り込まれて、一人でいきなり生きて行ける?」

「そりゃ無理だけど……ってそうじゃなくて、あんたの所に居候させてくれないのかってこと!!」

「あ、それは……ごめんなさい、やっぱりむりだわ。」

それを聞いた少年は、落胆した。 落胆したが、楽しそうだった。 これからは、あの親の元を離れて生きていける。 そう思ったから。

「最後に一つ聞かせてくれ、なぜ俺を幻想郷に来させようとした?」

「はーい質問終わり! 少年よ、大志を抱け!!」

まだ最後の答えを聞いてない、そう言おうとしたが、意識はそこで途切れていた———

幻想郷 妖怪の山
 白狼天狗の犬走 椛は、泥にまみれた少年を見つけた。

「外来人、ですね。なら私が看るより、守矢神社につれていったほうがいいですかねぇ。」

少年は、数分後に目を覚ました。 傍らに緑髪の女性が立っている幻想郷の守矢神社で————。