二次創作小説(紙ほか)
- Re: 東方怨崎録 ( No.3 )
- 日時: 2016/03/25 18:54
- 名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)
03 紅魔館『内』異変 前篇
守矢神社内の和室——
もう二つ、信のことを話しておこう。
彼がやってきて数週間後の事だ。 その話は唐突に始まった
「妖怪退治?」
そう、幻想郷における巫女の仕事『妖怪退治』だ。
「まあ、基本的なことは早苗に任せとけばいいんだけどさ、見に来ない?」
諏訪子に言われ、信は考えていた。
「て言ってもよ、俺は一応弾幕を打てるけど、武器は持ってないぜ?」
「だから、あくまで『見に来ないか』なのよ。手伝ってくれ、とは言わない。」
「まあ、あんたたちが何考えてるか知らないけど、もし妖怪退治をするとして、その————場所の見当は、つけてるんだろうな?」
信の何気ない一言が、場の空気を凍りつかせた。
数十秒の静寂 その後、早苗が一言
「あ」
と言った。
「あ、じゃない!! え、嘘、マジで決めてなかったの?!」
早苗が妖怪の出現場所に対する情報を集めていなかったということで、その場はお開きになったが、機会は思いのほか早くやってきた。 機会のほうからやってきたのだ。
翌日
「早苗様〜助けてくださ〜い」
人里の、農夫と思われる人たちが、守矢神社にやってきた。
「えーっと、妖怪退治、ですか?」
彼らの要件をかいつまんで話すとこうなる。
まず、一か月ほど前から人里に妖怪が現れるようになったという。
そして、その妖怪が、畑を荒らしたり、金品をたかったりするので、村人たちも困り果てていたが、今度は娘を貰うと言い出したらしく神社に駆け付けたらしい。
しかも、その妖怪というのが————
「人語を話すイノシシ!?」
「そうなんです。我々の力ではどうしようもなくなりましたので、早苗様たちのお力を貸していただきたく———ん?」
「どうしたんです?」
「いや、早苗様の後ろに立ってる、無礼なガキは、だれだろうと思いまして……」
信は、ものすごい目で睨まれた。
「無礼なガキはねーだろうが、オッチャン。 俺にはちゃんと名前があってだな———」
「オッチャンじゃない!!お兄さんと呼ばんか!! まったく我々を差し置いて、早苗様のお傍にいるなどと、ふざけたことを言うでない!!
では早苗様、今日の2時にお願いしますぞ」
男は、そう言って去って行った。 そして、2時
「なんで俺までついて行かなきゃならないんだ!?」
「だって見に来いって言ったじゃない」
「まだ返答してないよね?、ね!?」
「まあいいじゃない、それより、スペルカードの使い方は、覚えてるだろうね」
「あ〜OKOK 」
信は右手を振ってこたえた。
そして、集落にて。
「じゃ、俺、角の団子屋で見てるから」
「本当に手伝わないつもりなんですね」
そして、それはやってきた。
イノシシの形をしたそれは、鼻息荒く、黄色く濁った眼をぎょろぎょろさせて、よく通る声で叫んだ。 しかし、それは、決して美しいとは言えなかった。
そしてそれは、自分の前に立ちはだかる早苗を見た途端、口臭のひどい口をにやぁっと開き、こう言った。
「おい村の衆、お前らの娘はいい。俺はこいつをもらっていく!!」
と言いざま、どこから出したのか、触手を数本出し、早苗の四肢を括り付けた。
それを見ていた信は————みたらし団子と三色団子と、餡子つき団子を三つ一気に頬張るという芸当を見せていたのだが—————目つきを変え、それらを一気に飲みこむと、早苗とそれとの間にたった。
「おい、小僧そこをどけ。死にたくなければな。」
「それはお前だよイノブタ、その人に————るな」
「アァン?!なんだって?」
「その人に、汚い触手で触るなと言っているんだ!!このクソ野郎!!」
そういうと信は、そいつの腹に回し蹴りを放ち、初めて放つスペルカードの名を口にした
「怨符『飛行機の中の死体』!!」
その弾幕は、決して整っているとは言えなかったが、それでも美しかった。
信の弾幕は集団で妖怪に襲い掛かり、最後に巨大な3つの弾幕が妖怪の頭上から襲い掛かった。
「お前はやってはならないことをした。俺の守るべきものにふれた」
そう言っている信の目を、早苗は見た。 他人を怨む目をしていた。
信は報酬として、『冬木立』という日本刀をもらい、早苗たちは、礼金をもらった。
こうして怨崎 信の初めての妖怪退治は終わった。
そして、もう一つ。
早苗たちがお茶をすすっているときに、それはやってきた。
「失礼します」
「あ、咲夜さんじゃないですか。 どうぞ。」
その者の名は十六夜 咲夜
「信様、お嬢様とチェスの勝負をしてほしいのですが」
いきなり名を呼ばれた信は、怪訝そうな顔をしたが、
「ん、いいよ」
と言い立ち上がった。 早苗が直した、神主服を着ている。
そして信は妖怪の山を後にし、三十分歩いた。
そして、見えてきた。
「あれが、わが主レミリア・スカーレットの住まう館、紅魔館です」
そこにあったのは、真紅の外観をした巨大な館であった。