二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方怨崎録 ( No.8 )
日時: 2016/02/23 16:29
名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)

06 雷鳴

「————て、ことですか?」

場所は、守矢神社の和室。 信の眼前には早苗がいて、かなり怒った顔をしている。 余談だが、信は正座をしておりかなり疲れている。

「はい」

「何か、言うことは?」

「すいませんしたッッッッ!!」

信はいきなり土下座した。

「まったく、どこに行ってたんですか?———黒電話だって、うちと紅魔館にしか———」

「その紅魔館に行ってたんですよ〜」

それを聞いた早苗は、さらに激高した。

「なら何で言ってくれなかったんですか!!心配したんですよ!!」

「まあまあ早苗。その辺にしてあげなよ。 信だって、反省してるだろうしさ」 

「でも、諏訪子様————わかりました。 でも、今度からどこに行くのかだけは言ってくださいね」

「はい。ごめんなさい」




その夜は、天気が荒れていた
信は、悪夢を見ていた。

『アンタは私たちから一生逃げられない』

『大丈夫よ、いつかは助かる。わたしも、お兄ちゃんも』

『加代、逃げるんだ。』

『でも、お兄ちゃん……』

『いつかは助かる、だろ?』

『アンタは私たちから一生逃げられない……!!』

「ッは!!」

目が覚め外を見た。 雷鳴が轟いている。

トントン

「信さん、私です。入ってもいいですか?」

「あ、ああ……。いいよ」

「すみません……私、昔から雷が怖くて」

しばしの無言が続く。
30分たったころ、信が口を開いた。

「なあ…早苗…」

「はい?」

「俺って………望まれて生まれてきたのかな……」

「!?それって……」

「いや、別に死のうとか考えてるわけじゃない。 ただ、実の親にあれだけされるとときどきそういう風に考えるだけさ—————向こうには友人もいた。妹もいた。  その妹に『いつかは助かる』と言われたことさえあった。でも————」

「信さん!!」

早苗が叫び、信の自虐が止まった。

「もう二度と………そんなことは言わないでください! あなたを愛している者が、一人でもいる間は……!!」

そう、早苗は信を愛していたのだ。
恋人が恋人に向ける愛、姉が弟に向ける愛、その二つを合わせた『愛』を彼に向けていたのだった。

「早苗…」

早苗は泣いていた。いつの間にか、天気はさらにひどくなり、雷鳴がまた鳴り響いた。
そんな中、信は心に決めた。 自分を愛しているこの人にだけは、もう二度と、こんな涙は流させない、と。