二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方怨崎録 ( No.12 )
日時: 2016/03/14 16:41
名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)

08 猛者達の決闘

「ここから消えてもらうってのはどういう事だ?」

信の言葉を受け、少年は手を首の前で動かした。ちょうど————首を切るようにして。

「まあ、こういう事だ。平たく言えば、決闘を受けていただきたいんだよ」

それを聞いた信は、少年を嗤った。

「お前は馬鹿か。名前も知らない奴と決闘する奴が、どこの幻想郷にいる?」

ほんのジョークのつもりだったが、少年は真面目に答えた。

「ここにいるじゃねえか—————俺は別の幻想郷から来た『お前』なんだよ」

一瞬、ジョークにジョークで返されたのかと思った。
だが、どうやらそうではないらしい。

「いいだろう、受けてやる。ところであんた、名前は?」

「名は望月 紅。職は執事長並びに紅魔参謀!!『幻想の大アルカナ』たぁ俺の事だ!!」

そう言うと、紅は拳銃を信に向け撃ってきた。

「(どこかおかしいぞ———奴の姿勢———握り方、間合い、ともにど素人だ)」

撃ち方を見て、信は確信した。

「(奴め、無反動だ!!)」

どんな人間であれ、銃を撃つ時には、反動で後ろに下がる。しかし、紅にはそれがないのだった。
十四歳にして、それを身に着けている。

「どうしたどうしたァ!!お前は魂魄妖夢の弟子じゃなかったのかァ!?」

「馬鹿を言うな!!」

そういうと、信は弾丸を切った。

「!!」

「よし……よし!!俺にもできたぞ!!」

「おっぱじまったわね」

いつの間にか、大広間にはレミリアとパチュリーも来ていた。

「けど、レミィ。本当にやるの?」

「当たり前よパチェ。紅!!そのおごれる者に、罰を!!」

紅はその言葉を背中で聞き、了解し、こう叫んだ。

「占術『灰色の塔』!!」

刹那、信に灰色の弾幕が降り注いだ。
信は弾幕を刀で切っていたが、頭上に閃く何かには気が付かなかった。
それは————雷であった。

「(決まった!!)」

紅魔館勢の誰もがそう思い、早苗は息をのんだ。
だが————そうではなかった。 信は雷を刀で受け止め、相殺した。

「やってくれるじゃんよ、紅さんよォ!!なら俺も、奥技を見せなくちゃあいけねえな。 魂魄流———いや、怨崎流奥技『紫怨桜』!!」

そう言うと信は、紅の懐に飛び込み、切りつけた。
技をもろにくらった紅は、倒れ際、

「占術『薄紫の正義』」

と、叫んだ。それは、毒の弾幕である。
その毒の弾幕が、一斉に早苗に向かった。 危険を察知した信は、一瞬ですべての弾幕を切り裂いた。

「貴様、早苗を毒に犯そうとしたな!!」

「ああそうさ。もっとも、失敗してしまったがね」

その言葉を聞いた信を見た瞬間、紅は戦慄した。怒りで信の身体が大きく見えたからである。

その信を見て、フランは自分が何をすべきか理解した。
彼女は、スペルカードで槍を作ると、信に向かって放り投げた。

「信、これ使って!!」

その妹を見た瞬間、レミリアも同じことをした。

「紅、これ使いなさい!」

「ありがとよ」   「サンキュー」

レミリアの槍グングニルと、フランの槍、レーヴァティンがぶつかり合う瞬間だった。 競り勝ったのは、信だった。
負けた紅は、床にたたきつけられた。

「あーあ、負けちった」

紅は、背中をさすりながら銃を信に渡した。

「さあ、約束だ。撃てよ」

しかし、信はそれを受け取らなかった。

「お前は馬鹿か。せっかく会えた同性の友人をみすみす見殺しにする奴はいねえよ」

それを聞いた紅は、ひとしきり笑った後に、

「よろしくな、兄弟」

と言った。

「ああ、相棒」

これが、四英雄のもう一人望月 紅の最初の登場だった。