二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方怨崎録 ( No.15 )
日時: 2016/03/19 13:34
名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)

10 執事長の1日 

紅魔館の朝は早く、夜は遅い。 主であるレミリアと、その妹のフランが吸血鬼だからだ。
数日前に来た新入りの(新入りながら執事長の職に就いている)望月紅も、例外ではない。

朝四時
彼は相部屋の住人であり同職の十六夜咲夜に起こされ、料理の後片付けや洗濯物などを、ほかの妖精メイドと分担してこなす。

「まったく、ここの人使いの荒さと言ったらないと思わないか、メイ?」

「うーん、どうなんでしょうかね? 私たちはこれが普通だと思ってやってますから、常人の紅さんには、難しいかもしれませんね」

「あ、お前バカにしたね!?」

などと、くだらない会話をしながら。

「あはは、ところでそれ、お嬢様のお皿ですよね。どうしてそんなしかめっ面してるんです?」

「あいつ、またピーマン残してやがる」

紅がそう言った刹那、銀色のナイフが紅めがけて飛んできた。 紅はそれを瞬時に、タロットの『塔』のカードで弾き返す。
紅にナイフを投げたのは、咲夜だった。

「お嬢様をあいつ呼ばわりするのは、最高職の人間としていかがなものかと思うわよ、紅」

「そうかい。ま、俺としてはお前に下克上でもしてもらったほうが、気楽で親しみやすいと思うがね」

それを聞いた咲夜は、少し頬を赤らめた。

朝五時

とくにやることもないので、私室に戻ってベッドに寝転がり、大図書館で借りた魔道書を読んでいる。

「(しかし、この部屋———————)」

紅はあたりを見回す。

「(どこか悪意を感じるな。 相部屋だし、ついたてもないし、何よりダブルベッドだし)」

このおかげで紅は、咲夜が着替える時など外に出ていなければならなくなった。

「紅、朝ご飯の支度、今日は主にあなたの担当じゃなかったかしら?」

「すまん咲夜、素で忘れてた。すぐ行くよ」

扉の外で咲夜の声がしたので、廊下に出た。

朝六時

レミリアが寝室から降りてくるころには、紅茶の香りが辺りに漂っていた。

「今日の朝ご飯は、パンに目玉焼きにベーコンのフライドにアールグレイか。なかなかいいセンスしてるわね、紅」

「ありがとうよ」

「なかなかいいセンスしてるんですって。よかったわね」

そう咲夜が言うと、紅は太陽のようににっこりと笑った。
この違いはなんなのかと、ひそかに考えないメイであった。

朝食を終えると、紅は庭に出て草木や花の手入れをする。 手入れをしながら門に目をやると、門番の美鈴が相変わらずの体勢で眠っていた。

「おーい、美鈴! 起きろー」

「むにゃ……? 」

朝八時

やることが無いと、しばらく紅は妄想にふける。

「(えっと……このポーンをAの五に、でもってこのナイトをEの三に動かして……Zzz……)」

しかし、朝四時に起きているので、しばしこういう事にもなりえる。

執事長の一日は今日もこうして過ぎてゆく。