二次創作小説(紙ほか)
- Re: 東方怨崎録 ( No.18 )
- 日時: 2016/03/18 23:30
- 名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)
特別篇 数えたら眠くなりそうな雲の下で
正直言うと、信は蓮のことをあまり好いてはいなかった。理由は、早苗とすぐに打ち解けたという一点のみである。
「(それに、あの人のいい感じの笑顔も気に入らねぇ)」
常人ならすぐに嫉妬と気付いただろうが、信はそういう機会が一度もなかった故に弾幕の『力』、『怨み』の感情のみが増幅して弾幕が無駄に強力になってしまった。
「(まぁ、新しいスペルカードを使えるようになったのはありがたいか)」
そう考えながら、皮肉に笑った。 そんな時である、二つの依頼が舞い込んだのは。
「連続放火犯?!」
最初の依頼は連続放火犯を懲らしめてほしい、というものだった。
どういうものですか、と蓮が聞くと依頼者はこういった。
「ここ三日前から、イの村の街道、ロの村の商店街、ハの村の富豪の家に、放火が起きるのです。それも、きっかり十二時に」
「そうですか。じゃあ今夜の十時に、場所の見当は付きますか?」
依頼者は首を横に振り、礼を言って出て行った。
「信さん、早苗さん、場所の見当は付きますか?」
「いいえ」
「俺も、答えはノー。まったくわかんねぇ。でもさ、現場に行けば何かわかるんじゃないか?」
その直後、二つ目の依頼が舞い込んできた。
「妹紅を探してほしいの」
依頼主は八意永琳。永遠亭の医者だ。
聞くと、藤原妹紅は永琳の主、蓬莱山輝夜のライバルであり、輝夜は犬猿の仲である妹紅がいなくなったために、生気を失ったような顔をしているのだそうである。
「お礼は必ずするから」
そう言って、永琳は帰って行った。
「……困るんだよなぁ、私のモットーは『なんでも無料』なのに……」
そういいながら蓮は、現場に向かった。
しかし、現場で得られたものはごく僅かだった。
焼け跡のすべてから、鳥の焦げ跡が出てきたという事と、足理猿白髪の人間を見た人がいるというだけ。
そんな中だった紅から連絡が入り、狙う場所が分かったといわれた。
「地図を買ってきてな、放火のあった場所に線を引いてみたんだ」
大図書館に、紅、信、早苗、咲夜、そして蓮の五人が集まった。
「三つじゃ訳が分からねぇが、四つ目を入れるとこうなった」
「………これは、北斗七星!!」
「お、鍵宮さん、勘がいいね。 そう、北斗七星だ」
そして五人が五人とも、目的地であるハの村の役場に向かおうとしたが、時刻を見ると午後十時、間に合いそうにないと、思った時だった。
「私ならあそこまで瞬間移動できますよ」
そう言ったのは蓮だった。
「マジか、じゃあ頼む!!」
人里役場前
「あんたか、藤原妹紅」
『ふん、まさか貴様のようなガキに見破られるとはな』
そう、この放火事件の首謀者は妹紅だったのである。
『名を聞いておこう』
「怨崎信」
すると、妹紅はにっと笑いこういった。
『そうか、信。貴様の運命は、死のみだ!!!』
勝負は、一瞬だった。
「ありがとう、蓮」
「いや、いいんですよ信さん」
すべてが終わった後、蓮が帰れる道を見つけた信は、帰りに鹿撃ち帽と黒パイプを蓮に渡した。
「いや、あんたが鳥の焦げ跡を見つけてくれなければ、犯人はわからなかった」
「………じゃ、また会いましょう!」
「ああ」
「————さん、蓮さん!」
「あれ、椛さん?!」
気が付いたら、蓮は野原で寝転がっていった。
強い風が吹き、蓮の帽子を———信からもらった鹿撃ち帽をとばした。
その様子を、椛は不思議そうな目で見ていたが、やがてこういった。
「じゃ、捜索を続けましょうか!」
「ええ、椛さん!」
その日の空には、数えたら眠くなりそうな雲が浮かんでいた。