二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方怨崎録 ( No.22 )
日時: 2016/03/25 10:32
名前: こんにゃく春風 (ID: ZgzIiRON)

12 温泉旅行に行こう! 前篇

「あの、久しぶりにみんなそろったことですし、旅行に行きません?」

「私はいいけど、諏訪子はどう?」

「いいよ、信は?」

「いいよ、別にどこでも」

こうして、守矢全員集合を祝しての小旅行が計画されたが、その行先は—————

「温泉?!」

「あれ、信、嫌なのかい?」

「あ、いや、別に嫌じゃないけどさ………」

彼以外の全員、頭の中から外していたのだ、彼が男だということを。
そして、その温泉の場所が地底だと知って、彼はまた驚いた。

「どうしてまた地底なんかに————」

「愚痴るんならついて来なくてもいいよ」

「ええ、ああ、行きますよ、行きますともさ!!」

どうも、地底というところは不健康なような気がする、というのは彼の完全な偏見である。
地底への穴は、意外とすぐ近くにあった。

その穴から落ちる。『下りる』ではない、『落ちる』のだ。その落下の最中に、妖怪が二匹飛び出てきた。 一人は糸から垂れてきて、一人は桶の中に入っている。

「あらー、久々のお客さんだね…………って、守矢の巫女?!」

糸から垂れてきた金髪の方が、早苗を見て驚く。

「どうしたの、ヤマメ?」

「キスメ、守矢の巫女が出た! 神様たちもいるけど、袴姿のお兄さんは、初めましての人だね」

「あ、ほんとだ、初めまして!」

信が自己紹介すると、桶の方はキスメ、糸(土蜘蛛らしいが)の方はヤマメと自己紹介をした。 と、そこへもう一つ、声が近づいてきた。

「なんなの、騒がしい————もとい、妬ましい」

声は、少女だった。黄土色の髪と 翠緑の瞳をしている。

「あ、パルスィ」

キスメが翠緑の少女を見た。それにつられて、信も目を動かす。
そのエメラルドにも似た輝きを持つ瞳には、自分と同じような感覚が宿っているような気がした。

「パルスィはね、嫉妬を操れるんだ」

ヤマメの説明で、信は理解した。 嫉妬と怨み、どちらも負の感情を操れるのだから。

「まったく、そうやって人の能力をばらせるあなたの口の軽さが妬ましい」

パルスィは信を見て、ヤマメに説明を求めた。

「こちらのお兄さん、えーと」

「信、怨崎信だ。よろしくな、キスメ、ヤマメ、パル」

「パル?!」

この反応は、パルスィにとっては当然のことだっただろう。彼女は今まで、あだ名で呼ばれたことなどなかったのだから。

「ああ、ごめん。パルスィの『スィ』の部分が発音しにくかったからさ」

「まったく、あなたのそんな頭の回転の速さが妬ましい」

信は苦笑しながら『落ちて』いった。途中、旧都という場所で、鬼の星熊勇義にもあったが、その鬼は神奈子の友人らしかった。
そして、目的地である地霊殿についた。