二次創作小説(紙ほか)

Re: マリオとマジカル*マスターズ【白と黒の訪問者】 ( No.122 )
日時: 2016/04/03 18:27
名前: シロマルJr. ◆o7yfqsGiiE (ID: 4qcwcNq5)

7.
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突如発せられたその悲鳴には、本人より周囲の人々の方が吃驚していた。



「ああ?どうしたんだよルイージ?」
その様子を見たマリオが、ルイージの元に寄った。

「クモが出てきたんだよ!!」
ルイージが指指した先には、不気味な模様が施されたクモが、木に糸をかけてぶら下がっていた。
しかもどこから来たのか、1匹だけではなく、同じような模様のものがもう1匹いる。

「何だよクモごときで…お前は変な所で弱虫だよな……こんなモンどうって事ーー」
マリオがルイージが立たせようと手を差し出した、その時ーー



ーーーシャアァァァァァァァァァァァァァァ!!



2匹のクモは、まるで蛇の様な奇声を上げ、マリオに襲いかかってきた。それもかなりの勢いで。
マリオは咄嗟に上半身を仰け反らせる。
幸い、クモの尻から出ていた糸に救われ、直撃は免れた。

「マリオッ!」
ヨッシーが真っ先にマリオに駆け寄る。後の者も続いて集まる。
その集団の中に、カノの姿は無かった。まだ木陰で気持ち良さそうに眠っている。

「大丈夫!?ケガは?」

「ああ、何とか平気だ。危なかったけどな」
マリオはそう言って、服に付いた砂埃を払って立ち上がった。

「…ん?あそこに誰かいるようですが?」
ネルが指差した先は、先程クモが出てきた木の頂点だった。



「おいおいダメじゃないかスパ、それにイダーも。通行人を襲っちゃ」



すると、そこにいた1つの人影が、甲高い声で話し始めた。

ーーーしかし、その男性は若干…いや、かなり変わっていた。



1、トサカのようなロン毛。
2、体のあちこちに、色々変な柄が描かれている。
3、肩に付属している、謎の球体。

側から見れば、完全に不審者極まりない格好で、その男はそこに立っていた。
もしも現実世界にいれば、☆即・通・報☆レベルである。
いい歳してなんて格好をしているんだ…それが全員の共通思想だった。

しばらくして、男が「とうっ!」とかいう掛け声とともに、木から飛び降りて来た。
そして見事に着地成功。刹那、辺りにビュウと猛烈な風が吹き荒れた。

「うおおおおお!?またまた寒っ!」






(何この人……何あのトサカみたいなの?)

(スパ?イダー?もしかしてクモ達の名前?…どれだけセンスないんだよ!?)

(ツッコミが全く追いつかん……)
それぞれが違う疑問を抱く中、男が喋り始めた。

「皆さん混乱しているようだから、順に説明しようか。まずはスパ、イダー。こっちに戻ってきなさい」
男がパチンと指を鳴らすと、2匹のクモは素直に戻って行った。あの意味不明な球体の上に。
もしやあの球体は、クモ達の待機場所的な何かなのだろうか?

「私の名はフウシ。カッコいい名前だろ」

「いや全然」
フウシと名乗る男の問いかけに、ヨッシーが即答する。

「何だよー、こういう時はノリってもんがあるでしょ。ノリで頷くとか何とかさ」

「ボクそういうのキョーミ無いんで」

「…あ、スパとイダーというのは、このペット達の名前だよ」

「こんなキモい虫がペットとか、頭どうかしてるんじゃないの?」

「……で、この所々に描かれた独創的な模様が」

「そういうのはね、独創的っていうか、只のヘンテコって言うんだよ」

「おいっ!そこの恐竜!!」
流石に痺れを切らしたのか、フウシがヨッシーに向けてビシッと指差しした。

「お前はさっきから何なんだ!私の話の邪魔ばかりして!!」

「え?ボクはスーパードラゴンのヨッシーだけど」

「そういう事じゃ…ああもういいっ!!そんな事より本題だっ!」

((何が言いたいんですか……))
ついには、会話に参戦していなかったネルとピーチ姫にまで、心でツッコまれてしまう始末。
このフウシという男の『ツッコませるスキル』は一流だ。習得しても全く得は無いだろうが。


「よく聞けオンドリャアアア!!ここからが本題だボケェェェェェェェ!!」
よっぽど動揺しているのか、完全にキャラ変してしまっている。

「早く言ってくれよヘンテコおじさん」

「ヘンテコおじさんとは失礼なっ!!」
煽りにも負けず、必死で話そうとするフウシ。だんだん可哀想に思えてきた。

「……ゴホンッ、えー実は、私はちょっとした人探しをしているんだが…」

「誰を探してるの?」

「待ってなさい、今写真を出してやるから」
そう言って、フウシは1枚の写真を取り出した。マリオ達は、その写真をまじまじと見つめた。

「ーーー!!」
そして吃驚する。その写真には、見覚えのある人物が映されていた。

「あの〜フウシさん、この人を探してるんですか?」

「ああ。ちょっとこの娘に用があってな、カノって言うんだが…」
その名前に、ますます吃驚した。そう、その写真にはカノの姿が映し出されていたのだ。

「ああ、カノちゃんならそこにーーーングッ!?」
事実を話そうとしたルイージの口を、慌ててマリオが押さえる。



「おいルイージ、今カノの事を言うのはやめておけ。」

「え、何で?」

「なんかあいつ、所々俺達に隠してる所があると思うんだよ」

「…そうなの?僕にはそんな風に見えなかったけど?」

「とにかく、俺にはそう見えたんだよ……例えば、何かヤバい目に合ってるとか」

「……どういう事?」

「お前まだ分からないのか?もしあいつが命を狙われてるって事があったら…」

「…」

「このパターンは絶対そうだって!オマケに、あんな見るからに怪しい奴が写真まで持ってるんだぜ?
そうとしか考えられないだろ?」

「……」

「今は、俺達はカノを知らない事にしておくんだ。分かったか?」

「…分かったよ。僕達からは黙ってよう」



ーーーという事を、全て目で意思疎通、すなわちアイコンタクトしていたマリオとルイージ。
ーーーちなみに、この間約0.5秒である。







「…悪いけど、俺達はそんな人知らねーんだ」
と、実際の言葉がマリオの口から伝えられた。
もっと口ごもるかと思ったが、意外に冷静な言葉になっている。

「そうか、それならいいのだが……」
フウシはそれ以上追求する事はなく、すんなり諦めてその写真をしまった。


「よし、これも何かの縁だ。君達、そこにじっと立っていてくれ」
急にそんな事を言い出すフウシ。マリオ達は言われるがままに横に並んだ。

「あれ?でもこのパターン、どこかで見た気がするんだけど…気のせいかな?」

「ヨッシー、今は立ってる時間だぜ」

「立ってる時間って何の時間だよ……」
そんな事を言いながらも、割と素直に並んでいるヨッシー。
しばらくして、フウシが両肩の球体に、手をクロス状にして触れた。
敢えてしばらく触れなかったが、スパとイダーはその上で大人しくジッとしている。

「うう、やっぱり気持ち悪いな……」

「ルイージ、今は立つ時間」

「…だからそれ何の時間?」





「ハイお疲れー!終わったよ!」
数秒経って、フウシが右手を挙げて合図した。
お疲れと言っても、ただフウシがあの姿勢のまま左から右へと向きを変えただけだが。

「どうだ?イケメンに撮れたか?」
マリオがふざけてそんな風に訊く。フウシは満足そうな顔で

「バッチリだぜー!!」
と、対応してくれた。

「ユー達もなかなかシャレオツだから、こっちとしても撮りやすかったぜ!
ま、ミーには到底及ばないけどな!ハハハハハハハハハ!!」

「…………!?」
急すぎるキャラ変に、当たり前のように硬直する、そして戸惑うマリオ達。
全く、何でコイツのキャラはこんなにも掴めないのだろうか?

こうして、マリオ達と楽しい一時を過ごしたフウシ。

「では、私はそろそろ帰るんで、また会える事を願っています」

「いや、こっちとしては2度と会わなくて良いけど」
ヨッシーが毒突く。それは殆ど全員が思ってはいたが、口に出したのはヨッシーだけだった。

「さらばっ!」
とか言ったその途端、フウシが風のようにフッとその場から消えた。
ーーーと同時に、辺りに再び強い風が吹き荒れた。
流石に慣れたのか、身を縮めて震える者はいなかった。
ただその頓狂な出来事に、呆然と突っ立っているだけだった。




「……ふぁぁぁ…あ、皆さんおはようございます」
その数秒後、ずっと木陰で眠っていたカノも、ようやく目を覚ました。
眠そうに目を擦りながら、キョロキョロと辺りを見回した。
みんな、狐につままれたような顔をしている。

「あれ?な、何かあったんですか?」
みんな思ったよりも沈着だった。

「いや、何もなかったよ。ただヘンテコおじさんがいただけかな」
ネルがそう説明すると、カノも納得したようで、それ以上話に突っ込んで来なかった。

「そうですか、それじゃ、探索を続けましょう!」
元気よく先頭に立って歩くカノを見て、マリオは不安の念を抱いていた。
こうして、まだまだ面倒な探索は続くのであった…。