二次創作小説(紙ほか)
- Re: マリオとマジカル*マスターズ【白と黒の訪問者】 ( No.130 )
- 日時: 2016/04/19 01:36
- 名前: シロマルJr. ◆o7yfqsGiiE (ID: 4qcwcNq5)
シ「先生、授業がめんどいです!どうしたらいいですか!?」
カ「頑張ってくださーい」
<本編>
9.
辺りに霧がモヤモヤと立ち込める中、少女はまたニコニコと微笑み、マリオ達の前に立っていた。
その目は輝いてはいるが、どこかひっそりとした闘志のような物も表れていた。
「ねぇ、何するの恐竜さん?」
少女は笑顔でヨッシーを見つめる。ヨッシーの顔が引きつっている。
しかし、こんな子供に押し負けてはいけないと思い、精一杯の言葉を探し出した。
「あのさ……?キミ迷子?名前は何ていうの?」
咄嗟に出てきたものだが、案外正しい質問かもしれない。
考えてもみて欲しい。少女は今、何をしていたかは知らないが、こんな人気の無い裏山に1人でいた。
それも深い霧の中、しかもロールプレイングゲームに登場するような、魔女の格好をして。
「え、あたしの名前はコロンだけど?」
しばらくして、ヨッシーの質問の答えが返ってきた。
コロンと名乗る少女は、トンガリ帽子のつばをクッと上げて、これまた屈託のない無邪気な笑顔を見せた。
「っていうか、あたしは迷子じゃない!裏山が好きでここにいるの!」
しかし、すぐにコロンの表情が少し変化した。目が若干吊りあがり、頬をぷくっと膨らませる。
「本当か〜?」
すると、ヨッシーの真横にいたマリオが口を挟んだ。
「もしやの話だけど、何か悩みとかあってここに来たとかーーーー」
「あーもう、あなた達には関係ないでしょ!?」
コロンが慌てて反論する。少しだが慌てている様子も見られる。何をそんなに慌てているのかは分からないが。
「…つーか、お前ら全然喋ってないじゃん。遠慮しないでちょっと喋ったらーーー」
「そうそう、黙るなんてらしくないよ?もうじゃんじゃん喋ってーーー」
そう言いながらマリオとヨッシーが後ろを振り返る。
「…あ、あら?」
「どうなってる……の?」
振り返った彼らの目先にあったのは……1本の細い木だけだった。
「あれ…何で?何でみんないねーんだよ!?」
「みんなー?隠れてないで出てきてよ!」
2人は両手を口に当てて、みんなの名前を呼ぶ。しかしながら反応は無い。
「ねぇ、何探してるの?」
そんな2人を面白そうに眺めながら、コロンが興味津々といった様子で尋ねてきた。
「いや、さっきまで後ろにいた仲間が消えてるんだ」
「コロンちゃん…だっけ?知ってたら教えてもらえると嬉しいんだけどね…」
今度はしっかりとしたヨッシーの質問に、コロンはオレンジ色のくせっ毛を弄りながら応えた。
しかしその答えが、この後マリオ達を只々唖然とさせる事になるとは……
「ああ、あの人達ならあたしが消したよ?」
サッパリとした口調だった。
本人は全くの無自覚で言っているのだろうか、そんなふざけた返答に、マリオ達が無関心な訳がない。
「…お前か!何でそんな事……」
「マリオ!落ち着いてっ!」
その言葉を聞き、マリオがコロンに掴みかかろうとした。それをヨッシーが慌てて阻止する。
「心配しなくていいよ?消したって言っても、物理的に消したわけじゃないし」
ケロッとした感じで、再び表情を笑顔に戻す。
「どういう事?」
「あの人達ね、さっきから全く喋ってなくてモブ化しちゃってるでしょ?
それだと、向こうも向こうで色々気まずいと思うから、あたしが"気配"を消して、自然なポジションに
立たせてあげたかったワケ…どう、理解できた?」
ーーーうん、全然分かんない。何言ってんのこいつ。
モブ化!?…気配を消す!?…自然なポジション!?…最近の幼女は何て碌でもない事考えてんの……
それが、マリオとヨッシーの共通意見だった。
考えてみれば、マリオ達は今日、ほとんど面倒な人物としか知り合っていなかった。
全く、何で今日はこんなにメンドくさい人運が強いんだろう?
そんな事も考えていたりした。
そもそもの話、こんな少女があたかも魔術師のようなマネが出来る事自体、不自然極まりない。
もっと言うと、霧の立ち込めた裏山に1人で、魔法使いの格好でいる事がまずおかしいのだが。
「なぁコロン、お前一体どうやってーーー」
どれだけ頓珍漢な答えが来てもいいと、覚悟を決めてマリオが質問した。
しかし……
「あっ!ちょうちょだ〜〜〜!!ヒラヒラ〜」
…彼女の興味は、完全に忘れ飛んでいる蝶に寄ってしまったらしい。
あっちを追いかけ、こっちを追いかけ、もうマリオ達には目もくれていない。
「おい…コロン?」
「じゃ、あたしこれからこの蝶さんのお世話しなきゃだから、帰るね!」
「………いやちょっと待てぇぇぇぇぇぇ!!?」
いきなりの帰る宣言に、戸惑いを隠せない2人。
「大丈夫だよ。数分経てば戻ってくるって、多分」
「多分って……やった事なかったのかよ?」
「じゃね!またいつか会えるかな?」
「人の話を聞けぇぇぇ!!」
そこまで進むと、コロンは右目を軽くウインクさせて、まるで空気中に溶け込んだように、その場から姿を
消した。
その瞬間、裏山全体を覆っていた霧が晴れ、空は再び澄んだ青色を取り戻した。
マリオとヨッシーは、その様子をただ呆気に取られて眺めているだけだった。
コロンが姿を消してから、数分が経っていた。
「マリオさーん、ヨッシーさーん!」
しばらくして、そう遠くない場所からカノの声が聞こえてきた。
それほど時間が経ったわけじゃないのに、久々に声を聞いた気がする。何故だろう?
声のした方を振り返ると、カノが胸の前で小さく手を振りながら歩いていた。
白く短いマントが、穏やかな風でなびいている。
その後ろからルイージ、ピーチ姫、キノピオ、ネルが続いて歩いてきた。
彼らの表情は、若干疲労が溜まっているように見える。何か厄介な事でもあったのだろうか?
彼らが本当はどうしていたのかは、今はまだ知らなくていいだろう。
さっきコロンに聞いた事だし、確認したところで、事態がいい方向に進展するとは思えない。
「ねぇ兄さん?とりあえず休まない?僕もうクタクタだよ……」
どうしようか悩んでいた時に、ルイージが足を投げ出して座り込んだ。
「どうします、1度城の方に戻りましょうか?」
「…そうですね、それじゃ皆さん、今日のところはピーチ城に戻りましょ!」
他のメンバーも頷き、本日の探索は一応終了という形になった。
「あー疲れた……とりあえず何か食べよ」
「ヨッシーは相変わらずだね」
「あまり食べ過ぎると、かえって健康に害を及ぼすというものですよ」
「後で、作者に何かおごって貰えば良いじゃない?」
「「その手があったか!!」」
一件落着(?)し、今まで通り楽しげな会話が続いている。
その頃カノは、ヨッシー達に着いて行きながら、ポケットから小さなペンダントのような物を取り出した。
それを開くと、彼女の足がピタリと止まった。
(パパ………ママ……)
心の中で、念仏のように唱えるカノ。
(カノは大丈夫…!絶対にまた村を平和にするからね!)
ペンダントに貼られた両親の写真を、じっと見つめる。何だか目頭が熱い。
「…カノー?どうした、具合でも悪いのか?」
マリオに声をかけられ「ハイッ?」と裏返ってしまった声で返事をする。
それと同時に、ペンダントの上フタをカチッと閉じる。
「大丈夫です……あ、待って!カノも話に混ぜてくださいっ!」
……とりあえず、今は過去なんて気にしてもしょうがない。今の事を、未来のためにしっかり考えよう。
そう決意しながら、カノは再び走り出し、賑やかな会話の中に混ざっていった。