二次創作小説(紙ほか)

Re: マリオとマジカル*マスターズ【白と黒の訪問者】 ( No.93 )
日時: 2016/02/12 17:22
名前: シロマルJr. ◆o7yfqsGiiE (ID: .DwXlVdY)

7.
突如現れた黒コート(?)の少年に、その場がざわついている。
急に後ろから包丁を投げ、それもピーチ姫の近くの檻に刺さったのだから、無理もないだろう。

少年は、そのままマリオとルイージの間をするりと抜け、クッパのいる方に歩を進める。
「大魔王さん、何があったか存じませんが、姫様にそんな乱雑な事をするなんて、私としては許せません。
捕まえるとしても、さすがに扱いがひどいと思うのですが?」
丁寧な口調で伝える。マリオ達の脳内に、次々と「?」の文字が浮かぶ。
「フン、どこの誰かも分からぬ奴に、どうこう言われる筋合いはないわ」
しかし、さすがは大魔王。そう簡単には引き下がらない。
「申し遅れました。私の名はネル、ただの通りすがりの旅人ですよ」
ネルと名乗る少年は、気負いせずに自己紹介をした。
「とりあえず姫様、鍵のロックも解除された事ですし、ひとまずそこから出てはどうです?」
その言葉に、ピーチはなぜか未だカゴの中にいた事を改めて思い出す。
「あ・・・そ、そうね。ひとまずこのせまっ苦しいカゴから出ましょう!」
そういうが早いか、そそくさとカゴを抜けたところを見ると、今までずっと根気強く我慢していたのだろう。


ピーチ姫はカゴから出ると、一目散にマリオの後ろに隠れた。そして精一杯の低い声でささやいてみる。
「説教1時間…忘れないでよね…」
今はいちいち反応している時間はないので、無視してクッパの方へ向き直る。
姫を見知らぬ少年に取り逃がされたクッパは、当然激おこ状態だ。
「キサマ………許さん!とっちめてやる!!」
「まあ待ってください。私も力ずくでやるのは好きではありません。ですから、もう姫様をさらうのは
諦めたらどうですか?」
ネルが提案したが、クッパは怒り狂ってガルルル唸っているだけだ。
「……どうやら、交渉は決裂ですかね」
そう言うと、一体どこに隠してあったのやら、いつの間にか2本の長いステッキを両手に握っている。
ーーーいや、急に手の中に現れた、と言った方がいいかもしれない。

「こうなれば実力行使です。本当はこんなことしたくなかったのですが……」
そう言うなり、ネルは2本のステッキをクルクルと器用に回転させる。
クッパはというと、もうすでにやる気満々といった様子で、すっかり空になったカゴを後ろに放り投げた。
ずしゃりと、鉄と地面の接触するときの鈍い音が聞こえる。
「……マリオさん…でしたっけ?」
すると、不意に後ろを向くことなくネルは言う。
「な…何だよ?」
名前を呼ばれた男は、一瞬戸惑った表情を見せるも、すぐに通常の顔に戻した。
「今からの戦い…是非とも、目に焼き付けておくことをオススメしますよ…」
「…は?わ、分かったけど…」
マリオの返答が終わる前に、両者はすでに火花を散らして睨み合っていた。
もっとも、睨んでいるのはクッパのみで、ネルの方は涼しい顔をしてステッキを回転させているのだが。
「よくもピーチ姫を逃したな!このクッパ大王が、キサマに地獄を見せてやる!!」
「なるほど…それなら、是非とも見せてもらいたいものですね」
赤紫色の長い襟足を右手でサッと払い、軽く首を斜めに傾ける。
「本当に…それが可能ならの話ですがっ!!」


その威勢のいい言葉を合図に、ネルが勢いよく前方へ飛び出す。
こうして今、大魔王vs謎の黒少年の両者の戦いがスタートした。