二次創作小説(紙ほか)
- Re: サトミちゃんちの恋のライバル!? ( No.48 )
- 日時: 2016/10/04 15:31
- 名前: ももたん ◆hjAE94JkIU (ID: rS2QK8cL)
▼モモイロハンカチ△
空がきれいな茜色に染まるのを、あたしは一人で見ていた。
探し始めて3日目。未だにいい物件は見つかっていない。
いつもはカオルンと寄り道をしながら帰路につくけれど、今日は先に帰ってもらった。単純に、ひとりになりたかった。
カオルンは何も聞かずに、そっか、じゃあ遅くならないようにねと、手を振りながら、たぶん、家に帰っていった。
「はぁ…疲れちゃったなぁ」
何につかれたのか。いい物件探しか、あまり慣れないカオルンの家で過ごすということか。別にその二つはどうでもいい。
好きな人を嫌いになるということにつかれたのだ。
あれがただの勘違いだったということは、ソウスケからメールで聞いた。そのときは、やってしまったと思った。けれど、今となってはどうしようもないことだということに気付いて、やってしまったなんて気持ちではなく、ヤバい。そう思った。
ヤバい。ブンゴを凄く傷つけた。今から謝りに行く?
…いや、そんなことをしても、きっと許されない。だって、きっとあたしはブンゴの心に、深い深い傷をつくってしまったんだ。
気づいたときはもう遅かった。焦って、苦しくて、悲しくて、自分に対しての怒りが爆発しそうになって、布団にくるまって、声を殺して泣いた。
きっとカオルンたちは気づいていた。けれど、あえて何も言わないでそっとしておいてくれた。その気遣いが、あたしにさらに大きなプレッシャーを与えた。
あたしがたどり着いた結論はこれだ。もう、ブンゴに対する恋心は捨てる。
傷つけた立場のあたしが、やっぱり好きなんていうのはばかげてると思った。だったら、恋心なんて捨ててしまえばいい。そう思った。
でも、恋心を捨てるなんて言うのは簡単じゃなかった。
気づくと心と頭のどこかにブンゴがいて、必死に振り払う。でも、消えてくれない。
やっといなくなったと思えば、また気づくとどこかにいる。その繰り返しだった。
今だってほら、ブンゴのことばっかり。それしか考えていない。
でもしょうがない。初めての告白、愛のあるハグに、キス。全部全部、初めてがブンゴとだった。
——気付くと、スカートにシミができていた。
嫌だ、あたしなんで泣いてるの。意味わかんない、やめて、涙なんて今必要ない。必要なのは好きな人を嫌いになる決断力なのに、なのに。
…なのに、ぽろぽろと大粒の涙が次から次へと頬を伝って落ちてくる。
ハンカチ。ハンカチ持ってたよね。どこだっけ。
急いでポケットの中身を探る。ああ、視界が歪んで見えない。
と、目の前にあったのは可愛い桃色のハンカチだった。
「っえ…」
驚いて上を見る。そこにいたのは、愛する人。ブンゴだった。
「ごめん、ごめんなサトミ。俺兄貴に言われるまで、気づかなかったんだ、サトミの気持ち。
兄貴に言われて、考えて、分かったんだ。ごめん、サトミの思い出に沢山俺の存在残してきたくせして、自棄になって出て行けみたいなこと言ってごめん」
「うん…うん…!」
そのあとは、ブンゴに支えられて、アパートに帰った。
部屋は、あたしが出ていった時と変わらなくて、あたしのものが置いてあった場所に別のものが置かれていたりしなかった。
二人で撮った写真、二人でお揃いで買ったアクセやストラップ。全部変わらず置いてあった。
「…あとで、カオルンとこ行こう」
「そだね。お世話になったし」
なんでカオルンの家に居候していたことを知っているのかは聞かなかった。別に今はどうでもいい。そんな気持ちが勝った。
今はただ、この時間を味わいたかった。
「疑ってゴメン。…大好き」
「別に、誤解するようなことしてた俺も悪いし。…俺も好き」
ふふっとつい笑いがこぼれた。ブンゴが何で笑っているんだとでも言いたげな視線を投げてくる。
「別に。今は笑いたかったから」
「? …あっそ」
君と過ごす時。それは全部幸せで、無駄なものなんてない。
いくら喧嘩しても、いくら疑いあっても、別れられないくらいに思い出を作ろう。
そういうとブンゴは、そうだなと言ってくれた。
Fin