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二次創作小説(紙ほか)
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.14 )
- 日時: 2017/04/10 05:27
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
—— キィン! ガッ ガッ ガッ! キィン!
人気のない狭い路地裏で金属の激しくぶつかり合う音がする。
「す、すげぇなぁ…」
「これがロロノア・ゾロ…」
「や、やべぇよ。怖すぎるだろ」
無理だ。
もともと相手を伸して勝つ なんて思っても居なかったが、
あわよくば動きを止めるくらいは…… とは思っていた。
茶色い髪の大男と目にも止まらぬ速さで戦闘をくりひろげる緑髪の男。
三本の刀を使いどう見ても怪力で振り回していると思われる大槌をやすやすと受け止める。
…………次元が違いすぎる。
「どうすりゃいいんだよ、いったい」
「「……………」」
路地裏より少し離れた建物の屋根からそっとその様子を見守っていた青・ピンク・黄緑の色鮮やかな髪を持つ三人組の男たち。
はぁ とため息をつき思わず頭をかかえる青髪の若い男。
その言葉につられるように、残り二人も互いに顔を見合わせた。
—— キィン! ガッ ガッ ガッ!
「おいおい、お前さんそれで本気のつもりか?」
「はっ…そりゃてめぇもだろうがよ」
相手の力量を図るかのように大槌と刀が交互に触れ合う。
どちらも使い手はパワータイプ。それゆえに狭い路地裏では満足に力を出せない。
ところ構わず建物を巻き込めばそれでもいいのだが…互いにまだ本気は出していない。
「妙だよな。なぜ場所を変えないんだろう?」
「?」
「ああ、たしかに」
屋根の上で胡坐をかきながら黄緑頭の年若い男がポツリとつぶやく。
それに呼応するようにピンク髪の少年はうんうんとうなずいた。
二人のやりとりの反応するかのように、青髪の男はかかえていた頭をあげ話題に上がっている路地裏の男達へと視線をうつした。
—— キィン! ガッ キィン! ガッ ガッ ガッ!!
「……あいつも、狙ってるんじゃないのか?」
「あー」
「やっぱそう?」
しばらく渦中の二人をみつめたのち、青髪がポツリとつぶやく。
ピンク色と黄緑髪は納得がいったというようにコクコクと相槌をうった。
「ロロノアは気付いてるのか?」
「さぁ…」
「興奮して見えてなさそう」
「あ、おれもそれに一票」
「情報じゃあ一味の戦闘員役…いわばプロだろ?そろそろ勘付いてんじゃないのか?」
「あー、じゃあやっぱそっちに一票」
「ペネロ…おまえどっちだよ」
先ほどまでの尻込み具合はどこへ行ったのか、屋根の上では三人組の呑気なやりとりが続く。
—— ガッ ガッ ガッ!…キィン!
(これ以上続けると流石に勘付かれそうだな……そろそろ潮時か)
「おい、さっきから何考えてやがる?」
「たは〜、気付かれたか」
上段から鋭い一太刀が振りかざされる。
それを素早く槌の柄で受け止めながら、アズリアはまいったなぁ という顔で笑った。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.15 )
- 日時: 2017/04/10 05:28
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
「へぇ〜、美味しそう」
「おい…遊びも大概にしろよ」
「んふふ、なぁに?やきもち?」
「……………」
や〜おこった。こわ〜い と言いながらクスクスと笑う黒いケープの女。
彼らの見つめる先には頬いっぱいに食べ物を詰め、まるでリスのような状態の男二人とタヌキのような動物。
そしてそんな横で二人と一匹を見遣りながら、もう食べ終わったのかプカプカと煙草を吸う金髪の男。
— 海賊、麦わらの一味。マラン島への上陸を確認しました。
これは数刻前の出来事である。
組織からの伝達を受け、漆黒の男—グレパルトは相棒である女—ミルエと共に即座にマラン島へと向かった。
そして配下たちの情報を元に一味の行動や状況を直ぐに割り出し、現在…船長確認のため向かいの店を陣取り彼らを目下観察中である。
「ねぇ あの金髪のボウヤ、素敵だと思わない?」
「……………」
「あら、あの鼻の長い子も おヒゲなんか生やしちゃって…んふふ、可ぁ愛い」
「…………」
「まぁ!船長さんも良いわね。まだ若くて幼さが残ってるけど、見てよあの匂い立つ香り。
あと数年もすれば良い男になるわぁ。きっと」
「……おい」
「それにあのペットちゃんだって、とってもキュートね。
ふかふかで抱き心地もよさそうじゃない?んふふふふ」
「………………」
(また、悪いクセが出やがった)
上階からテラス越しに一味を見つめるミルエの口角がフッと上がる。
目は細められ彼らに見惚れているかのようにうっとりとしているが、実際は獲物を捕食したくてたまらない といったウズウズとした心境に違いない。
「んふふ、みんな美〜味しそう。
あの船長さんったら、とっても良い審美眼を持ってるじゃない」
「……まぁ、そこは同意だな」
ミルエの言葉にそりゃそうだと思う。今現在"麦わら帽子"は軒下で間抜けな面をして呑気に食い物を頬張っているが、あのロロノアを見つけ、そして見定め己のものにした男だ。人を見極める目を持っていておそらく当然だろう。
それよりも問題はミルエだ。いま彼らに襲いかかられてはたまらない。さて、どうやって止めようか…。
「そう言えば、リリーが同じこと言ってたらしいな」
「?」
「"美味しそう"」
「…なによそれ」
「魚人島のチャリティーで、島民のガキから貰った麦わら帽子を見てそう言ったらしい」
「…っ」
ミルエの表情が途端に強張る。
……どうやら注意を逸らせることには成功できたようだ。
さも、面白くないと言わんばかりに苦虫を噛み潰したような顔をして、こちらを見遣っている。
—パサリ
「先月のだけどな。ソレ、見てみろ。」
「………………」
そう言って苦笑してやり、テーブルの上に雑誌をパサリと放り投げた。
ミルエは ふん、と言いたげに口元をふくらませながらも雑誌に目をやると、表紙を見、そしておそらくタイトルを見つけたのだろう。みるみるうちに怒りに震え始めた。
「……なんですって?」
"お騒がせリリーがまたやった!問題発言!今度は麦わら帽子が美味しそう!?
思ったとおり、彼女の興味をひくのには十分過ぎるタイトルだったらしい。
たまにはゴシップ誌も役に立つじゃねぇか…と、心の片隅で思う。
「………………」
"半月前、前恋人舞台俳優メイヤーに手痛い別れを告げられたDJリリー。しかし彼女にまた春が訪れたようだ。島民の子供から受け取った麦わら帽をそっと手に取り………(以下省略)。
目元の隠された仮面の下から垣間見えるうっとりと潤んだ瞳。はにかみ恥じらうようにそっと呟くその姿…。艶やかな淡いピンク色の唇からは、『美味しそう』という甘いささやき。そうして彼女はほんのりを頬を紅く染めた。これはまるで逢瀬をとげる事も出来ず、誰かを想い慕い恋しがっているような……ああ夢叶うならば筆者もその甘美な眼差しに見つめられたい。そしてこの天女は果たして誰を想っているのだろうか…願わくば彼女に祝福のあらんことを切に願うばかりである…。著マイノール 写真提供アブサ"。
読み終えたのだろう…ミルエの手が震え、ぐしゃりと持っていた雑誌を握りつぶした。
こちらに向けられた目は射殺すように殺気に満ちている。
「……気にするな。
たぶんそのマイノールって奴は、相当なリリー派だろう。
完全にイカれてやがる」
「……………」
「そもそも、半仮面で目元隠してるヤツの瞳が見える時点でおかしいだろう?」
「…………」
「俺にはいまいち分からないよ」
「………」
「いい歳した白髪の中年女が、こうも"女優ミルエ"と同じような色恋沙汰の記事になっちまう理由がな」
「……………」
宥めすかすように甘い言葉をささやき、よしよし と頭を撫でてやる。
だが、怒りの頂点に達している そのどキツい眼差しは一向にゆるむ気配がない。
……毎度のことながら、リリーへの対抗心は相当なものだ。
まぁ今は完全に注意を逸らすことができたことに、内心ほっとしているのだが…。
「へぇ〜〜。せっかくメイヤーを横取りして忠告してあげたのに。この私とまだ張り合おうっていうのね……あの女!」
「…ま、目をつけたのはお前の方が遅いがな」
「年増が艶やかですって…っ?」
焚きつけたのは自分だが、これ以上は熱くなりすぎるなよ。
そもそも"興味"だし。ゴシップ誌だし。 って、聞いちゃいない。
同時に、相変わらず扱いやすい女だな。とも感じる。
「いいわ。この世界で"一番"は… "一流"ってものは何か?
見せつけて、完膚なきまでに叩きのめしてあげるだけよ」
「…ま、好きにしろ」
(…チョロい女だ)
そう言い放つミルエの背後からはメラメラと闘志の炎が燃えている。
半分呆れつつ、 分かりやすさ安堵しつつ、 グレパルトは頭の中の計画をまた一つ進めていた。
「「「んめぇぇぇぇ」」」
「へへへ、そうかい。そりゃ嬉しいねぇ」
「おいおっさん、このソースの隠し味はなんだよ?」
「ん〜、そりゃおめぇ……」
向かいの店で舌鼓を打つ"麦わら帽子達"は
まだ、何も知らない。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.16 )
- 日時: 2017/04/10 05:29
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
— トーン トーン カーン
— トーン トーン カーン
だだっ広い海原にそびえ建つ数百人という人間が住めそうな、ひときわ大きな砦。
木と鉄で出来た要塞のようなその場所の一角から…ハンマーで杭を打つ音が木霊する。
「いつまで続くのかな…」
「しっ、黙って身体を動かしてなきゃ…聞こえたらまずい!」
杭を持ちしっかりと支える少女とその杭を木槌で打ち込もうとする少年。
— トーン トーン カーン
— トーン トーン カーン
「お兄ちゃん、見て。もうすぐ満月だよ?」
「ああ」
杭を持ちながら、少女はブルーホールの方を見つめている
「この前の新月…。あのキレイなヒト、現れなかったね…」
「……ヒトじゃなかったんだろうな。…やっぱり」
— トーン トーン カーン
— トーン トーン カーン
「こんなこと…いつ、終わるのかな」
「…………」
波の音に混じり小気味良い木槌の音が木霊する。
— トーン トーン カーン
— トーン トーン カーン
「だれでもいい。助けて…くれないかな?」
「…………」
— トーン トーン カーン
— トーン トーン カーン
木槌の音にすすり泣く声がかき消される。
手はしっかりと杭を持ちながらも、目を赤らめ涙をこぼす少女。
少年はただ黙って槌を振り上げ打ち込み続ける…。
ブルーホールの水面と対比し、夜空に浮かぶ半月は大きく…ただ静かにこの要塞を照らしている。
少女の言うように満月はあと1週間ほどでやってくるだろう。
穏やかな波音と共に、夜はゆっくりと更けていく。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.17 )
- 日時: 2017/04/10 05:30
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
「何を…した…?」
「…………」
—カラン カラン…!
一瞬の気のゆるみが命取り とはよく言ったものだと思う。
アズリアが苦笑いをした直後、野郎は地面に丸い玉を叩きつけた。
そうしてとつぜん煙幕のような煙があたりを包み込んだかと思えば…このザマだ。
「う……っ」
—ドサァ…
(くそ…っ、オレはバカか!何も進歩できてねぇじゃねぇか…)
とっさに口元を手で覆ったが、もはや時すでに遅し。
微量とはいえ煙を吸い込んでしまった。
吸い込んだ瞬間身体は言うことを聞かなくなり、
ポンド砲を撃ち煙を払うヒマもなく、
地面へと突っ伏した。
正直、自分の情けなさに腹が立つくらいだ…。
「く…ぁ…」
(しびれ薬…だけじゃねぇ…な…)
だんだんと意識が薄れ、遠のいていく…。
煙が立ち込める直前、一瞬だがアズリアがマスクをする姿が見えた。
せめてあのマスクを斬ることが出来ればとも思うが…もう身体は動いてくれそうにない。
くいなの刀に…手が届かない。
「……甘いなぁ。お前さん」
煙の向こうからアズリアの声がする。
「お…ぇ…だ」
(お前、何者だ…?)
同時にゾクリとする気配も感じ取る…。
あの野郎の"気"が…"気質が変わった"とでも表現すればいいのだろうか…
嫌な笑い方だと感じたのはそのせいだったのか、いや…引っかか……る…。
「ハハハハハ、まだ意識があるとはさすがだな。
だがもう…そろそろ落ちる頃合いだ」
「…く………」
もはや悪態すら言葉にならない…
マスクの奥でニヤリとゆがんだ笑顔が見えた気がした…。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.18 )
- 日時: 2017/04/10 05:30
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
「「じゃーんけーん」」
「ぐー!」
「パー!」
—ゴン! ガン!
「痛って〜!!」
「ひどい…」
「あほ共、何をどっちが行くか決めようとしてんだ!」
—そんな事態じゃないだろうが!! アレ、見てみろ!アレ!!
脳天気にじゃんけんを行うアホ二人に鉄槌を下し、蒼髪の男—エインは額に筋を浮かべながら一つの方角を指さす。
ソコはもくもくと煙が巻き起こっていて屋根の上からでも何かよくない状況であることは読み取れる。
「だ〜から、分かってるからこそのじゃんけんだっつうの!」
「うん。そーいうこと」
「は?」
「…兄ぃ、肝心な時に頭回らないんだね…」
「そうだそうだ!いつも冷静なふりしてお高くとまってるくせによ〜」
— イラぁ… ガン! ゴン!
「痛ってぇぇぇ!」
「最低だ!大嫌っい!」
「うるせえ!肝心な時に使えなくて悪かったな、チクショウ!
いいから…俺にも分かるように説明しろ!」
新たにできたタンコブをさすりながら文句をいう黄緑髪のペネロとピンク髪の少年ルールー。
そんな二人に一瞥をくれ、エインは腰に手を当て続きを促すため二人の前に立ちはだかった。
「はぁ…では、問題です。この島の名前は?」
「マラン島」
「正解。 んじゃあ、他の島との違いは?」
「そんなの当然住み分けの掟だろ! ……って、ん?住み…分け?」
「うん、そういう事だ」
「ご名答」
住み分けの掟と自ら口にしたエインは途端にきょとんとした表情になる。
そんな彼に対して してやったり と笑みを強めるペネロとルールー。二人は顔を見合わせて言葉を続けた。
「とはいえもともと気性の荒い海賊共だ」
「そうそう、だからマランとベルザ島では…喧嘩はまだ許されてるけど、」
「「この諸島での殺しはご法度」」
「っだったら、」
「それを…」
「利用する」
「そーいうことだ」
「大正解」
— おれ達さ、あんな怪物並みに強くはないけど…
— こーいうやり方はさ、誰かさんのそばで…
散々見てきたんじゃないの?
ペネロとルールーの二人は同時にニタリと笑う。
エインは、してやられたと言いたげに頭をぽりぽりと掻きながらため息をついた。
「じゃ、負けちゃったわけだし…おれが回収かぁ。ああ、デンジャラス」
「安心しろ。俺が大声で騒ぎ立ててやるよ」
「…はぁ、先生がもし見てたら…"急ごしらえの下策"って言われそうだな」
「もともとの作戦だっておんなじこと言われそうだけど」
「くっそ!あれは上策だ!どう見たってハイリスクハイリターンだったろ」
「おいおい、時間無ぇぞ〜。はやくしないとロロノア連れてかれちまいそうだ」
軽口を叩きながらも三人はそれぞれ準備に取り掛かる。
ペネロはよっこらしょと言い、準備運動を終えると屋根からぴょーんと飛び降りた。
「あ、待ってよペネ兄〜」
「おい、お前ら煙に気を付けろよ。あれは多分毒粉かなにかが混ざってるはずだ!」
「へいへ〜い」
エインは叫びながらルールーに特製バズーカを二つ投げつける。
ルールーはそれをしっかりとキャッチすると、ペネロのあとを追いかけていった。
「ま、ロロノアはこれでなんとかなるだろうけど…」
— あんな鉄槌振り回すようなヤツ、この辺に居たっけ…?
青いウェーブのかかった癖毛をぐしゃぐしゃと掻きながら、エインはうーんと呻った。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.19 )
- 日時: 2017/04/10 05:31
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
濛々と湯気のような白い煙が立ち込める中、うつぶせに倒れ完全に気を失っている緑髪の剣士。
「……参ったもんだ」
瞼は閉じられ、思ったよりも長い睫毛が存在感を増している…
近づけばより一層はっきりと見える薄い唇に鼻筋の通った横顔。
「確信はなかったんだがな…」
また一歩近付き、くしゃくしゃと髪を触ってみる。
芝生色のその髪は、予想に反して、柔らかい。
(そっくりだ…)
どこか少し泥臭くも…凛とした立ち振る舞い。
歯に衣着せぬ物の言い様。
興奮に影響され開かれた瞳孔、そして自信に満ちた表情。
「そうか…男か…」
傷のある隻眼の剣士…。
魔獣と謳われるほどに鋭い殺気。
かと思えば、眠っている表情はこんなにも穏やかで…
年寄りとも言える自分から見れば、まだまだ幼さが残っているようにも見えてくる。
「さて…どうしたもんか」
やっと見つけた。
「オレは今度こそ、後悔したくないんだよ…」
……………。
この獣が、欲しい。
果たしてグレパルトの奴はどこまで辿り着けているのか…。
—どぉぉぉん!
「ん?」
「ひ、ひ人殺しだああああ!」
アズリアが眠る剣士の傍らにしゃがみ込み、その姿を見つめ歪んだ笑顔を浮かべ思考にふけっていたその時…
突風とともに耳をつんざくほどの大きな声がつきぬけてきた。
—どぉん どぉぉぉん!
「う、うわぁぁぁぁぁあああ!火事にもなっちまってるぞぉぉお!おーい誰か来てくれぇぇえ!」
立て続けに、二発バズーカ砲も飛んできた。
弾は壁に当たりガラガラと音をたてて両脇が崩れていく。
丁度キッチンがあった場所にでも当たったのだろう。崩れた片方の家からメラメラと炎が燃え、焦げ臭いにおいも漂ってくる。
わらわらと人の集まってくる気配もする…
「いまだ!」
「おう!」
—ビュン!
「?」
今度は真横をピンクの何かが通り過ぎたように見えた。
「おいおい…。こりゃあなんとも」
「兄ぃ!おっけーだ!」
「よっし!んじゃくらえ、このヤロウ!」
—モクモクモクモク…
とどめとばかりに投げ込まれた煙玉が弾け、再びあたりを白いもやが包み込む。
やれやれとため息をつきながら、剣士が転がっていた足元をみやれば案の定…その姿はどこにもない。
「はぁ、あの二匹。素早さだけは一級品だわな」
今ごろ…歯を食いしばって猛ダッシュを決め込んでいるであろう小僧達の姿が目に浮かぶ。
気配も分かるし、本気を出せば追い付くのも容易いが、正直面倒くさい。
(まぁ、獲物は逃げんだろうさ…)
目を細めて天をあおぐ。
何ごとかと野次馬が増えてきたのだろう。大通りの様子もますます騒がしくなってきた。
煙幕でこの路地の様子は全く見えていないだろうが、それも時間の問題だ。
「計画を何だと思ってるんだ?」
「お、グレパルトか。
いや〜、あの小僧共すばしっこくってな。まいったまいった」
「………。
ま、最初から貴様に期待はしていなかったがな。
だが偶然とは言えロロノアを狙う連中が他にも居る事が判明した。あんたにしては上出来だ」
「ほー、そりゃ褒め言葉か。嬉しいねぇ」
予想通り背後から漆黒の男がスッと現れた。
おそらくこの男にしては珍しく走りとおしでたった今到着しただろうに、息ひとつ乱した様子を見せないとはなかなかやるものだ。
相変わらず、なに一つ腹を悟らせないようにしている。……それすらも、コチラには見え見えなのだが。
「ははは、どっちにしろオレには怪力しかない。逃がした事は悪かった。すまんすまん」
「……はぁ。」
グレパルトは実のところとても扱いやすい。
こうして粗野な振る舞いを見せ、知恵のない者のように振舞っていれば、この男は安心する。
内心見下げているだろうにその素振りすら見せないとは…逆に見直してしまう程に、だ。
「ま、そうカリカリしなさんな。獲物は逃げんと思うぞ。オレは」
— 大将だって分かってくださるはずさ。 ハハハハハハ!
「…だろうな。我らがボスはお前に甘すぎる…」
背を向け大声で笑うアズリアの背後で、
グレパルトはニヤリと口元を吊り上げた。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.20 )
- 日時: 2017/04/10 05:32
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
「おいおい、さすがにマズくねぇか?」
「んーーーー」
「いや、だってもうすぐ一週間経っちまうんだぞ!?」
「んーーー」
気の抜けた返事が木霊する。
「何だよルフィ!その気の抜けた返事はよぉ!」
「んーー。はぁ、冒険してぇ…」
— ルフィーーーー!
— ぐへっ!
ウソップのツッコミの効いたチョップが炸裂する。
「たしかに、迷子にしたって長すぎるわね…」
「だよな!だよな!こんな島で見つからないなんておかしいだろ!?
もう絶対ぇこの諸島のどっか別の島に行っちまったとしか思えねぇよ!」
「うっかり釣舟間違えて別の島…ありえる。頭が痛くなってきた」
「まさか…いや、でもアイツだな」
船番を任された四人と、海図が描きたいと言って残った航海士が一人。
「よし、決めた!ゾロを探すぞー!オレは!」
「ウソつけ!お前は冒険したいだけだろうがー!!」
「はぁ、さすがにウチの船長も限界か…」
「むしろ一週間持ったのが奇跡だわ…」
ありがと、サンジくん。
いつものようにティーカップを受け取りながらナミは呆れたようにルフィを見つめている。
芝生の上ではトンカンとハンマーを使って何かを作っているフランキーと息巻く船長に見事なツッコミを決めているウソップの姿。
二人はギャーギャーと何か言い合っているようだが、ナミはあえて聞こうとは思わず視線を空へと移した。
「アホか…」
「だってぼぼぼ亡霊だぞ?」
「なんだよー!あの飯屋のおっさんだって言ってたじゃねぇか!」
— ゾロなら大丈夫だ!だからオレは行きてぇ!冒険してぇ!
手すりの上に立ちフンと鼻息を鳴らす船長。
すかさず呆れたようにサンジは返事を返すが、逆にウソップはその姿にのまれたかのようにゴクリと生唾を飲み込んていた。
もちろん……オバケ怖い、幽霊コワイという趣旨を伝える事は忘れなかったが。
「おいルフィ、サブマージ3号のメンテナンスなら丁度今終わったところだ。行くんなら使ったらどうだ?」
「本当か!?フランキー」
「アーウ!俺さまにかかればちょいちょいよ!」
「フ、フランキ〜〜〜!」
「ま、あきらめろ…ウソップ」
話の流れを聞いていたのだろう。
スーパーなポーズを決め込み助言をするフランキーにルフィはキラキラと目を輝かせて喜んでいる。
その後ろではガタガタと震えるウソップにポンと肩をおくサンジの姿…。
「おいナミ!行くって決めたからなオレは!」
船長命令だ!
ルフィは話はまとまったと言う様子でにナミへと顔を向けた。
あまりこれまでの内容を聞いていなかったナミは ん?と首をかしげながらも彼の顔を見つめ、
やがて全てを理解したのか…ため息をつき諦めたように声を出した。
「分かったわよ、船長。 でもね、ロビンたちがまだ島にいるんだからサニー号をベルザ島に移すことはできないわよ?」
ちょっと遠いけど、行くんなら簡単な指示出すからサンジくんとウソップ連れて行きなさい。
そう言うと彼女はニコリと笑って、飲んでいたティーカップをソーサーに戻した。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.21 )
- 日時: 2017/04/10 05:32
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
「チョッパー、匂いはどう?」
「駄目だ…あの後すぐ雨が降ったせいで、何にも分からねぇ」
鉄の匂いなんてそこら辺全部から匂ってくるし……オレ、だめなトナカイだ…。
そう言ってしゅんとするチョッパー。
確かにこの辺りは鍛冶屋や武器屋だらけで、鉄という鉄が日々量産されている。
分からないのも無理はない。
励ます意味も込めてロビンはチョッパーに飴玉を渡しつつ、じっくりと周囲を見回した。
(妙ね…。あの日あった喧嘩や騒動は一通り聞きまわってみたけれど、誰もゾロらしい人物が戦っていたと証言していない。
それに最後の姿はそこの酒屋でお酒を買ったという証言のみ…。姿を消して一週間ともなれば…)
「ロビン?」
「チョッパー、そこの本屋さんに少し寄ってもいいかしら?」
「え?、うん。分かった」
久々に過去の勘が自分に何かを訴えかけてきている…。
こういう時、自分の行動は決まっている。
「ちょうど、今日が発売日だったわね…」
そう言ってロビンは雑誌コーナーから何かを探し始めた。
「あったわ」
「え!? アレ!? どういうこと!?」
「まさかこんなに簡単に見つかるとは思ってなかったけれど…」
ロビンが手にした一冊の雑誌、もとい…ゴシップ誌"ピンク・クー"。
店に入ってからしばらく、意図が分からず彼女の様子を見ていたチョッパーだったが…
彼女が手に取った雑誌の表紙、複数ある見出し内の一つを見つけ思わず声を上げた。
"お騒がせリリー熱愛発覚!? お目当てはあの海賊狩りだった!?"
その記事は、まだ年若いトナカイが腰を抜かすのには…十分すぎる内容だった。
- Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.22 )
- 日時: 2017/04/10 05:33
- 名前: pp (ID: n/BgqmGu)
海風が柔らかく身体を包み込む…
空はカラリと晴れていて相変わらず気持ちがいい。
「ん〜んんん〜ん〜」
海沿いの倉庫周辺を歩きながら、ブルックは鼻歌を歌いつつしっかりと……そう、至極・ま・じ・め・にゾロ捜索を行っていた。
「一体どこに行ってしまったんでしょうか…?」
誰に聞かれるでもない言葉をポツリとつぶやき海を眺める…
彼が"無断"で船長の元から居なくなるなんてことは、まず"あり得ない"。
彼は船長の右腕であり相棒。
もちろん自分にとっても掛け替えのない二度目の仲間だが、あの二人にはそれ以上の言葉にできない絆がある…そしてそこへは自分たちも入っていけない。…時折そういう風に思えるのだ。
「まぁ、ワタシにもワタシにしかできない役割があるんですけどね…」
料理長は彼の左腕であり、狙撃手は彼の背中を支える。
考古学者と航海士は彼の頭脳で…そして船医は彼の心を支える。
船大工は進むべき道を支える足…と言ったところだろうか。
「あ…となるとワタシ…何だろう?…内臓でしょうか…?」
内臓無いんですけど…ヨホホホホホ〜!!! ゲフッげぇふ!!
持参していた水筒特製アフタヌーンティーを飲みこぼし、…むせた。
「なな、ななななな!?」
むせた原因は決して自分のせいじゃない。
そう、目の前に予想もしなかったものが現れたせいだ。 絶対に。
「ちょ、ちょっとアナタ! 大丈夫ですか!?」
い、医者ぁぁぁああ〜!!
この真夏の気候の中で、全身フードに身を包んだいかにも怪しい男が桟橋の小舟からぬっっと姿を現したかと思えば、
彼は陸地に上がる前にうめき声をあげドサリと倒れた。
慌てて駆け寄ってみれば、骨の手にべったりとこびり付いた血…。
とんでもない重症患者だ…。
(これはいけない。チョッパーさんに診てもらわなくては…)
「あ、アナタ聞こえてますか? 今、医者を呼んできますから。ここでもう少しだけ待っててくださいね?」
「うぅぅ…!」
骨の腕をがっしりと掴まれる。
フードの奥から何か言いたげな瞳がこちらをジロリと睨んでいるが、このボロボロの身体では呻き声にしかならないのだろう…。
だが意識はまだはっきりとあるようだ。
「大丈夫です!ここはお尋ね者の集う島。事情は分かりませんが…、アナタが危惧するような事は起こらないかと」
ワタシを信じてください!
空っぽの…目玉のない目を相手に向けキッと眉あたりを吊り上げ視線を厳しくし、誠意を伝える。
しっかりと伝わったのかどうか定かではないが、男はフッと笑うと目を閉じて気を失っていた…。
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