二次創作小説(紙ほか)

Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.7 )
日時: 2017/04/10 05:23
名前: PP (ID: n/BgqmGu)

「さてと、私たちはどうしようかしら」
——— やっぱりまずはショッピングよね!

サンジたちの去った方向を少しのあいだ見つめた後、ナミはロビンへと顔を向ける。
そして上陸するならまずは服、買い物だろうとワクワクした表情で言葉をつづけた。
その表情はやはり年相応の乙女そのもので、ロビンにはそんな姿が微笑ましく思えた。

「ふふ、そうね。一緒に行きましょう。
それからお買い物のあと、この島の事も少し調べたいのだけれど、つきあってくれるかしら?」
「ええ、いいわよ。
私もこの諸島の気候と地形について、少し気になってるのよね〜」

—— あら、奇遇ね。
—— ふふふ、そう?

お互い、この諸島について共通した疑問を持った二人は顔を見合わせてクスクスと笑いあう。



「アゥ!お前ぇら。悪いがオレも上陸するぜ。
そろそろサニー号をメンテナンスする部品がなくなっちまいそうなんでな」
「おれは散歩に行きてぇ…あと酒」

「おやおや、そういうことでしたらワタシは船番をしましょう。
丁度アフタヌーンティーを楽しみたいと思っていたところですし。ヨホホホホホ」

どうやら話がまとまったようである。
ナミは、分かったわと一言いうと、男どもにそれぞれお小遣い入りの麻袋を投げて渡した。

……船の修繕代も含んでいるフランキーにはちょっと多めの金貨を入れて。



「おい、ナミ。これだけか?」
「足りない分は自分でなんとかしなさい。
あんたそれなりに貯金はしてるでしょ」

—— ルフィじゃあるまいし。
   (借金返済用の)積み立てがあるでしょ?

「……………魔女め」
「あきらめろ。相手がわるすぎる」

中身を見て足りないと言わんばかりに不満を述べたゾロ。
それをピシャリと叩き返すナミ。

ブルックはそんなやりとりを横で見やり、フランキーはさすがだと言いつつ腕を組む。
ロビンはそんな仲間たちの様子をにこやかな表情で見守っている

「さて、と…。
じゃ、ブルックあとはよろしくね」
「何か美味しい物でも買ってくるわ」
「ええ。行ってらっしゃいませ。サニー号はしっかりお守りしますよ」

「余計な世話かもしれねぇが、おめぇ…道に迷うんじゃねぇぞ」
「…ここは島だ。わざわざ海に出るまねなんざしねぇよ」

四人はそれぞれ船を降り、二人と一人ずつに別れて散っていった。
そんな様子を眺めながらブルックはいつものようにバイオリンを取り出し、陽気なメロディを奏ではじめた。


「いやー、太陽がまぶすぃーですねぇ。びゅーてぃふる!」


まるで我らが船長の生き様を表すかのように、死ぬか生きるか。

こんな穏やかな日は久しぶりだ。

相変わらず青空のもとでカモメがクークーと鳴きながら飛んでいる。
そして湿り気も少なく吹きつけてくる海風が、これまた心地よい。


そんなひと時を楽しみ、慈しむかのように、ブルックはバイオリンを弾き続けた。


Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.8 )
日時: 2017/04/10 05:24
名前: pp (ID: n/BgqmGu)

「ぅ……ぁっ…ぃ…」

うなされているのか荒い呼吸があたりを包む。
節々が痛み燃えるように手足の付け根が熱いっ。



—— なぁ、最後の頼みだ。約束してくれないか?



「…あ…っ……い」

—— 君はオレのかわりに…どう…か…




「は…ぁ…はぁ……ぅあ…」
………足が…腕が…、……熱…い…痛い…。




—— お嬢様っ、…ここはわたくしめにまかせて、どうかっ!

「行く…な…」




— へへっ、…あんたと話すの……嫌いじゃなか…った。

「っ…おま…え……ま…で…」





—— ほぉ、これが?
—— はい。間違いございません。


「………くっ…!」

これは……!





—— ふん、…実に煩わしい。見ておるだけで穢れるわ。
—— …………。



走馬燈 と言うのだろう。荒い呼吸を繰り返し、息をするのも苦しい暗闇のなかで嫌な記憶が現れては消えていく…



「う…ぁ…」

………そうだ…こなたなど……所詮……。





「……ぁ…ぁ…」

—— だが、その瞳は私のものだ。 さあ、もっと近くに…!
—— おやめください!ベルナティオ様!




「…ぁぁぁ…ぁぁあああ…ああ!」

………そう…結局は、こなたなど…。




「ぅぁ………はぁ…ぁ…」




—— あ?…けがれてる?
   ……なんだそりゃ?


「………ぅ…?」


——  おれはおれだ。




「これ………は…」

—— おれは、おれのやりたいようにやる。




「こど…も……こ…え…」

懐かしい声がする。やわらかな…それでいて前をみつめ続ける真っすぐな瞳。


「…あ……あ…」

その細い腕をつかもうと必死に手を伸ばす。
けれど届きそうで…届かない。




「ま……て、いく…な」

—— すきに生きてやる。それだけだ。


……………この声は…。



「…ぞ…ろ……」

子供がふり返り、こちらを見つめた。
何人にも穢されない揺るぎない瞳。すべてをありのままに見つめているその眼…



気高き獣の瞳。



「……あ…い……」

—— お前もそうだろ?

  

目があった瞬間、暖かい何かに包まれていくような気がした。  



 

Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.9 )
日時: 2016/11/01 02:23
名前: PP (ID: n/BgqmGu)

「ブルーホール?」
「ああ、この諸島のガイドブックに掲載されてたんだけどよ…」
—— ほら、これだよコレ。

そう言ってウソップは、がまぐちカバンからガイドブックを取り出し、店主に記載されているページを開いてみせた。

腹が減った!と喚くルフィを引きつれて、この店なら手ごろな値段で美味そうだと
なんとなく入った大衆食堂での出来事。
情報を得るなら酒場やレストラン、それにカフェ。

それは店主と会話を楽しんでいた矢先のことだった。


「まぁ…たしかに書かれてるな…。
 しかしなぁ…あんたら、コレはいつのガイドブックだい?」
「あ〜、ちょっと知り合いからもらった本だからよ。
何年前のかはおれも知らないんだ」

「「んぐんぐ!」」

これはナミが船の図書室に保管していたガイドブックであり、
彼女自身もまた人からもらった物だと言っていた。
だから俺達にも正確なことは分からない。

……という細かい説明を省いてウソップは簡潔に店主の質問へ答えた。

その横で麺を口いっぱいに頬張りながらチョッパーとルフィが相槌を打つ。


「何だってガイドブックの出版年がポイントなんだ…?
ブルーホール自体はそう珍しいもんじゃないだろ?」
「いや…まぁ、そうなんだがな」

困ったなぁと言いたげな様子で、店主の表情が曇った。
…だが今はそんなことで聞くのを止める気はさらさらない。

うーん。とさんざん唸りつづけた後、

人の良い店主は ここだけの話にしておくれよ?と念を押し、苦笑した。


「あんたの言うようにブルーホールなんて世界中で確認されている。
だが、少なくとも近年のガイドブックには
ここのブルーホールについては書かれていないのさ」
「?、どういうことだ?」
「まぁまぁ、そう先を急ぎなさんな。
書かれなくなった理由は大きく分けて二つあるんだよ」
「……………」

「ちょうど五年前くらいだったかねぇ…」

—— ひとつは、住み分けの掟を破り…
質の悪い海賊がブルーホール周辺をナワバリにし始めたこと。

—— そしてもうひとつには、


「でるんだよ…新月の夜…ちょうどブルーホールの真ん中あたりにな」
「出る?」
「……ああ、亡霊がね」
「「ぼ、ぼぼ…ぼうれいっ!?」」

—— あのブルーホールは亡者の住処なのさ。

   おそらく亡者たちは"何か"をずっと守っている。 

   そしてブルーホールの真ん中へ近付けば、
   たとえ昼日中であろうと彼らの嘆く声がう〜っと聞こえてくるのさ。


そう言って店主はニタリと笑った。



 

Re: ONE PIECE マリモ剣士の妹君 ( No.10 )
日時: 2017/04/10 05:25
名前: PP (ID: n/BgqmGu)

  


「亡霊ぃ…?」

同じ頃、まったく違う場所で訝しげな顔をして声を上げる者がいた。


「そうだよ。海パン兄さん。
悪いことは言わないから、あのブルーホールには近づかない方がいい」

—— なにより、あの近くをナワバリにしている海賊に目をつけられると厄介だ。


サングラスをクイッっとあげて、こちらを見てくる変態…
…もといロボ男に金物屋の主人は少々どぎまぎしながらも答えた。 



「気づかいありがとよ。だがこちとら亡霊だの幽霊だの…んなものは問題ねえんだ。
それより気になるのはその海賊ってヤツだなぁ」

— そりゃ、その姿をみたら亡霊だって裸足で逃げ出したくなるんじゃないだろうか…?


奇妙奇天烈…いや、"筋金入りの変態"なその姿に店の主人は少々失礼なことを考える。



「あ、あぁ。なら兄さん、この諸島の"領主さま"のことは知ってるかい?」
「いや、知らねぇ」
「…あまり大きな声じゃ言えないが、この諸島がそれなりに平和でいられるのは領主さまのおかげなのさ」
「ほぅ」
「もともとこの諸島はある一族の領地として政府に管理されていてね…。
そんでその領主の一族は代々この諸島については無頓着な性質の持ち主なのか…気まぐれなのかは知らないが、管理については政府へ放棄・一任しているんだ」
「? 
 おいおい、そいつはおかしな話じゃねぇのか?
 最初に一般向けの島が見えた時もそうだったが、海軍やら政府の姿なんてどこにも見えなかったぞ」


— その領主が政府へ管理を一任しているっていうんなら、ヤツらの姿が見えないなんて辻褄が合わないんじゃねぇのか?

そう言いつつフランキーは不思議そうに首をかしげた。
その様子に店主は困ったように苦笑する。


「だからあまり大きな声じゃ言えない話なんだがね。まぁ、要するにこの諸島は"領主さまのご威光"のおかげで平和なのさ」
「?」
「天竜人なんだよ。この諸島の領主さまってのは…」
「ハァ!?」
「そりゃこの諸島の人間だってあいつらが好きなわけじゃないさ。
だが…皮肉な話なんだけどな、表向き世界貴族が統治する場所を荒らそうなんてヤツはそうそう居ないだろ?」
「まぁ、確かに」

なんとも言えないよなぁと言いたげな様子で眉をつりさげながら、店主は口元に笑みを浮かべた。
その表情は島民たちの心情をあらわしているかのようで、フランキーはただ黙ってうなずくしか出来ないでいた。



「でまぁ…政府や軍の人間が見当たらないのも領主さまのせいなんだが、兄さんが知りたいのは海賊の方だったね?」
「ああ」

「あんまり大きな声じゃ言えないんだが…」

そう言って店主は小声で耳打したいと言わんばかりにちょいちょいと手をまねく。
意を理解したフランキーは彼の動作に合わせるかのように耳を近づけた。



のちに、 この情報が役に立つことになるなど…フランキーは露ほども思っていなかった。