二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方 夢想朱 ( No.1 )
日時: 2016/08/05 17:00
名前: 瑠愛 (ID: qUUtOunA)


序章


博麗の巫女。
それは、元々は外の世界から連れてこられた普通の人間だ。
博麗の巫女にはその存在自体に意味があり、無差別にも本人の意思は関係なく適正な者はこの「幻想郷」に連れてこられ、そして幻想郷をまるで何かから守るような結界の中心に立たせられる。
そして巫女として一生を生きるのだ。
だが、その生活が苦しい訳ではない。
そもそも存在自体に意味があるのだから、博麗の巫女がそこにいる、ということだけが概念としてあればいいのだ。
幻想郷に張られた結界、それは「博麗大結界」。
誰が最初に張ったかも、それこそ分からない結界だが、その結界は幻想郷と「外の世界」の行き来を途絶えることのできる力があり、例え力があったとしても、そこを通ることは不可能に近いだろう。
だが、代々としてその結界を守ってきた博麗の巫女が息絶えたとき、その瞬間に結界は核を失いコントロールが聞かなくなり、崩れ落ちる。
つまりその瞬間に幻想郷と外の世界との空間ができるのだ。
そこへ迷い込んできた適正な者が次の博麗の巫女となる。
何故、博麗の巫女は外の世界から連れてきたものでなければならないのか。
その実体は明らかにはなっていないが、一つだけ確かなことがあるとすれば、それは博麗の巫女になった以上、その本質からは逃げられないということ。

そう、私はその一生を巫女として捧げる、無情の博麗の巫女だ。

「貴女は、どちらを選ぶ?」

その日、私に問いかけてきた美しく、そして恐ろしい妖怪は私に手を差し伸べた。
私は答えた「面倒くさい」と。
美しい妖怪は私の答えに妖艶な笑みを浮かべて、そして私を幻想郷に連れていった。

私は博麗の巫女のなった。

ジリジリと肌を焼くような夏の日射しを受けた日に。
逃れられない、その自堕落な運命に嫌気を覚えながら。
私はこの世界が嫌いだ。
この世界は、私の全てを知っているのだから。
あの日、あの少女に出会ったことも。
少女に抱いたこの心も。隠していたことも。
博麗の巫女の運命を知って、絶望を感じたことも。

ああ。


「貴女に、なりたい」