二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方人妖録【短編集】 ( No.1 )
日時: 2016/08/11 14:08
名前: シュヴァルツ (ID: nXkUt35K)

【博麗 霊夢編】

「うっ......ぁ、げほっげほ.....」

妖怪退治が務め、博麗の巫女こと私____博麗 霊夢は重い病を患っていた。
.....ぽた.. ぽた.....
慌てて口を押さえた手から、赤い液体が滴り落ちる。
ああ.....アイツの言う通り、長くは持たないかもしれない。

「おはよう、霊夢。....ご機嫌如何?」
「ご、機嫌も何も、ないわ、よ.....」

「ご機嫌如何?」なんてふざけた事を言う医者が居た。
まぁ、ソイツは竹林の凄腕医者...永琳だ。
今の私には、永琳ぐらいしか頼れないのだ。別に、友人達に相談をしたって良いけど...。

ったく、朝から気分が悪い。
起床時に綺麗にした円型の机がまた汚れてしまった。
...永琳が帰ったら、綺麗にしないと....。

「......はぁ、白黒の魔法使い達、心配してるわよ?...霊夢は私の親友なんだ、って」
「.......」

永琳の呆れた様な眼差しに‘‘どうでもいい,,と視線で返す。
最期ぐらい、一人で思い出に耽りたいものだ。
.......でも「会えないの」と幾らも断ってきた。そう、寂しくない。
独りで死ぬのが怖いだけ。

「はぁ、仕方ないわね....。貴女、そろそろ天狗にでも話さないと____」
「ええ、そうね。....継ぎ巫女を探さなきゃいけないものね」

コクコク、と頷きながら言う。
博麗の巫女は、皆...幻想郷で大罪を犯して死んだ。
皆、妖怪への情けだと。...ふざけるな、私だって........。

目を瞑り、数々の友人を思い浮かべる。
.......何で、今更悲しんでどうするんだろ。

「まぁ、安静にしなさいな。...明日連れて来るから」
「.............うん」

永琳が静かに立ち上がり、この神社を出ていった。
....静寂が訪れる。

もう、魔理沙は3ヶ月も前から来なくなった。
レミリアも、来なくなった。....アリスも、皆。.....永琳以外、来なくなった。
‘‘案外、寂しいものね,,なんて口に出してみる。
....誰も、反応なんてしてくれないけど。響くのは無情に時を刻む音だけ。

........はぁ、眠たいな。
起こしていた上半身を寝かす。...やはり寝ている体勢が楽だ。
病にかかってから随分と生活リズムが変わった。
寝ては起きて吐いて、寝ては起きて吐いて....の繰り返し。

「今何時なんだろう.....」

小声でさえも響き、脳内へ通達される。
ああ、生きているんだ....。何故か実感出来てしまう。

「もういいや、寝てしまおう.....」

Re: 東方人妖録【短編集】 ( No.2 )
日時: 2016/08/10 21:56
名前: シュヴァルツ (ID: nXkUt35K)

「ぅん.....ふわぁ......」

視界がボヤけて見える。
...どうやら私は長い事寝てた様だ。

「うぅ....あぁ..」

無理矢理重たい体を起こし、頬をつねる。
これは産まれた時からの癖だ。
....うん、ばっちり目が覚めた。

「..........拭くの忘れてたなぁ」

机を見ると、血がこびりかけていた。
ああ、ダメだ。早く拭き取らないと......。
どうせ使い捨てるであろう雑巾を取りに台所へ向かう。

何故か足取りが重く感じる。
...きっと寝起きだから、だろう。病気が進行している、なんて事もあり得るけど...。

「ん.......!?..うぁ、げほっ...」

びちゃり、と汚い音を立てて血液が吐き撒かれる。
...なんて汚い床なの...。
あー、服も汚れちゃったなぁ...、どうしよう。残りはもう着ている服しか無いのに。

「.......いけないな、台所なんて誰も来ないだろうし...。雑巾、取ろう」

床に吐いた血で滑らない様に気を付けながら雑巾に手を伸ばす。
...足の裏は真っ赤に染まった。
レミリアに「私の吐いた血を飲まない?」なんて言ったらどうなるのだろうか。
......いや、怒られるだろうなぁ..。

「けほっ、けほっ...。...咳してるだけなのに...血が出ちゃった.....」

後で手を洗おう、汚いし。...いや、今更汚いなんてへったくれも無いか。
そんな事はまぁいい。
早く、拭かないと.....机に血がこびりついちゃうわ.....。

「........!?どう、して...?」
「ねぇ、霊夢。...貴女死ぬの?」
「.......................え、ぇ...?」

其処には、レミリアが居た。
どうして、レミリアが......?

「何しに来たのよ....?」
「何って、霊夢に会えるのはもう無いって運命が告げたから..」

つまりは、偶然にレミリアと私の行く末が見えたって事か。
.....はぁ、申し訳無いな、ずっと病気の事を隠していたから....。
気のせいだって誤魔化しておくか。

「気のせいか誤視じゃない?」
「私の見える運命は起こり得る事...ふふ、そうかもね」

そうして、友人を騙して追っ払った。

Re: 東方人妖録【短編集】 ( No.3 )
日時: 2016/08/11 13:28
名前: シュヴァルツ (ID: nXkUt35K)

ピピピピピピ.....

「んー......?」

あの後、レミリアが帰った後の事を覚えていない。
あまり関係のない事だったのだろう。

「体の調子はどうですか〜?」
「......?...うへぇ、天狗じゃん」

そういえば、永琳が連れてくるって言ってたな...。
全く、おせっかいだ...。でも、私から文に会いに行ったら紛れもなく道に血がある事だろう。
...うん、それは自信満々に言える気がする。

「.....う、ぇぇえ.......」
「れ、霊夢...さん?」

突然の吐き出された血に文は呆然としている。
そう、そうよ....言いたいことだけ言わないと......。

「......はぁ、はぁ...」
「噂は本当だったんですね。...病気にかかってるんでしょ?」

文の悲しそうな笑顔が心に突き刺さる。
.....私はとてつもない罪悪感に包まれた。まるで闇に飲み込まれた様に。

「...辛いなら言ってくれたら、良かった、のに....」
「ごめん....。大騒ぎになったら困るでしょう?...そうそう、継ぎの人..探しててよ、最高の人」

______霊夢はとても綺麗な笑みを浮かべて、息を引き取った。



*****


霊夢は、若くして無くなった。
それも、重い病気にかかったんだとか、自殺したとか__。
射命丸 文によって真実を語られる事は無く、博麗の巫女の死の真相は迷宮入りとなった。




「なぁ、なんで言ってくれ無かったんだよ.....霊夢」
一人の``親友´´が泣きながら言った。