二次創作小説(紙ほか)

Re: 東方人妖録【短編集】 ( No.6 )
日時: 2016/08/12 10:20
名前: シュヴァルツ (ID: nXkUt35K)

【レミリア・スカーレット編】

「.........はぁ」

公共の場、世に言う公園に私は毎日来る。
.....あ、約束とか、そんなのじゃない。理由はもっと複雑なものだ。
ざっくりと纏めると、『家のお決まり』って奴だ。

...本来なら、私の妹、フランドールも一緒に居る筈なのだがとある事情で‘‘居れない,,。
...ま、お母さん達も精一杯で最終対処を施したのだろう、てかそうだろう。

公園に居るとはいえ、私は同年代の子達とギャーギャー騒ぐつもりなど毛頭もない。
そもそも、今の公園はガラッと空いていて、廃れた公園の様だ。
まぁ、そりゃそうだろう。今から子供達はどこぞやの誰かが作った門限を守る為に帰るのだから。

いつもの様にわざとらしく設置されている時計に目をやる。
というかそれしかやることが無いと言うのは中々に寂しいものだ。
やはり、予想通り5:00と針が示している。

「..........そういや、今日は大物を捕まえないと..」

今日は家で御祈り....基、奇妙過ぎる捧げをするのだ。
その為に生け贄を捕まえろ、って事だ。....全く、それぐらい親がすれば良いのに...。

でも、そういえば........。
「レミリア、今日は特別な生け贄が居るから早く帰ってらっしゃい」
とお母さんに笑顔で言われたな....。

うーん、仕方ないや、帰る事にしよう。
そもそも、私はそのスカーレット家特有の行事など興味無いのだが。
....しかし、将来は奇妙過ぎる行事を仕切ることになるのだ、心が痛い。物凄く心が痛い。

「.......ふわぁ..。急いで帰らないとなぁ...。お父さんに怒られちゃう」

今日も今日とて、今朝に起こしたドジでお父さんに怒られてしまった。

「あーあ...回復スピード高い方なのに....」

今朝、殴られた腕を抱える様にして口に出してみる。
....普通なら殴られただけだったら十秒もしない内に痛みは退く。
でも、近所のおばさん曰く私が回復スピードが早いらしい。
ま、この十秒以内という数字は尋常では無いみたいだ。

「さて、急いで帰ろうかな」


Re: 東方人妖録【短編集】 ( No.7 )
日時: 2016/08/12 10:44
名前: シュヴァルツ (ID: nXkUt35K)

「ただい..........ま?」

こてん、と首を傾げる。
聞き覚えの有るような少女の叫び声が聞こえたからだ。
うーん、気のせいだろう。

「あらレミリア、お帰りなさい。...さぁさぁ、上がるのよ」
「....うん、で...生け贄は?」

相変わらず、この行事が来るとお母さんはテンションが上がる。
一日の疑問をぶつけると、お母さんは悲しそうな表情で‘‘内緒,,と言った。
.....どういう事だろう?..行ってみれば分かるか。

無駄に装飾が飾られ、豪快な造りの明かりが施された廊下を奥まで歩く。
ああ、本当に眩しいな....。明かりぐらい、もう少し少なくたって良いだろう。
他とは違い、鉄製で造られた扉で立ち止まる。

......そこではっきりと聞こえた。..そう___の声が。
「嫌だ、やめて!!痛い!!!痛いの!!」

思わず口を押さえる。
有り得ない、お父さんが......?
いや、まだ、聞き間違え、なんて.....事は?
あるわけ...ない?

ギシギシと嫌な音を立てながら開く扉の先には信じがたい光景があった。

「......ふ、らん....?」

ああ、なんて大人は無情なのだろう。
忌み子だからと、自分の娘を生け贄になんてしなくて良いでしょ.....?
これも大人の事情とか言うものなのだろうか。

フランは聞き難い悲痛な叫び声を上げながら暴れている。
何故、何故止めないの....?.......お母さん。

「..........う、うっうぅ....」
「.................」

ダメだ、頼りにならない。
どうせ脅されて自分の身が大事だからとかそんな理由だろう。
...いや、今はそんな事を考える暇ないな、今はフランを優先しなければ。

大体、可笑しい気がする。
確かにフランは魔力も備えた貴重で忌みわれし吸血鬼だけど....。
ああ、糞....、お父さんも怒り狂い過ぎてとうとう頭がイカれた?

「......ぁ、おねぇ.....さま....たす、け.....」
「おお!!レミリアか!!!見ろ、コレを素敵だと思わないか!?」

何処が素敵なのだろうか、言いたいのはお父さんの頭は素敵なぐらいに狂ってますね、って
言ってやりたいぐらいだ。

そうこう考えてる内にも、フランからはえげつない程の血が出ている。
...いったい、どうすれば良いと言うのだ。
というかそもそもどうしてこの幼い私にお父さんに逆らうというこの無理難題を
神様は吹っ掛けてきたのか。それをまず問い詰めたいぐらいだ。

「でも.....助けないと......」

Re: 東方人妖録【短編集】 ( No.8 )
日時: 2016/08/12 11:43
名前: シュヴァルツ (ID: nXkUt35K)

「どうしたレミリア、コイツに情けでも売るのか?」

お父さんはフランに近付く私を不思議そうに見つめ、すっとんきょうな言葉を吐き出した。
...ああ、何て恐ろしいんだろう。
お父さんはバカだ、今から死ぬことも知らずにぬけぬけと言ってるのだから。

背中側で手を組んでお父さんにバレない様に運命操作を行う。
『今から30秒後に私によってお父さんはショックを受ける』
この運命操作は厄介な事に死の運命を覆す事は出来ない。
ホント、こういう時は厄介だよね....。

「いや、フランに言うべき事があったなぁ、って」

巨大な十字架の柱に巻かれたフランに近付くと、鉄っぽい臭いが辺りにした。
フランを縛る縄も血に染められ、赤くなっている。
......こっそり縄を外してあげよう。

「フラン、助けてあげる」

とにかく安心させないと。
フランの味方は運命と私だけなのだから。

「...........んなっ!?」
「どうしたの、お父さん」

フランを縛るものは手を突き刺している杭だけとなった。
何だか安心した。....これで、フランは少ないが生き残る確率は上がった。
お父さんってば、アホだ。だって手にしか杭を打っていないから。

「............そう、か」

お父さんは急に笑い出した。
なんだろ、気味が悪い。どうせ舐め腐った暴言を吐き散らすに決まってる。
...大人ってのは、大体そうじゃない?

「.........生け贄にする相手が間違ってる」

フランに刺さった杭を抜きながら言う。
何だかんだ言って、逆らうのはこれが初めてだ。
そりゃあそうかもしれない。自分の身内が殺されかけてるのに平然としていたらそれこそ疑う。

「........逃げよ」

お父さんの止める声が聞こえるが、従わない。
絶対ロクじゃない事が起こる、運命がそう告げてるのだ。

「....っていう夢見た」
「おい今までの雰囲気壊すんじゃねぇよ糞が」
「フランってば、怖い.....」