二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.14 )
- 日時: 2017/04/26 21:31
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: ejGyAO8t)
DQ7
【救われなかった勇者のセカイ】
ーーサヨナラ世界、愛していたよ。
*
僕はこの世界が大好きだった。
ーーこの世界のことをもっと知りたくて、冒険に出た筈なのに。どうして世界は僕を嫌い、そして見捨てるのだろうか。
世界に選ばれ旅に出て、魔王を倒し世界を救った。それは他の勇者たちとも変わらないのではないだろうか? どうして僕だけが、最初から自分の意思で旅に出た僕だけが、世界に見捨てられなきゃいけないのだろう。
見上げる空は闇に染まっている。僕は剣をいっそう強く握り締めた。魔王を倒した、その剣を。
ーー昔は引っ込み思案だった僕だけど、世界を旅するうちに少しずつ成長することができた気がした。これも全て冒険に誘ってくれた幼馴染みのおかげだけどーー彼は一人で自分の道に進んだ。僕もいつか、そうなれる日が来るのだろうか。
「……キーファ」
僕はそんな彼の名前を呟いた。意味なんてない。
こんなとき、君ならどうする? すぐ君に頼ってしまう僕を許してくれ。それでも今の僕には君が必要なんだ。また一緒に冒険して、僕の世界を変えてくれ。光輝く世界に戻してくれ。
キーファは昔から好奇心旺盛で。そのせいで人に迷惑をかけることもあったけれど、今の僕にはその心が必要なのかもしれない。何事にも恐れず挑戦する力が。何事も信じ抜く力が。
ーーそんなことを言ったってもう遅い。時は戻せないのだ。そんなの分かっているけれど、この世界にいるだけなんて僕は何の役にも立たない。
魔王を倒して世界を救ったのに。世界は僕を見捨てたから。
僕は強くなりたかった。そう願っていた。
それなのに、それなのにーー。
もうこんな世界、滅んでしまえ。もうどうなろうが僕には関係ない。
愛していたのに。守りたかったのに。世界が僕を裏切るから。
ーー僕はこの世界でひとりぼっちだ。救われなかった、勇者の世界で。