二次創作小説(紙ほか)

Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.21 )
日時: 2017/05/29 16:09
名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: xElOy2eq)

DQ1~11

【 そして伝説へ 】


 ——あなたたちの物語が、この先ずっと、語り継がれていきますように。



           *

「勇者は君だけじゃない」

 いつか彼はそう言った。世界を救いに行くのは自分だけじゃない、仲間がいると。どんなに手強い魔王でも、仲間と共に戦えば必ず世界の平和を取り戻すことが出来ると。

 だから僕はどんなときでも仲間を信じて生きてきた。悪魔の子と呼ばれたって、僕には彼らがいたから乗り越えられた。

「11番目。お前は知っているか?」

 目の前の彼は真っ赤なマントを風になびかせながらそう口を開いた。確か名前は……アレルだ。伝説の、ロトの勇者。闇に包まれたアレフガルドを救い出した。
 彼の問いに、僕は肯定も否定も出来なかった。知っているとは何のことだろう。この世界のこと? それとも自分自身のことか?
 どっちにせよ、僕が知っていることは少なすぎる。いつか誰かが言っていた、見渡す限りの世界があると。それだけ世界は広くても、僕が生きてきた世界は狭いのだ。

「勇者ってさ、勇気ある者の事を言うんだよ」

 刹那、心臓が波打った気がした。勇者と言う言葉を聞いて思わず冷や汗が垂れる。微笑むアレルに視線を移すが、きっと僕の表情は固いままだろう。
 ——勇気ある者を人は勇者と呼ぶ。昔どこかで聞いた気がした。それでもその時の僕は、そんなの当然だと思っていたんだ。勇者なら勇気があって当たり前。みんなの期待に応えて当たり前。世界を救って当たり前。でもそれが違うことは、今の僕なら充分わかる。勇者だって時に目的を見失ったり、希望を無くしたり、期待に応えられないときだってある。世界を救うことを諦めたことなんて何度あるか。
 それでもやっぱり僕はこの世界が大好きで、挫けても救おうと思った。仲間と共に冒険して、世界の平和を取り戻して家路に就く。それが僕の使命だと思っていたからだ。伝説の勇者の生まれ変わりの、僕がすることだと。

「どんな結果になっても誰もお前を責めたりしない。次は一緒に世界を救わないか?」

 勇者アレルのサークレットが光輝いた気がした。戦いの末ボロボロになったであろうその装備たちはどんなときも彼と共にいた。それでも今は輝きを取り戻している。それは、世界が勇者を信じたからか。それとも勇者が世界を信じたからか。

「きっとみんなも待っている」

 ——みんな。それは誰の事を指すのか分からない。だけど、なぜかその彼らと共に世界を救わなければいけない気がした。仲間ではない、別の誰かと。
 勇者アレルの方に一歩踏み出す。こんな僕がまた世界を救えるのだろうか。それでも、救いたい。この世界の平和を取り戻したい。勇者、と呼ばれたい。

「……もちろんだ」

 そんな思いを胸に僕は小さく口を開いた。僕も伝説の勇者と共に世界を救えるのか。そう考えるだけで気持ちが高まる。彼が言っていたみんなとは誰のことだろう。早く彼らに会いたい。

「それじゃあ行こうか」

 勇者アレルがそう言い手を伸ばす。その手を握り、僕は彼の横隣に立ち歩き始める。待っているであろう彼らの元へ。
 世界を救うのだから、きっと彼らも勇者なのだろう。勇気ある者がこの世界にそんなにいたなんて。正直、僕なんかが世界を救っても意味無いんじゃないかと思ってしまう。だけど、きっと僕は世界に選ばれたんだ。勇者として、この世界を救うために。

「ほら、勇者は一人じゃないだろう? 世界はたくさんの勇者を選んだんだ」

 勇者アレルはひとつの物語を思い出すかのように口を開いた。彼の目の前には想像通り、勇者たちが立っている。計8人の勇者たちはこの闇の世界を恐れようともしない。その偉大さに、思わず目を見開いた。

「さぁ世界を救いに行こうか」

 アレルが、僕を含めた9人にそう問い掛ける。勇者たちはそれに答えるように頷いたり微笑んだり。
 ——11番目、お前もこっちへ来いよ。
 ふと、勇者たち中から声が聞こえた。その声を頼りに僕は彼らの横に立った。きっと何度も世界を救ったであろう彼らの隣に立つ権利は僕にあるのだろうか。そんな不安を抱きながら小さく呼吸を繰り返す。

「俺らが世界を変えるんだ」

 ——勇者よ、目覚めなさい。

 どこかで、いや、遠い昔に聞き覚えがある声が脳内に響く。この声はどこで聞いたものだろう。思い出そうとするが、やっぱり思い出すことはできなかった。
 この声の正体は、ここにいる勇者たちなら知っているだろうか。もしかしたら知っているかもしれない。何故なら、この声の主は勇者に関係のある人物だと思うから。
 そんな曖昧な感じだけど、僕は声の主の情報を一切知らない。声を聞いたのは実際今は初めてかもしれない。だけど、きっとどこかで聞いたことがあるはずなんだ。
 何かの物語でも何でもいい。その物語が今も語り継がれているなら、きっと声の主は分かるから。勇者に関係のある彼女の声が。

 ——すべては精霊の導きのままに……。

 再び声が聞こえた。精霊……あぁそうだ思い出した。彼女の名前はルビスだった。きっとどこか、夢の中かどこかで彼女の情報を聞いたのだろう。大地の精霊ルビス様はたくさんの冒険者の旅の支えになったという。今度は僕の番なのか。

 僕の番じゃなくてもいい。きっとルビス様は僕らの事を見守ってくれているから。
 だから僕は彼らと一緒に世界を造っていく。新しい伝説の始まりだ。これから始まる冒険が、この先ずっと残りますように。
 

       ***


 本日5/27でドラゴンクエストは31周年。本当におめでとうございます!

 ドラクエがあったから今の私がいる。今小説を書けるのだって、何もかもドラクエのおかげです、ありがとう。

 最初に1~11と書いていたのにメインはやっぱり311。ただの私の趣味です、ごめんなさい。でも3主は本当に一番の勇者だと思うの。彼が居なかったらロトの伝説は始まらなかったから。
 お祝いだから、ハッピーエンドにしてみました。私が書く主人公ズの小説ってほとんど闇堕ちだから新鮮だったな。いつもは世界を救うとか言って救わなかったからね。でも今回は違う。ルビス様に導かれたんだから救わないといけないよね(※捏造)。
 設定からして似ている311、この二人の絡みが本当に大好き。他にも似ているところがあるのかな。わからない部分は捏造しちゃえ。
 
 ……話がそれましたが、本当にドラクエ31周年おめでとう。素敵な冒険をありがとう。彼らの物語がこの先もずっと続きますように。これからも大好きです。