二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.24 )
- 日時: 2017/07/24 14:44
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: jQF4W0MP)
DQLST
【 名前に込められた意味 】
彼らと冒険した日から、あっという間に一年の月日が流れてしまった。まだ昨日のことのように覚えているあのときのことは、もう戻らないのだろうか。
彼らーー三人の冒険者たちは不思議な声に導かれて、このアレフガルドにやって来たと言っていた。強さを求め旅に出ている剣士テリーは、一歩離れて仲間を見守るーーそんな頼れる存在で、どんなときでも助けてくれた。サントハイムという国の姫君だというアリーナは、その肩書きからは想像できないほどお転婆で、俺たちにもにも負けず劣らずの強さを持っていた。元山賊のヤンガスは、俺のことを『兄貴』と慕ってくれていた。きっと彼の世界にもそう呼ばれる人がいるだろうけど、俺の存在が必要とされていることが、何よりも嬉しかった。人一倍人情に厚い彼には何度助けられたことか。旅芸人のパノンはいつだって明るく、パーティメンバーを盛り上げてくれた。過酷な旅の途中でも俺たちが頑張れてこれたのは、彼のおかげと言って良いほどだ。
そんな個性溢れる三人の仲間を思い出していると、思わず胸が締め付けられていくような感じがした。悲しいような、懐かしいようなそんな感覚。世界に平和が戻った今、もう一度彼らと冒険に出ることは不可能かもしれない。それでも、一度だけで良いから、彼らに会いたかった。ちょうど一年前のあの日、彼らと出会ったルイーダの酒場を訪れる度に俺は思い出してしまう。突然、別の世界から現れた彼らのことを。勇者を、俺を、助けることができたら元世界に戻れると言っていたことを。
ーーそういえば、勇者とは何なのだろうか。勇気ある者、というのはよく耳にするがその『勇気』とは? 自分が産まれたときから世界を救わなければならなかったのか、それとも自ら救いに行ったのか、それによって勇気の意味は違ってくるのではないだろうか。
産まれながら勇者だった俺には勇気はどれくらいあったのだろうか。冒険に出るのが勇気? 魔王に立ち向かうのが勇気? いずれにせよ、本当の正解は分からない。世界を救うか否かの選択肢は誰もが持っていて、自分自身の目の前にあるから。何があったって、決めるのは自分なのだから。
だけど、それがどんな結果になろうと、自分が勇者であることに変わりはない。例え世界が望む結果にならなかったとしても。
とある一説では、勇気は自身の名前にも込められてるという。他人が持っていない、自分だけの、特別なもの。他の誰も持っていない勇気が一人一人に、心のなかに持っているのだ。
「名前……」
俺は意味もなく、名前と言う単語を呟いた。
ーー自分だけの、特別なもの。両親がつけてくれた、大切なもの。ひとつひとつに勇気が込められていて、それはずっと存在する。命を失ったって、語り継がれている名前もある。
ーーテリー、アリーナ、ヤンガス、パノン。不意に、彼らの姿が思い浮かんだ。闇に染まった空の下、彼らは希望を求め戦い続ける。自分の身に何があっても、彼らは世界のために、歩みを止めなかった。それは大きな勇気であり、彼らの名前はきっと、長い間語り継がれていくだろう。
ーーそれじゃあ、俺は?
自分自身に問い掛けてみるが、なかなか答えは出てこなかった。本当にあの勇気は自分のものだったか? 父さんの意思を継いだだけではないのだろうか?
確かに俺は、世界を自分の手で救いたかった。父さんができなかったことを、意思を継いで、成し遂げたかった。だから、勇気は人一倍あるはずだと思っていた。
父さんと母さんは、どんな意味を込めて俺の名前をつけたのだろうか。アリアハンを旅立ったあの日も、母さんは教えてくれなかった。ゾーマ城での決戦の時も、父さんは教えてくれなかった。俺の名前に込められた意味を。
ーーでもそれはもう、誰にも聞くことはできない。俺の名前には、勇気が込められている。ただそれだけだ。本当はもっと、別の意味が込められていると思うけれど、それを確かめることはできないのだ。
父さんの意思を継ぎ、世界の平和を取り戻すことができたのだから、きっと俺にだって勇気はある。テリーたちが元の世界に戻ることができたのも、俺を、勇者を、助けることができたから。俺は勇気ある者ーー勇者に、なることができたから。
名前に込められた意味は分からないけれど、勇気を持っていることには変わりない。きっとこの先だって上手く行く。もしかしたら、もう一度、あの彼らに会うことができるかもしれない。可能性だって0ではない。
テリー、アリーナ、ヤンガス、パノン。そして、俺の名前はーー。
心のなかでもう一度、彼らの名前を呼び叫んだ。
* * *
ドラゴンクエストライブスペクタクルツアー1周年記念SSでした!
もう一年…早いですね…また一緒に冒険したい;;
役者さんじゃなくてそのキャラとしてそこにいる、と言うのが本当に最高で、どのキャラたちも本当に素敵でした。
映像化、再演は無理だと分かっていてもまた観たいから、何度も思っちゃうんですよね…せめてグッズの再版、写真集とかそういうものは出してくれても良いんじゃないですかね公式さん!!
何年でも待つのでまた一緒に冒険できる日を楽しみにしてます…!!