二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.25 )
- 日時: 2017/07/29 19:50
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: VNx.OVCe)
- プロフ: ※死ネタ注意※
DQ 11
11主 × カミュ
【 世界が終わる瞬間に、 】
「カミュ」
最後くらい、わがまま言っても良いよね。
水色の髪が風に揺れて、その度に僕の頬へ雫が伝う。でも、きっと、これは僕のじゃない。どうして彼は泣いているのだろうと思うのと同時に、身体中が激しい痛みに襲われた。
動こうにも体が鉛のように重くて動くことはできない。だけど、不思議と背中から痛みは感じられなかった。僕は倒れているはずなのに、どうして背中は痛くないのだろう。それに、ほんのり暖かい感じもする。
「何だよ」
名前を呼ばれた彼は、そう言って僕の頭を優しく撫でた。暖かみのある大きな腕がとても懐かしく感じる。同時に、背中に当たるのも彼の腕や体だと気づいた。道理で痛みが感じられないわけだ。彼に守られているから。
「痛い」
喉も痛くて、声を出すことさえやっとだった。それでも最後にカミュと話がしたくて僕は精一杯力を振り絞る。カミュはそれを聞くと、背中の下の腕の力を少し強くした。キュッとした感覚がして、カミュに抱き締められているような感じになる。でもカミュの表情はどこか寂しそうだった。違う。こんな顔をさせたかった訳じゃない。涙を流させたかった訳じゃない。僕はただ、最後に君と話したかった。最後のわがままくらい許してよ。
「ごめんな、何もしてやれなくて」
——どうして、カミュが謝っているのだろう。僕には全く理解できなかった。一緒に冒険してきた大切な相棒で、お互いの事は良く分かっているはずだだったのに。カミュは悪くないのに。悪いのは全て僕なのに。君が謝る理由なんてどこにもないのに。
「カミュ、は、悪く、ない」
途切れ途切れに僕は声を発する。喉が焼けるように熱くて痛かった。地面に文字を書こうにも腕も痛くて動かせない。残りわずかな力を振り絞り、僕はカミュの手を強く握った。
だけど力はすぐになくなってしまい、だんだん握る力が弱くなっていくのがわかる。それでもカミュは、何度も僕の手を握ってくれていた。
少しずつ、体全体の力が無くなっていく気がした。不思議と痛みも無くなってくる。視界がボヤけて、カミュの顔も見えなくなっていった。
脳裏にカミュと過ごした日々がよみがえる。二人で笑いあったこと、喧嘩したこと。落ち込んでたときも、カミュはいつでも僕の味方で心から支えてくれた。僕の、大好きで、大切な相棒。
最後のわがままを叶えてくれてありがとう。最後に話せたのがカミュで良かった。相棒が君で良かった。
謝るのは僕の方だ。最後まで何もしてあげられなかった。ごめんね、カミュ。
心の中でしか伝えられないけど大好きだったよ。ありがとう。
世界が終わる瞬間に、また会いに行くから。そしたら一緒に冒険しようね。
「……っ」
カミュの声と同時に、また僕の頬に雫が落ちた。きっとこれは僕のでもカミュのでもない。誰のものでもないそれは、頬だけでなく身体中にも落ちてくる。
いつか誰かが言っていた。世界も涙を流すのだと。僕はこの世界に何かをしてやれることはできなかったのに。世界が終わる瞬間も、見届けることができないのに。
世界が終わる瞬間に、僕らはきっと夢を見る。
大好きな世界を救う夢。再び相棒と旅する夢。
今度は絶対救うから。それまで絶対待っててね。
最後まで支えてくれてありがとう、カミュ。