二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.26 )
- 日時: 2017/07/31 16:36
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: /QbsIKZ4)
- プロフ: ※BL注意※
DQ 11
11主 × カミュ
【 勇者の愛 】
——物は盗めても、あいつの心は盗めない。
* *
「……なぁ、イレブン」
「ん? どうしたの?」
「……いや、やっぱなんでもねぇ」
俺は自分から話しかけたにも関わらず、イレブンから顔を背けた。キラキラ輝き希望に溢れたアメジストの瞳に、風になびく黄金の髪。少し頼りなさそうな体型だけど勇者として世界を救おうとしているイレブンが、俺はどこか気になっていた。
相棒として、仲間として、とかそんな感じじゃない。
ヘラっと笑うその顔も、俺のことを尊敬するその眼差しも、何もかも全て俺のものにしたかった。それでも俺の思いはあいつには届かない。どんなに思っていても、あいつは気づきもしないだろう。……そんな鈍感なところだって、俺にとってはあいつの魅力な訳だけど。
「……俺、お前が好きだ」
「え?」
——言ってしまった。ついに。
訂正しようとイレブンの方を向こうとしたら、あいつの頬が赤くなっているのが見えたため顔を背けたまま俺は大きく息を吸った。
落ち着いて、思いきってイレブンの方に顔を向ける。黄金の髪に触れると、イレブンは小動物のように肩を震わせた。頬を赤く染めながら震えるその姿がいとおしく、思わず肩を抱き寄せてしまう。この体も全て、盗んでしまいたかった。
「あ、あの、カミュ……」
「ごめん、もう少しこうさせて」
こうしていると、いつもより落ち着く感じがした。俺の鼓動も、イレブンの鼓動も、煩くなっているのがわかる。もう恥ずかしさも何もなかった。今すぐこいつの心を盗みたい、その一心で俺は再びイレブンの髪に手をかける。黄金色のその髪は、冒険を始めたときから変わらない。こんな旅のなかどんなケアをしているんだ、と思いたくなるほどさらさらで俺の指を通り抜けていった。
「もう一度言う。俺はお前が好きだ。お前の気持ちが知りたい」
「えっ……僕は……」
そう言って、俺はイレブンの頭に顔を埋める。こんなの自分勝手かもしれない。だけど、それでも、この思いを届けたかった。
——気づかねぇなら、気づかさせてやるよ。
「!!」
イレブンの顎に手をかけて、くいっと持ち上げる。大きく目を見開いたのも気にせず、顔を近づけた。
あと数センチ。もう少しで届きそうな距離になると、俺はもう一度口を開いた。
「俺はこれくらい本気なんだけど」
右手で今度は頬に手をかける。赤く染まっただけでなく、体温も上昇しているのが分かった。輝くアメジストの瞳は大きく見開かれている。
「……僕も、好きだよ」
「……誰が?」
少しだけ、意地悪をしてみた。案の定イレブンは恥ずかしくなったのか口を小さく開けて、ボソッと呟く。小さいけれど俺の耳にはしっかり聞こえた。
——これで、あいつの心も盗めたかな。もう全て俺のものにしてやる。
「……」
あと数センチ、その距離をゼロにした。