二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【DQ短編集】世界から勇者が消えた日 ( No.27 )
- 日時: 2017/08/03 22:33
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: WqZH6bso)
DQ11
11主 × カミュ
【 君を守るから 】
今僕らが相手をしている敵は想像を遥かに上回る強さを持っていて、とても勝てそうな相手ではなかった。それでも、世界の平和のために僕らは剣を振るう。例え相手が憎悪に溢れていようと。この手でまだ救うのには遅くないから。
「っ……!!」
「イレブン!! あぶねぇ!!」
——もう一度、敵に斬りかかろうとしたら背中に激痛が走った。痛みのあまり剣を手離してしまい、僕は地面へ崩れるように倒れ混む。だけど、不思議と激しい痛みは一瞬で退き、あとの残りの痛みは倒れ混んだときによって生じた痛みだった。
——あぁ、そうだ、カミュは。彼は無事なのか。僕が倒れ混む少し前、敵に攻撃されたほんの数秒後……あの一瞬で、カミュは僕に駆け寄ってくれた。背中の痛みがないのも、きっと彼のおかげだろう。歯を食い縛り敵の目を盗んで辺りを見回してみたが、そこにカミュの姿はない。使い古されたブーメランだけが土だらけになって転がっていた。
「カミュ!!」
ブーメランが落ちてる場所から少し離れた場所にある茂みの向こうに、見慣れた青い頭があった。彼の名前を叫びながら僕は脇目も振らず走り続ける。茂みについた頃には息が荒くなっていたけれど、もうそんなのどうでも良い。すぐにカミュの手を取り名前を何度も叫び続けた。
「……イレブン……怪我は……ないか……?」
「何でだよ、何で僕を庇ったんだよ……!!」
途切れ途切れでゆっくりではあるが、まだしっかり喋れるカミュの姿に安心して僕は何度も問いかける。何で、何で。自分の命を犠牲にしようとしてまで僕を助けるんだ。血と涙でぐちゃぐちゃになった僕の顔をカミュが優しく撫でたけど、そんな優しさ要らなかった。そんなことをするくらいなら、僕のことを庇わなくて良かったのに。多少の怪我はあるけれど、それは僕の不注意だ。すべて僕の責任なのに。
「……言ったろ、お前を守るって」
「だからって、こんな……!!」
「……好きな人の、ためなら……命なんて、惜しくも、なんとも……ねぇや」
——危険なことしないでよ。そう言いかけたその時、僕の声はカミュによって遮られた。……好きな人? そのためなら命も惜しくない?
僕は返事をしようにもできないまま、カミュのことを見つめる。だんだんと息が荒くなってきている。大好きで、大切な相棒がこんな目に遭ってるのに僕は何もできないなんて……勇者として、とかそんなことより人として失格じゃないか。
「……イレブン、俺は……お前が、好き……だぜ」
語尾がだんだん小さくなって、カミュはゆっくり目を閉じた。今度は名前を呼んでも体を揺すっても何の反応もない。今何が起こったのかを理解するのにわかった頃には、もう遅かった。
「カミュ!! 嘘だろ…!! 目を開けて!! カミュ!!」
今までにないくらい、喉も枯れるくらい、荒れ狂うように僕はカミュの名前を呼び叫ぶ。だけど返事は返ってこない。目を開けることだってしなかった。
——お願いだから、嘘だって言ってくれ。嫌だ。嫌だ。僕を一人にしないで。カミュ。戻ってきて。
*
「カミュ! ……っはぁっ……はぁっ……」
——気づくと、僕は宿屋のベッドの上にいた。……助かったのか? 顔に手を当ててみるけど、傷らしきものは見当たらない。……カミュは? 彼は今、どこにいる?
「……イレブン、相当うなされてたみたいだな。大丈夫か?」
「カミュ……」
目の前に、カミュがいる。間違いない。見慣れた青い頭にどんなときでも心配してくれる僕の相棒。
——あぁ、そうか。さっきのことは夢なんだ。もし現実なら、ここにカミュはいないし僕自身も存在しないかもしれない。
「……何でもないよ、心配かけてごめんね」
「なら良かった。安心しろよ、俺はお前のそばを離れるつもりはないからな」
カミュはそう言って僕の隣に腰を下ろした。その頼もしい台詞にその笑顔、それでこそ僕の相棒だ。
でも、僕だって守られているだけにもいかない。僕だってカミュを守らなければならない。
——大好きで、大切な相棒は僕がしっかり守るから。