二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ポケスペ】あなたとわたし【ポケモン】 ( No.3 )
日時: 2016/08/31 23:40
名前: Orchid (ID: jxbxTUdV)

第2話 夢もいっしょに連れてきた


 無事シルバーと共にはじめてのポケモン《ミニリュウ》を捕獲したマイ。
 長居するのも意味がないとシルバーは早々にヤミカラスをモンスターボールから繰り出すと、行きと同じやり方でワカバタウンにマイだけを置いて行った。

「シルバーさんはゴールドさんに会わなくていいんですかー?」
「俺は……いい」
「ほへ? わ、わかりました」

 何か意味ありげ的な視線を泳がせるシルバーに疑問を持ったマイだが聞くのも悪いと思い、シルバーが見えなくなるまで空に手を振り続けた。

(多分あのままゴールドに会うと面倒なことに巻き込まれるしな)

 そーんなことはつゆ知らず。マイはゴールドを探しにワカバタウンを歩く。
まだ喧嘩をしているかな? と不安になりつつも、早くミニリュウを見せたい、と早まる鼓動を感じる。

「マーイッ!」
「わっ!? ご、ゴールドさん」

 きょろきょろとあたりを見渡すと後ろから大きな声を掛けられる。振り返ろうとする暇もなく首に回される両腕はゴールドのものだった。
 その勢いに驚いてモンスターボールを落としそうになったが、反射神経のいいゴールドが地面に落ちかけたボールを見事キャッチしそのままマイに手渡す。

「俺を置いてくなんて酷ぇじゃねーか」
「ご、ごめんなさい」
「別に怒ってるわけじゃねえよ? ただ、その……心配したっつーか」
「へ?」

 首に回された腕が今度は肩に来て、ぐるりと視界を180度変えられるとゴールドが目の前に。少しばかり怒っているようにも見えたが、素直ではないゴールドが心配した、と小声なりに言ってくるもんだから目がテンになる。
 その様子に恥ずかしさを覚えたゴールドが話題をかえようとボールの中身を問う。

「ポケモン、ゲットしてきたんだろ? 見せてくれよ」
「はいっ」

 教えてもらったばかりのボールからポケモンの出し方はまだ抵抗がありできないマイが、ボールを右手でもって左手の人差し指で、そっと開閉スイッチを押す。
 煙と共に、ミニリュウが出てくるとゴールドは目を丸くして——

「ミニリュウたぁ、なかなかなポケモンを……」
「えへへ、そうかなあ」

 照れて頬がリンゴのように赤くなるマイ。しかしゴールドには1つ疑問が出た。

「なあ、ミニリュウって確か、ワカバの端にある洞窟で出たよな? そこって前に俺が危ないから行くなって言わなかったけなあ?」
「あっ……え、えと」

 ニコォ、と顔は笑顔のゴールドだが、その後ろからあふれ出るドス黒いオーラにビビるマイ。でもマイには言いたくて言いたくて仕方ないことがある。

「わっわたしねっ。この子と旅に出たいの!」
「ハア!?」

 笑顔から一転、眉間にしわを寄せてマイを壁にと追いやる。両腕を壁に当て、マイを逃げられないようにする。

「旅って危険なのわかってるよな? お前はただでさえ身体が不安定で、ちっせえから他の連中からも嫌な意味で絡まれたりもする。今は俺がいるから大きなこと犯罪には巻き込まれないけどな、俺の目の届かないところじゃどんな目にあうかわからないんだぞっ!?」

 正論だ。珍しく正論を述べるゴールド。そりゃ3年間も大切に、それはもう大切に面倒をみてきた女の子を「10歳になりましたね! ハイ! 旅に行ってらっしゃ〜い!」なんてできるわけがない。
 言ってないだけでゴールドはマイのことを他の友達とは違う感情だって持っている。

「……」
「どうしたマイ? 諦めたか?」

 俯いて表情がわからなくなったマイをいい方向で考えるゴールドが一安心した瞬間にマイがガバっと顔をあげて宣言した。

「わたし決めたの! だいじょうぶだよ、がんばるったらがんばる! 怖いことだって覚悟したもん!」
「マイ……」
「あっごめんなさい。わたし大きな声でっわっ!?」

 3年間過ごしてきたが、こんなにも自分を主張し、意見を突き通そうとしたマイを見たことがなかったゴールド。
 これは俺も肝を据えるしかないと、つい抱きしめてしまった。

「ごー、るど……?」
「ダァァァアアアア! わーったよ! わーった! お前の決意の固さみせてもらったぜ。こうなったら俺もついて行く!」
「へっ?」

 抱きしめられた本人は理解ができていなかったのにゴールドがまたまた大きな声で叫ぶから状況が余計理解できないでいるマイ。

「俺と旅をするってこった! 問題ねえな? あ?」
「なるほどーっ」

 ようやく解放されて、ぽんっと手のひらの上でこぶしを叩くマイ。
そして——

「じゃあもう不安がなくなりましたっ」
「どういうことだ?」
「だってゴールドさんがいれば何も不安はありませんっ」

 明るい笑顔をみせるマイと、嬉しい言葉を言われてゴールドは首まで赤くなる。
今、夕日が出ているせいでマイにはわからかったが。

「…………」
「ゴールドさん?」
「……っふ」
「ほえ?」

 突然黙り込んだと思ったら噴き出して笑うゴールドについていけない様子のマイ。

「なんかよォおかしくないか? いつもなら俺が言い出す側だろ? なのに今回はマイからって」
「えーおかしいですか?」

 いつものゴールドに戻り安心したマイを、もう夕方だからと家にまで送るゴールド。

「あ、そうだ。マイ、これやるよ。誕生日プレゼント」
「わー! ポケギアー!」
「お前いっつも家電から電話かけてきたもんなー。博士もくれそうな気配ないからよ、やるよ」

 マイの好きなピンク色のかわいらしいポケギア。ポケギアとはスマートフォンのような携帯を時計型にしたもの。これ1つで電話はもちろん、メールもできてしまう優れものだ。
 別に博士は意地悪でポケギアを与えなかったわけではなく、マイにほしいかい? と聞いたら、いりません! と遠慮されてしまったからである。

「ありがとうございます! ゴールドさんっ大切にします!」
「おー。俺の番号はいってからいつでも電話してきていいからな」
「はいっ」
「じゃあな、また明日、いつもの時間に来るわ」

 手を振りゴールドを見送るマイ。夕日に輝いてポケギアがまぶしく光る。

◆◆◆

「博士遅いなあ」

 ちくたく、ちくたく。いつもなら帰ってくる時間なのに博士が帰ってこない。
実は博士、誕生日ケーキをと研究所からかなり遠いケーキ屋さんにまでケーキを買いに行っているのだが、そんなこと知らないマイは不安で仕方なった。

(研究で忙しいのかも。様子見に行ってみよう)

 この不安を解決するには行動あるのみ! といつもなら家の中で大人しく待つマイだがミニリュウと一緒なら怖くないと研究所まで行くことに。
 それにさほど遠くない研究所だ。あたりが暗くても行ける。

「あれ? 研究所、電気ついてる? でもおかしいなあ、なんで光が動いているんだろう?」

 だんだんと近づく研究所。電気がついてると言ってもその光が移動しているのは何故? しかも光はあっちに行ったり、こっちに行ったり。

「み、ミニリュウ……お願い一緒にボールから出て行こう?」

 そっとミニリュウをボールから出して研究所の入り口まで来たマイ。もらった合い鍵でこっそり扉を開けると目の前にいたのはなんと。


「どっドロボーさん!?」


 ——泥棒だった!!