二次創作小説(紙ほか)

Re: 佐多くんは今日も能天気 【銀魂】 ( No.5 )
日時: 2016/10/31 07:40
名前: 杏子 ◆EZhnkW6cPU (ID: kRzIGuhz)

__________とまぁ、そんなこんなで佐多は万事屋で働かせてもらえることになったのだった。

正直これまでニートだった男に、誰も期待などしていなかった。
しかしこの男、掃除をさせればチリ一つ残らない、買い物に行かせれば他の誰も気づいていなかった不足品も買ってくる、料理は銀時以上にうまいと、なかなかにハイスペックであった。それらの仕事を終えるとどこででも寝てしまうというのはいただけないのだが。


一悶着あったのち、神楽に酢昆布を買ってこいと追い出された佐多は、のんびりと駄菓子屋に向かっていた。


(いや〜日差しが気持ちいいな〜。帰りに少し寝て帰ろうかな〜)


……ここまで能天気だと、いつか神楽に殺されるのではないだろうか。

酢昆布を買った佐多は、反省の意もこめて、早く帰ることに決めた。
ふと前を見ると、重そうな荷物を両手に持っているおばあさんがいる。スーパーの帰り道だろうか。


「あの、持ちますよ」

「え?ああ、いいのかい?ちょいと買い過ぎちまってねぇ」

「かまいませんよ」


佐多はそのおばあさんが持っていた荷物を両方引き受けた。が、


(え、重い)


これがもやしと呼ばれてしまう所以だろうか。
佐多はここで負けてはなんだと、顔に笑顔をはりつけたまま歩き始めた。


「すまないね。家はもうすぐなんだ、頼んだよ」

「(^v^)」

「ふっ、余裕そうだねぇ?あんたみたいな若者はちゃんとまだいるんだね」


言葉を返す余裕もないほど限界な佐多である。

しばらく歩いていると、万事屋が見えてきた。
どうやらご近所さんらしい。と思ったのも束の間、おばあさんは万事屋の下にあるスナックの扉を開けた。


「ここだよ。ありがとうね、助かったよ。あんたどこに住んでいるんだい?ここから遠いなら、悪いことしちまったねぇ」

「あ、僕、上の万事屋さんに住んでいます」

「……ん?なんだってェ?」


明らかに相手の表情が変わったので、佐多も思わず笑顔のまま硬直した。
まるで蛇に睨まれた蛙だ。しかしなんとか佐多がもう一度同じことを説明すると、その人は頭を抱えた。


「そうかいそうかい。あの腐れ天パ、あたしに何も相談なくねぇ……。どうせなんとか誤魔化し続けて、家賃をこれまでのままにしようとかいう魂胆なんだろうけどねェ……そうはいかないよ……」

(あ、コレあかんやつや)


どうやら大きな地雷を踏んでしまったらしい。
ぎっと睨まれて、佐多は思わず背筋をのばした。


「アンタ、名前は?」

「さっ佐多です!佐多とお呼びください!」

「それは苗字かい?名前はなんだい?」

「そこはシークレットといいますか」

「なんだいそりゃ。おかしな奴だねぇ。あたしはお登勢だ。銀時とはまあ、ちょっとした仲でね。とにかくあたしゃ万事屋の大家みたいなもんさ」

「そうだったんですか。挨拶が遅れて申し訳ないです」

「いいよ。どうせあの馬鹿、何もいわなかったんだろう?」


佐多がうやむやに笑うと、お登勢は大きな溜息をついて、スナックを出て行った。
佐多が慌てて後を追いかけようとスナックを出た瞬間、万事屋から銀時の悲鳴が聞こえてきた。


「違うんだって!!違うんだってババア!!いやあの、アレだよ!!言うタイミングを逃したっつーか!!うん!!」

「言い訳してんじゃねェェェェ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


銀時が上から降ってきて、ぐしゃっと地面に叩きつけられた。
おそらくお登勢に投げられたのだろう。ご愁傷様というか、なんというか。


「…………早く神楽サマに酢昆布渡さないと」


あえてのスルーを決め込んだ佐多が一歩踏み出すも、血まみれの手がその足を強く掴んだ。
恐る恐る佐多が下を見ると、そこには血まみれの銀時くん。


「佐多ァァ………てめえのせいだァ……」

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


……またまだ佐多くんの万事屋ライフは始まったばかりだ。