二次創作小説(紙ほか)

Re: 【おそ松さん】六つ子の『夢』 ( No.2 )
日時: 2016/11/20 12:40
名前: 鈴苺 (ID: G0MTleJU)

《長男の『悪夢』》





真っ暗闇。

今の状況をただ一言で表すとこうなるだろう。

それほど暗いのだ。この場所は。

一寸先も見えず、自分がどこを歩いているのかさえもわからない。

ただアテも無く、まっすぐに歩いている。……と思う。


・・・・・・・・・・・・


どのくらい、歩いたのだろう。

一時間?二時間?違う、まだ五分しか歩いていないだろ。

それほど、時間が長く感じた。

時の流れというものが、ここには存在しないから?

景色が全く変わらないから?

するとその時、足に何かが当たる感触があった。

なんだ…?

疑問に思い足元を見てみると、俺の足に当たっていたのは…

『手』だった。


「ヒッ……!」


そう、血まみれの手が転がっていたのだ。

一つだけではない。周りじゅう、手、手、手。

血まみれの手が、そこら中から『生えて』いた。

指が変な方向を向いていたり、関節が曲がっていたりと、様々なカタチの手が。

だが、何故だろうか。

それが、その光景が、

−−美しいと思ってしまったのは。


「いっ……うあああああああっ!」


俺は怖くなり、その場を逃げ出した。

その恐怖は、この光景から来ているのか、自分の気持ちからなのか、よくわからなかった。

でも、俺は走った。

走って、コケて、走って。

暗闇の中を無我夢中に、ただただ走り続けた。


・・・・・・・・・・・・


どれだけ走ったのか、もうよくわからない。

気がつくと、また何もない暗い空間に居た。


「はっ…ひぁ………ひゅ……なんだよ……ハッ………さっきのは…?」


足が震え、その場に胸を押さえて座り込む。

その震えが走りすぎたからなのか、恐怖なのか、俺にはわからなかった。

もしかすると、その両方かもしれない。

呼吸を整え、無意識に前を見ると、白く、小さな光が向こうに見えた。


「…で……ぐち…?」


たとえ出口じゃないとしても、この暗闇に光があるのは嬉しかった。

なぜ嬉しかったのかはわからないが、なぜだか…なんとなく嬉しかったんだ。

俺は、震える足を無理矢理立たせ、その光に向かって走り出した。

頼りない足取りで、光に近づく。

少しずつ…少しずつ、光が大きくなっていく。

そして、光が目の前に見えた時、目の前が白い光で包まれた。


・・・・・・・・・・・・


「………ん」


瞼に光が残っていて、まだ少し眩しくて、目を開けられない。

ここは外なのか?

それとも、さっきと同じ場所か?

そう考えていると、頬に生暖かい風が当たった。

…間違いない、ここは外だ。

やっと脱出できた−−

希望と共にパッと目を開けた。

だが、その途端、俺は一瞬息をするのを忘れた。

……そこは地獄だった。

おそらく、どこかの草原なんだろうが、ソコはとても草原と言える場所ではない。

目の前に広がる、赤、赤、赤。

赤の中に紛れる、青、緑、紫、黄、桃。

その中心に立つ、『赤』


「……は…?…なんだよ………コレ……」


俺はただ、その光景を呆然と見つめることしかできなかった。

その中心に立つ『赤』の顔はよく見えなかった。

その時。

少し離れていたはずの『赤』が、目の前に居た。

吸い込まれそうなほどポッカリと開いた目。裂けそうなほどに笑っている血まみれの口。二本のアホ毛。そして、血まみれのパーカー。


「ひ……っ…!」


やばい。逃げなきゃ。

そう思い逃げようとするが、足がガクガクと震えて動かない。

ああ、もう、何やってんだよ、俺。

涙なんか流してさぁ……情けねえなあ。

ソイツは、その口を開き、ニタァと笑った。

口から、鉄が錆びたような匂いが漂い、吐き気がする。

涙なのか、汗なのか、よくわからない液体が、俺の顔をぐちゃぐちゃにしている。

その時、そいつは俺の頭に向かって飛びかかって来た。

ああ……死んだな。

諦めたその時、後頭部に痛みを感じた。

いや…痛みなんて柔らかい表現じゃないな。

ああ、熱い。

鉄の棒を頭に突っ込まれて、グチャグチャと掻き回されている気分だ。

目の前が暗くなっていく。

意識が無くなっていく。

俺が最後に見た光景は、そいつが俺の脳みそを取り出し、貪っている所だった。