二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver] ( No.15 )
- 日時: 2017/08/06 21:16
- 名前: サンセットドラム (ID: eqvLcwt4)
第5話 夕日の沈む海岸で2
「ねえ!キミ、どうしたの!?大丈夫!?」
ボクは仰向けに倒れている少年のもとへ飛んでいくと、肩をガシッと掴み、激しく揺さぶった。それに合わせて少年の頭が力なくガクガクと揺れる。
「ねえ!!聞こえてる!?」
もう一度呼びかけてみるが、相変わらず少年の目は固く閉じたままだ。目の前や耳元でぱちぱちと手を打っても、ピクリとも動かない。死んでるのではないだろうか。しかし、呼吸はしているようだ。胸が上下に動き、鼻からかすかに息も漏れているのがわかる。
「おーい!死んでる?生きてるよね?返事してよー!ねー!」
今度は頬をぺちぺちと叩いてみた。さっきよりも激しく揺さぶってみたりもした。しかし、少年が起きる気配は微塵も感じられない。
「よーし。こーなったら・・・・!」
ボクは、大きく深く息を吸い込んだ。
ここまでやっても起きないなら、ボクの自慢の大声でびっくりさせてやろう。これならきっと起きるだろう。
しかし、タイミングが良いのか悪いのか。ボクが大声を出す直前に、運悪く少年は目を覚ましてしまった。少年の少しキツそうな青い猫目が、夕焼け色の空をぼんやりと見つめる。
(なんで今起きちゃうの!!)
ボクは心の中で必死に叫んだ。顔は多分不安と焦りで泣き笑い状態。
ごめんよ、少年。ってか耳塞いで!
しかし、そんなボクの心の叫びなど届くはずもなく。
「起きろおおおおぉぉぉっっっ!!!!!!」
「ぎぃやああああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」
丁度起き上がろうとしていたのか、少年は上半身を少し起こした状態のままボクに負けないくらいの悲鳴をあげ、固まった。そして、その体勢のままカサカサと後ずさった。目にうっすらと涙を浮かべながら何かを言おうとしているが、全く言葉になっていない。
そんな少年の様子を見て、本当に申し訳ないが笑いがこみ上げてきてしまった。
「えっとゴメンね・・・・・ぷっ・・くくく・・・。」
謝ろうとしたが、我慢できずに吹き出してしまった。しかもその後笑いは収まるどころかますます酷くなっていった。
・・・・いや、だって・・さっきの動きがなんかゴキブリみたいで・・・・。
すると、今まで恐怖を湛えていた少年の目は、一瞬のうちに殺意のこもった目へと変わった。まだ涙目ではあったが、顔は怒りで赤く染まり、目尻はキッとつり上がっている。
「え、ちょ待って・・・!本当にゴメンって!怒らないで・・ブフォッ。」
うわああああああっ!!
さっきの記憶がフラッシュバックしてしまい、ボクはまたもや盛大に吹き出した。少年が舌打ちした音が聞こえたような気がする。
ああ、ヤバイな・・・・・・・と思ったのも束の間。
「おぶうおっ・・・・!」
みぞおちに鋭い蹴りが入り、ボクは2、3メートルほど吹っ飛んだ。背中、尻、頭の順に体を砂浜に打ち付ける。
・・・なんだ。声かけても全然起きないから心配したけど、すっごく元気じゃん。
ボクは少しの間仰向けに寝っ転がりながら夕焼け色の空を見つめていたが、やがて、鈍い痛みを堪えながらゆっくりと立ち上がった。痛みで若干涙目になりながら、少年に歩み寄る。
一方、さっきまで目角を立てていた少年は、予想外に吹っ飛んだボクを見て罪悪感を感じたのか、その場でアワアワとしていた。自分より少しだけ高い位置にある顔を覗き込むと、少年は申し訳なさそうに目を逸らした。
「えっと、さっきは本当にゴメンね。」
そんな少年にボクは今度こそしっかり謝ると、笑いかけながら右手を差し出した。
「ボク、ナツヤ。よろしくね!」
夕暮れ時の海岸はとても静かで、優しい波の音だけが響いていた。