二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケモン不思議のダンジョン〜光と闇の物語〜[リメイクver] ( No.18 )
- 日時: 2017/12/31 15:33
- 名前: サンセットドラム (ID: NtGSvE4l)
第8話 夕日の沈む海岸で5
「さっきは疑ってごめんね。」
目覚めて早々怪しまれた時はかなり驚いたが、申し訳なさそうに笑いながら右手で頭を掻くナツヤを見て、オレは安堵のため息をついた。
それにしても、さっきのナツヤのオーラといったら凄まじいったらありゃしなかった。オレはスペアリブのおかげで助かったのだ。内心複雑だが、「別にいいよ」とこちらも微笑みながらスペアリブの生みの親に一生感謝し続けることを誓った。
「…というのも、最近悪いポケモンとか人が増えててさ…。いきなり襲ってくるのもいるし…なんか物騒なんだよね〜…。」
そう言うと、ナツヤは肩を落とし俯いた。その顔からは事の深刻さが読み取れる。
ああ、よりによってこんな治安の悪そうな所に流れ着いてしまうだなんて、自分はだいぶ運の無いやつだなと思う。
「こんなに綺麗で穏やかな所なのに…大変なんだな。」
オレは苦い顔をすると、ナツヤと同じように俯いた。
静かな海岸の浜辺に、夕空をのんびりと飛ぶ鳥ポケモンの影が複数映っている。
「…………………っ!?」
突如背後から沈黙を切り裂くような禍々しい気配を感じ、オレは顔を上げ、勢いよく振り返った。ほぼ同時に、洞窟の近くの大岩から2匹のポケモンが飛び出し、襲いかかってきた。ナツヤは全く気がついてないようだ。
「ナツヤ!危ない!」
自分に襲いかかるこうもりポケモンの攻撃をかわしつつ、声を限りに叫ぶ。しかし、少し遅かったようだ。「え?」と間抜けな声を出すナツヤに、もう一方の薄紫の体が勢いよくぶつかる。
「痛っ!!」
悲痛な叫びとともに、ナツヤは波打ち際まで弾き飛ばされた。その時、ナツヤのズボンの右ポケットから、手の中に収まるくらいの大きさの石が飛び出した。それを見た薄紫のポケモンはケケッと嗤うと、立ち上がろうとするナツヤにゆっくりと近づいた。
「おっと、ごめんよ。」
反省の色が全く見られないような、むしろ馬鹿にしたような声色に腹が立ったのか、ナツヤは目にうっすらと涙を浮かべながら頬を膨らませた。
「なんなの!いきなり!」
「ヘヘッ、わからないのかい?」
先程オレに攻撃をしかけてきたこうもりポケモンは、挑発するかのようにナツヤの周りをひらひらと飛び回った。
「オマエに絡みたくてチョッカイ出してるのさ。」
「ええっ!?」
ナツヤは攻撃を食らった腰の辺りをさする手を止め、目を丸くした。
うわぁ。早速悪そうなポケモンが現れたな。しかも絡みたくてチョッカイを出した割にはだいぶ強烈なタックルだ。
「それ、オマエのもんだろ。」
薄紫のポケモンは、体から吹き出るガスのような気体で自分とナツヤの丁度間に落ちている石を指した。
「ああっ!それは!!」
「悪いがこれは貰っておくぜ。」
薄紫はガスで石をひょいと持ち上げると自分のもとへと手繰り寄せ、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
その様子を放心状態でナツヤは眺めていた。どこか悲しげな感じのするぽかんとし顔で右手を伸ばしている。恐らく、動揺と先程のダメージで足が動かないのだろう。
「ケッ、てっきりすぐ奪い返しにくると思ったが…なんだ?動けねぇのか?」
まるで時間が止まったかのように動きを見せないナツヤに向かって、薄紫はあっかんべーをした。
「意外と意気地無しなんだな。」
ナツヤが一瞬、ギクッと肩を震わせる。視線を徐々に砂浜へと落としていく。
その様子を見て満足したのか、薄紫はまたもや嫌な笑みを浮かべながら、「さっ、行こうぜ。」とこうもりに声をかけた。
「じゃあな、弱虫くん。ヘヘッ。」
こうもりも薄紫と同じようにあっかんべーをすると、ナツヤの耳元で何かを囁いた。それを聞いたナツヤは顔を赤くし、怒りで肩をわなわなと震わせている。
意地の悪い2匹のポケモンは揃って高笑いをすると、近くの小さな洞窟の中に姿を消した。