二次創作小説(紙ほか)

Re: 【文スト】夢から醒める ( No.10 )
日時: 2017/05/09 05:46
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)


「早く殺りなよ、それ」

太宰は至って平坦な口調で言った。
俺は目の前で横たわりながら必死に命乞いをする、傷とアザだらけになった無様な人間に銃を向けていた。
だが、その引き金を引かない。引けない。

「でも、太宰……」

初めての任務だったこれは、太宰の指揮と俺の重力操作で二時間もしないうちにターゲットを追い詰めた。
此処で目の前の此奴を殺せばそれで任務は終わりを告げる、が。
幼い俺は人を殺すことに抵抗を覚えた。
その緩い引き金を引くことができない。

「いいから」
「だけど此奴は……っ」

死にたくないと言っている。
そう言おうとしたところで刹那、後ろから太宰が俺の拳銃を握る。
そして一瞬の間で引き金を引いた。
パァンと空を切る音が鳴り響く。
それと同時に花を咲かせるように鮮やかに血が飛び散った。

「う、ぐぅ」

噎せ返るような鉄の匂いと、真っ赤に染まり動かなくなった死体に、吐き気を覚えた。
思わずそこで吐き出してしまう。

「中也が無慈悲な事で躊躇ってるから、苦しみながら死ぬことになったんだよ?きっと何もわからないまま死んだ方が楽だったろうね。可哀想に」

気持ち悪い笑みを浮かべながら、太宰は死体の胸ポケットや装備品を回収する。
するとそこで何かを見つけたのか、一枚の写真を取り出してこちらに見せつけた。
そこに写っているのはターゲットと、その隣で笑う子供と女の人。
三人とも幸せそうな表情で笑っていた。

「あーあ。君が殺しちゃったせいでこの人は大事な人には会えなくなったみたい。この女の人と子供も今頃この人の帰りを待ってるのにね」