二次創作小説(紙ほか)

Re: 【文スト】夢から醒める ( No.3 )
日時: 2017/05/02 05:30
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)

__________魔都、横浜。

目まぐるしくも平穏な日々を過ごす人々の裏で、ある一郭の裏社会では日常の風景でありながら有り得ない光景があった。

「中也、右」
「わかってるっつーの!」

黒い羽織りを纏った集団の中、その集団を意図も簡単に薙ぎ倒していく青年と、それを指示しているであろう青年が二人。
指示を出している包帯まみれの青年、太宰が次々と作戦コードを言うと、亜麻色の髪の帽子を被った青年、中也がその小柄な体躯からは考えられないような力で相手を蹴り飛ばす。
その速さは、最早常人には計り知れない素早さであり、恐らく目で捉えることすら儘ならぬだろう。

「……ったく、キリねぇなこりゃ」

中也は小さく溜息をつくと、ギロリと鋭い視線を太宰に向けた。
自分に向かれている訳では無いとわかっていても、太宰を除くその場にいた者の背筋に悪感が走った。

「それもこれも誰かさんが作戦を丸投げにする様な事したからだよなあ?」
「さあ誰だろうね?私は知らないよ」
「テメェだよこの青鯖!」

態とらしく肩を竦める太宰に、中也は苛立ちを覚えて声を上げる。
と言うのも、この任務では中也が囮で潜入操作をし、ターゲットの首を人刺しして穏便に済ませるつもりだったのだが__________

「私の所有物に手を出そうとするからさ」

低く地を這うような声で太宰はそう言った。
所有物、というのは中也の事だ。
そう、太宰と中也は恋人関係にあたる。
そんな中、中性的な顔をしている中也を狙う輩は少なくない訳であり、手を出そうとする者は太宰が徹底的に排除してきたが、今回ばかりはそうはいかなかった。
案の定を気を緩めたターゲットは中也の腰のあたりを、何も言ってこないことをいい事にヤラシイ手つきで触ってくるのだ。
勿論中也も太宰以外の男に触られるなんて、吐き気を感じるほどの嫌悪感だったが、任務だった為、下手な動きはとれない。
仕方がなく太宰からの指示があるまでそのまま待機していた訳だが、中也の忍耐力よりも先に太宰の方が駄目になったらしい。
いきなりターゲットと中也の間に入ってきては、銃を発砲したのだ。
動揺していたのか、太宰の弾はターゲットの頬を掠める程度であってその後何度か発砲したが、向こうも流石に体術はそれなりだったらしく、あっさりと交わされてしまい、増援が来てしまう事態にまで持ち越してしまった。
そして現在に至る。

「……俺はお前のモンじゃねえ」

所有物、と呼ばれ、中也は思わず反論した。