PR
二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.4 )
- 日時: 2017/05/04 06:48
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
太宰はそれにニヤリと笑みを浮かべる。
「へえ……でも私がいなければこの力を最大限に生かす事はできないでしょ?」
「は、な……“汚濁“を使う気か?!」
汚濁。中也の異能力“汚れちまつた悲しみに“の所謂強化形態。
だが、これには欠点があり、自分の意識とは無差別に攻撃してしまう事だ。
目の前の敵だけを的にして周りの物質関係なく破壊していく。そして最後には息絶えるまでそれを止める事はない。
つまり、中也にとって汚濁は死を意味する。
「殺れよ、中也。私の作戦立案が間違っていた事はないだろう?」
「だが、アレは……!」
「私を、信じろ」
珍しく真剣な表情で口調を変えてくる太宰に、中也はその最後の言葉で汚濁を使わざる負えなくなった。
太宰はその事をよく知っている。だからそれを言ったのだ。
「わかった……信じてる、太宰」
そう言って背を向ける。
お互いこれで最後になるかもしれないが、何も言わない。信じているからだ。
中也は身につけていた黒い手袋をゆるりと外す。
そして呪文のような呪いを唱えた。
「汝、陰鬱なる汚濁の許容よ」
じわじわと体温が上昇し、それに伴って痣が浮き上がってくる感覚が、肌を伝う。
段々と視界が歪んできた。もう、理性が持たない。
最後の理性で、中也は小さく唱えた。
「更めてわれを目覚ますことなかれ」
PR