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二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.6 )
- 日時: 2017/05/06 07:44
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
こちらからは顔が見えなかったが、中也はふいに静かな口調で問いかける太宰を、知っていた。
そんな時、太宰は決まって“死にたい“と考えている。
いつもの“自殺したい“ではなく“死にたい“だ。
「……抜かせ。夢にまでテメェを見るなんてごめんだ」
中也が茶化すようにそう言うと、太宰から苦笑が零れた。
呆れたように、言う。
「私だって中也の顔も見たくないよ。分かってないフリして、私の事、全部わかっちゃうんだもの」
おどけたように、少し悲しそうに、太宰の瞳は揺らいでいる。
(本当は……何も教えてくれないくせに)
中也はチッと舌を打つ。
中也は思う。いつまでこの関係が続くのか、と。
太宰は自分に、自分は太宰に、お互いがお互いに甘えてばかりいる。
この関係が途絶えてしまった時、中也の呼吸は止まる。
本来の力を使えなくなった異能力者なんて、使えなくなった駒も同然。
ポートマフィアに絶対の忠誠を誓う中也にとって、それは有るまじき事だ。
このままでいたいと、中也は太宰の背中に頬をすり寄せる。
「これが夢、なら……俺は醒めなくてもいい」
そこで睡魔が押し寄せ、中也の意識はだんだんと遠くに向かっていく。
視界がゆるゆるとぼやけ、夜の魔都は幕を閉じた。
「おやすみ、中也」
最後に聞こえてきたそれは、呪いのように酷く、甘かった。
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