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二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【文スト】夢から醒める ( No.8 )
- 日時: 2017/05/07 08:52
- 名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)
第二章 淡い幼き日の記憶
「姐さん、彼奴はだあれ?」
ポートマフィア本部から少し離れた所有地、尾崎紅葉の姐さんの住む家とも言える。
そこで体術から剣術、作法や女マフィア特有の色の使い方などを教わっていた俺は、桜咲き乱れる木の下で本を読んでいる包帯塗れの少年に目がいった。
少し前に本部ですれ違った時には、松葉杖をついていただろうか。
そのときには当時、ポートマフィアで医療関係をしていた森鴎外に手を引かれ、側にはQ__________もとい夢野久作が気味悪い人形を持って笑いかけていたのを覚えている。
「太宰治じゃよ。よく頭のキレると聞くのう」
太宰治。あまりパッとしない名前だったが、その時はとても魅力的だと思った。
至るところに包帯を巻いているが、それでも彼の風貌はとても整っていて、中性的で可愛らしいと言われてきた俺にとっては羨ましく思えた。
「中也、あの子が気になるかえ?」
「いえ……彼奴も異能力者何ですか?」
はっきりとしない返事に姐さんはクスリと笑う。
紅く色づけられた白く、美しい手を俺の頭にゆっくりと置き、指を絡めるように髪を耳にかける。
耳に触れるその手が擽ったくて顔を竦めると、姐さんはまた笑みを浮かべた。
「だから鴎外殿は此処に連れてきた。あの子の異能力には中也も気に入るのう」
俺はそう言う姐さんを後ろ目に、その少年、太宰治に目を向ける。
太宰は一枚、また一枚と本のページをゆっくりと進めていく。
美しい桜と美しい少年はとても絵になっていた。
「太宰、治」
俺は太宰治に魅入られてしまったのだ。
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