二次創作小説(紙ほか)

Re: 【東方project】 夢の支配者 【ドレミー・スイート】 ( No.3 )
日時: 2017/05/05 11:14
名前: 霹靂神 (ID: VKUUDnij)

【嫉妬姫の困難】


——お腹が空いた。
軽く一週間は何も口にしていない気がする。
胃はぐぅぅぅと鳴くことすら放棄し、ただただへこむばかりだ。
............幸せに暮らす奴等が妬ましい。


「何で...、私の能力が効かない訳?」


あまりの苛々に、いつもの陽気さなどどっかに行ってしまった。
残ったのは死に物狂いの嫉妬心だけ。

 私の栄養分...謂わば、食事というものは簡単に言えば他人の嫉妬..。
いつもの私であれば、能力を使って嫉妬心を煽り食べ頃までネタにする。そうすれば、ようやく食事にありつけるって訳だ。
しかし、可笑しくも、今日という今日も妬みという欲にありつけないでいる。
いや、普段、人間というものは常々嫉妬という心が働いている。...それは、僅かなる妬みでその場で食した所で何も美味しくはない。
だから、私の能力を用いって嫉妬を膨大させる。すればするほど、憎しみ・怒りなどの感情も徐々に混じってくる。...その時こそが美味しいのだ。
 ここまで語れば第三者のあんたも分かるだろう?
人間にとっては朗報であるかも知れないが、私にとっては甚だ迷惑でしかない。そう、“私の能力が効かない”んだ。


「ホント...ワケわからない。自分が妬んだって意味ないのよ」


舌打ち混じりに、精一杯の怒りを込めて吐き出す。
嗚呼、こんなことになるなら食べ頃の妬みを集めておくべきだった。
 自分が妬んだって、他人の僅かな妬みを食べたって、腹は膨れることはない。
食べ頃の妬みを食べることこそが私の食事なのだから。



——————うーん、大分入り組んでましたねぇ。大丈夫ですよ、橋姫さん、これは夢です。



エコーが掛かったような声が脳内に響いた瞬間、目の前の景色が真っ白になった。
左右上下、全部真っ白い部屋に放り込まれたみたいな、そんな印象を受けた。
....どういうこと。さっきのは声の通り夢だったってこと?


「ひッ!?」
「.....?そう怯える必要はありませんよ?」


いや、怯えているわけではない。
振り返った瞬間に謎の人物が居たから、驚いて声を出しただけだ。
....何、震えている足は気のせい、気のせいだ。
いやだって、得体の知れないピンクの固まりと高級感溢れる本を手にしている人が居たら吃驚するでしょう。
 アワアワと混乱する頭を落ち着けようと脳内で奮闘していると、不意に目の前の奴が口を開いた。


「...ヒ、いッ..」
「私はドレミー・スイートと申すものです。ふふ、あなたの夢を食べにきたのですよ。つい先程まで、悪夢に魘されていたでしょう?」


ドレミーという奴の声と私の僅かな悲鳴はほぼ同時に音を奏でた。
その所為か、ドレミーには気付かれることは無かった。うん、不幸中の幸いというものだろうか。

 ドレミーは眉を八の字にし、眠たげな半開きの眼に逆三角形の口を作る。
どや顔ともしたり顔ともとれるその妙な顔付きの笑みは言い知れぬ大物感を与えた。
無論、語るまでもなく橋姫こと——水橋 パルスィはその笑みによって更に怯えることとなった。


「もう朝ですね...。出来れば貴女の誤解を解きたかったものですが、ここでおいとまします。...また、会うことが無いことをお祈りしています」
「は.....は、はは...」


ドレミーが私の視界からマジックみたいにその場から消えた。
いや...何、あの人..。助けにきてくれたのだと分かっているけど、威圧感と雰囲気がミスマッチしていて怖い。
私は渇いた笑いしか出来なかった。怖すぎて。




     ***




「....ん..、変な夢、見た気がする」


具体的に何かは分からない。
けど、夢を見たという感覚はあった。曖昧なフィルターが掛かったような、そんな感じ。

でも、思い出さない方がよさそうだ。
「夢なんて、ねぇ...」