二次創作小説(紙ほか)

Re: ただ喪っただけ。【東方project】 ( No.1 )
日時: 2017/06/27 19:33
名前: つくも (ID: VKUUDnij)

【異変の兆し〜博麗神社】


妙に人気のない神社。
辺りはやや薄暗く木々が生い茂る。
そう、これこそが博麗神社。
参道は獣道であり、参道ならぬ山道。
しかも神社までの道のりには幾つかの妖怪の棲み処が存在し、神社にたどり着く頃にはボロボロになっていることだろう。
その為にこの神社は人気がなく、ただただボロいだけであ——。
....ん?気が付けばいつの間に、戸が開いている。
どうやら私が物思いに耽っている間に、管理人が出ていったみたいだ。

残念だ。博麗神社のお話は又今度と言うことになる。
まぁ...、私の目的は神社の紹介をするわけでも何でもないのだが。
この神社の管理人である巫女——博麗 霊夢を探しているのである。
我々、妖怪たちは親しみを込めて霊夢、空飛ぶ巫女、博麗の巫女等と様々なあだ名で呼ぶ。
無論、私は霊夢と呼ぶが。


「紫?用が無いなら帰ってくれるかしら。...それとも、喧嘩を売りに来たの?」
「あら、失礼。ご用件がございます、それを伝えにね」


右から矢の様に飛んでくる怒りの声。
声のした方へ顔を向けると、例の彼女が立っており、余程苛ついている様子で顔を滅茶苦茶に顰めて眉間には深い皺を寄せている。
又、返答次第では退治するつもりなのだろう、手には札と祓い棒がしっかりと握られている。
彼女の苛々を倍増させてしまうかもしれないが...、私は出来るだけ落ち着いた様子で受け答えする様に心掛けた。
そう、それは彼女が呆けるか冗談かと受けとるか...。
フッと澄ました顔を取り繕えば、単刀直入に述べては常備している扇子を取りだし広げる。

扇子で口を隠しながら、彼女の顔色を伺う。
余程疑い深いのか、瞳には疑念の感情が露になっているし、握られた拳には少しの青筋が目立っていた。
...ふふ、こうして見れば、先代の巫女より大分可愛いものね。


「ああ、そう。...何の用?」
「...異変ですわ。そう、それも深い深い、複雑な..」
「.........?とりあえず大変って事よね」


ぶっきらぼうに乱暴に答えた彼女の顔は呆れを大きく主張している。
それでもやはり、眉間に皺を寄せたままで心底面倒そうに問い掛けてきた。
その僅かに魅せる好奇心と救世心に、口角をあげそうになるのを堪えつつも、酷く切ないぐらいに難しく想像もつかぬ様な答え方を敢えて取ってみせた。
そう、この用は私でさえも深くはわからない....、正に果ての異変であった。
だからこそ、誤魔化すかの様に、敢えて難しく言ってみせた。
恐らくこの異変は短時間では解決しようがない。
長期間を経てこその解決だろう。
そう私が言葉を返せば、彼女は不思議そうに首を大きく傾げた。
その直後、まるで承った様な態度で先程とはコロリと様子を変えて此方をジラリと見詰めてきた。
そうして一言、楽観的にいとも簡単に述べる。

                                   ...
私は異変が起こったこと、ただそれだけを静かに伝えれば、その場から静かに去った。
彼女からの問いは聞きたくなかった。




          ***




その場、一人取り残された霊夢はただただ首を傾げるだけであった。
去って行ってしまったもう一人——八雲 紫に対し、違和感を感じたのだ。

突然の嵐。
突然と言うまでには突然過ぎた異変の始まり。
そして——八雲 紫の感知の速さ。
霊夢は全てに全て、違和感を持った。