二次創作小説(紙ほか)

<プロローグ> ( No.1 )
日時: 2017/08/25 12:08
名前: ノボル ◆Z/gydMi1QM (ID: VKUUDnij)
プロフ: 修正

 見渡す限りに尽くされた、澄みきった淡い青。
緑々とした、自然を感じる空気。
ジリジリと焦がす様な暑さ。
そう、私達は幾年振りにこの地に訪れたのである。
 ……とは云え、私達の今居る場所は普通では来れない所。嗚呼、秘境とかでは無く、本当に常人じゃ余程で無いと難しい処。
それを我々の間では楽園(幻想郷)と呼んでいる。


     ***


 私の目の前には、私より幾つも精神年齢の幼い御主人が居る。
嬉々として嬉しそうな顔を見ることが出来るというのは少なからず嬉しいが、これはちょっと酷いのでは無いだろうか。
例え周りから見て頭がイカれている科学者であろうとも、18歳の若さにして教授になった天才の彼女にしちゃあ、納得行くのかもしれないが生憎ともそうは行かない。
 小学生や中学生だと言うのならば判るが、彼女は本来ならば高校生の大学教授だ。本来...っていうかこの世界では、かな。私達の世界じゃ、13歳で大学卒業だしな。
まぁそんな話は置いといて、御主人は何をそんなに遠征を嬉しがるのか。いつも御主人の傍に居た私ですらも解らない。というか喜びようが気持ち悪かった。幾度か御主人の暴走を止めてきた私が言うのだから余程だ。


「御主人」
「何よちゆり」


 嗚呼、駄目だ。
嬉しすぎて御主人の返事が短い。大体、ちょっと興奮したら引くぐらいの荒い鼻息と饒舌で魅力をあれだこれだ喧しい位に捲し立てて来るのに、今日の御主人と言ったらこれだ。何事も上の空だ。
ついでにそんな御主人の変わり様に私の心も空っぽだぜ、何てな。

 私は今日で何度目になるか分からない溜め息を吐く。白い明かりで照らされた研究室に備え付けられた大きなガラスから無機質な空を一瞥し、その視線をゆっくりと再び御主人に戻す。
否、私も御主人程では無いが、またあの場所に行けるのかと内心楽しみにしてはいる。
だからハイで周りが見えなくなる頭の可笑しい御主人の気持ちも分からなくは無い。
 だけど……ここまで来ると流石に締めなきゃいけないぜ、御主人様。


「御主人、嬉しいのは分かるぜ」
「あら、ちゆりもそう思う?やっぱりそうだよね、霊夢に久し振りに___」


……常に明るい御主人様に幸あれだぜ。
覚悟を決めた私は何時もの様に近くのパイプ椅子をおもむろに手に取れば、御主人に向かってそれを全力で振りかざした。
鈍い音を立てて人がバタリと倒れる音がした直後、作業台の様なデスクの様なそんな白い机に何かが勢いよく乗っかる音がした。