二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【宝石の国】パパラチアサファイアの弟 ( No.2 )
- 日時: 2018/01/16 20:35
- 名前: わよーん (ID: V4RVuUEP)
第2話「誕生」
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目が覚めると、すでに空は明るくなっていた。
気持ちの良い晴れの日だ。窓から身をのりだし、久しぶりの光を浴びる。
「おはよう。」
誰かの声が聞こえて振り返ると、そこにはジェードが立っていた。
「おはようございます。相変わらずお早いですね。」
彼は真面目な宝石で、規則正しい生活を送っている。既に髪もセットしてあり、頭の後ろ側でしっかりと結ってあった。
「朝礼、もう終わってるぞ。」
少し笑ってジェードが答えた。
「あ、もうそんな時間ですか。」
どうやら少し寝すぎてしまったようだ。らしくない。
「すみません。私が寝ている間に誰か来ましたか?」
もし居たら申し訳ないなと思いつつ確認する。
「大丈夫だ。誰も割れてない。私としてはもう少し寝ていてほしいくらいだ。」
心配そうな顔をしている。
「あら、どういう事です?」
ジェードが皮肉を言ったわけでは無いのはわかっているが、少し茶化してみた。
「そ、そう言うことじゃない!ただ、ルチルが働き過ぎてるから心配でだな....!」
彼は真面目過ぎて何でも真に受けるので、からかいたくなる。
「ふふ、冗談です。....どちらにせよもう起きなければ。いつ月人が来るかわからないですからね。」
そう、戦いで負傷した宝石を治療するのが私の仕事だ。晴れている今日は、月人が来る可能性があるので、私がいつまでも寝ている訳にはいかない。
「ああ、そのことだが、朝礼で言われた。」
...やはり早く起きたほうが良かった。
「ほら、最近晴れ続きだったろ?だから、昨日も来たし、しばらくは月人は出ない....と、ユークレースが言っていた。」
「ああ、ユークレースが。それなら信憑性ありますね。」
「そう言うことだ。だからルチルもたまには休め。」
「そうですか。では私のしたいことをします。」
「ん?」
首を傾げているジェードを尻目に、さっさっと服を着替え始める。
「どこか行くのか?」
「ええ、緒の浜まで。」
私がそう言うと、ジェードは半分怒ったような、呆れたような何とも言えない顔になった。
「お前....今のは普通休む所だろ....緒の浜は結構遠いし、月人もいつ来るかわからない。」
その言葉を聞いて、私もすかさず言い返す。
「大丈夫ですよ。私も昔は戦っていたわけですし、それに、今日は月人が出る確率低いんじゃありませんでしたか?」
自分がさっき言った事だからか、ジェードがうぐっと唸った。
「確かにっ.....!」
「私も子供じゃないんですから。」
当たり前だが。
「わかったよ。元から私がどうこう言えることじゃないしな。」
ついにジェードが折れた。
「ええ、そうですね。では。」
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大分歩いて、やっと緒の浜まで来た。
ここ最近忙しくて来れていなかった。前回集めた物は全部試したし、丁度良かった。
「また落ちていないですかねー。」
埋まった宝石をとる為に持ってきた鑿や金づちを置き、砂浜にしゃがんだ。
緒の浜。ここで私達宝石は生まれた。しかし、私達のように動けるものは稀らしく、大抵のものは物言わぬ塊として《生まれ損なう》。
私はその生まれ損ないをパパラチアの穴を埋める素材として使っている。
「同属の宝石があれば良いのだけれど。」
もし見つけた時傷付けないように手を使って砂を払う。
パパラチアは生まれつき体に穴が空いている。その穴を埋める為には、パパラチアに近い宝石を使わなければいけない。なるべく同じ硬度、靱性のものが良い。近ければ近いほど、パパラチアの稼働時間は長くなる。もしかすると、ずっと起きていることも可能かも知れない。
「いっそサファイアでも落ちていないかしら。」
パパラチアの正式名称はパパラチアサファイア。サファイアの中で、赤と橙の中間の色のものを言う。硬度も靱性も同じ。違うのは色だけ....。ダイヤモンドとイエローダイヤモンドが良い例だ。
そんな事を考えながら砂を払っていると、砂の中にキラリと輝くものを見つけた。
濃いオレンジ。夕焼けの色だ。
.....見たことのない宝石だ。
急いで掘り進める。この瞬間は、いつも興奮で手が震える。大きな期待と__.....
小さな諦め。
さらに掘り進める。かなり大きな塊のようだ。そして日に当ててわかった。
これは、サファイアだ。
それに気づいた瞬間、よりいっそう手が震えた。緊張で、息が荒くなる。
....___ついに塊が姿を現した。
それは、私達と同じ形をしていた。完全な、ヒトガタだった。
一気に熱が冷める。ああ、新しい宝石が生まれたのか。
「生まれ損ないの可能性も....!」
その可能性に気付き、私はその宝石に触れた。少し揺らす。
「動くな、動くな、動くな...」
とても長い時間に感じられた。
宝石が、少し動き、
「う....」
と声を漏らした。
その時私の頭に、とても恐ろしい考えが浮かんだ。
そうだ、ここで砕いてしまえば良い。
今なら誰も見ていない。
彼らには、このことを言わなければ良い。
私は持ってきていた金づちに手を伸ばした。
「ルチル!」
突然名前を呼ばれ、思わず手を引っ込めた。
振り向くと、ジェードが居た。
「あ....どうして。」
「やっぱり心配でさ。それに、手伝えるだろ?」
そう言ってジェードは笑った。
「....そうですか。」
「どうした。ルチルらしくない。」
「いえ、ありがとうございます。助かります。」
そう言って宝石を指差した。
「さすがにあれを一人では運べませんから。」
「ん...?あ、新しい宝石じゃないか!なんで早く報告しない!」
オレンジ色の宝石.....オレンジサファイアを見つけたジェードが、また怒ったような呆れたような顔になって騒いだ。
「......すみません。」
ごめんなさい。
それは、誰に対しての謝罪だったのか。
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今回はいつもより長くなりました。
多分もうない。
主人公ルチルみたいになってきた。オリキャラが今のとこ「う....」しか言ってない。