二次創作小説(紙ほか)

Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.106 )
日時: 2018/03/06 12:39
名前: テール (ID: lQjP23yG)

キャラクターエピソード 「テオドールの過去」



「メル、そろそろ教えてくれないか。
 殿下が暴走した理由は魔力片プラグの暴走じゃないのか?」

アルト、ラーマ、エルドゥがメルを捕まえて
レーベンのアタールの館のある一室に座らせて、
ファクトライズ公国の城でメルが話そうとしていたことを、
メルから真実を聞こうとしていた。


「うん、魔力片プラグの暴走じゃないよ。
 そもそもテオには魔道の素質がないしね。
 あれは・・・・10年前になるかなぁ・・・・。」

















今から約10年前の大陸歴972年11月17日。


今日はテオドールとメルが城内で遊ぶ日であった。


「メル!今日は何して遊ぶの?」
「ん〜、そうだなぁ・・・・」

「メル!テオ!」

メルとテオドールが話をしているとそこへルーネが現れる。
10年後の姿より幼い姿である。
テオドールはルーネの姿を見てにこりと笑う。

「ルーネ!ルーネも一緒に遊ぼうよ!」
「うん、いいよ。何するの?」

そこでメルが二人に提案する。

「このお城の地下にある、「開かずの間」に入ってみようよ」

二人はメルの提案にぎょっと怖気づいた表情で見た。

「い、いいの?あそこに入ると父上に叱られちゃうよ」
「そ、そうよ。それにあそこには見張りがいるわ。」

二人の意見にメルは笑いながら指を立てる。

「大丈夫、ちょっとだけならバレないよ。」

二人は不安そうな顔をするが、
メルの提案をのんで、開かずの間へと向かった。











「それがいけなかったんだ。」

メルは3人に恨めしそうに言ってのける。

「ぼくが、あんなこと言わなければ、テオは・・・」


「あんなこと?」

エルドゥが少し考えて尋ねる。

「うん。テオは、開かずの間に先陣を切って入ってしまったんだ。」
「・・・・・開かずの間には、何がいるんですか?」

アルトは口に手をあてて聞いてみる。
メルは、顔に影を落とした。

「「闇竜ファラク」の亡骸。・・・・魂と一緒に封印されていたんだ。」
「・・・・!!」
「お、おい、まさか・・・!?」


「闇竜ファラク」は、かつてレヴィア王国に現れた邪竜の眷属で、
その圧倒的力で王国の人々を次々に虐殺する、悪逆非道の飛竜であった。
しかし、レヴィア王国国王が「星剣アルスラン」を用いて、
ファラクをレヴィア王城地下に封じ込めたという伝承が残っている。

その悪逆非道の飛竜が伝承通りに地下に眠っていたとすれば・・・
アルトは恐ろしくてたまらなくなった。

メルはさらに続ける。












不安でたまらない、という顔で見るルーネに対し、
テオドールはルーネに笑顔を向けた。


「僕が先陣を切るよ」

開かずの間の扉の、封印の魔法陣をかき消したテオドールがそういって、
扉を開けようとしていた。

「や、やっぱりやめましょうよ・・・・!」

ルーネは心底不安そうに声を震わせてテオドールを止める。

「大丈夫だよルーネ!ちょっと入って戻るだけだよ!」


「う、ん、気を付けてね・・・」
「テオ、何かあったらすぐ戻ってきてね!」

テオドールは中に入り、扉が閉まった。







「うぅーん、真っ暗だなあ。」

テオドールは暗い部屋の中を見回す。
恐怖なんかないが、胸のドキドキが収まらない。
テオドールは前に進み続けた。


「ん?・・・・これって」

テオドールは何かを見つけて目の前の何かを見据える。
それは、黒く天井まで届くくらいの竜の亡骸であった。

だが、亡骸であるはずのものなのに、鼓動がわずかに聞こえる。
気味が悪いなと思いながら周りを見ていると



「え、なにこれ・・・!?」

テオドールは何かの音を聞いてその場に座り込む。

「や、やだ!黙ってよ・・・!」

テオドールは誰かの声に向かって叫ぶ。
だが声は問いかけ続ける。

その声は、恐ろしく太く重い声であった。
この世のものとは思えない声が、テオドールに問いかけ続ける。




<力が欲しくないか?>

「い、いらない!黙ってってば!」


<すべてを変える力が>

「いらないって言ってるでしょ!」


テオドールは否定し続ける。
だが声は止むことがない。











「遅いね、テオ。」

ルーネが心配そうにつぶやく。

「どうしたんだろう?」




メルがそういうと、扉が開きテオドールが戻ってきた。

「テオ!よかった、どこも怪我はないのね?」
「どうだった?中に何かあった?」

テオドールはメルの顔を見た。

「ご、ごめん・・・今日はもう帰って」

テオドールは顔を見せずに二人から離れようと走った。

「ま、待って!どうしたのテオ?」
「そ、そうだよ!テオらしくないよ。」

テオドールに近づく二人。


「ハア・・・・ぐっ・・・・いいか、ら。」

テオドールは胸を苦しそうに押さえつける。

「どうしたのテオ!やっぱりどこか」
「いいから帰って!お願いだから!!」

テオドールは普段出さないような声を出した。

「ギ・・・ハア・・・・ごめ、ん、大声出しちゃっ・・・て・・・」

テオドールの様子に呆然とする二人に、テオドールは謝った。
彼の顔色はどんどん悪くなる。

「ねえ、ノルド様に言った方が・・・」
「う・・・ん・・・」

メルはテオドールに肩を貸して、謁見の間へと急ぐ。
ルーネもそれに続いた。











謁見の間を目の前にしてテオドールはその場にへたり込んだ。

「殿下!?」

一人の兵士がテオドールに近づく。

「あ、あの!テオが急に苦しみだして・・・!」

メルが状況を説明し始めると、テオドールは頭を抱え始めた。



「あ・・・・ああああああアアアアアアアアァァーッッ!!」
「テオ!?どうし・・・うわあ!」

テオドールが突然メルに対して攻撃を仕掛けた。


「殿下、なに・・・ぐ、ぐあぁぁぁーッッ!!」

テオドールは近づいてきた兵士の首を掴み、首をへし折って分断させる。
ルーネとメルはその光景を間近で見て、目を見開いた。
大量の血液が飛びメルとルーネが血を浴びる。

「え・・・え・・・・?」
「な、にこれ・・・・」

メルもルーネも状況を把握できずにいた。
テオドールを見るが、テオドールの姿は元の彼のものではなかった。
目は獣のように獰猛で、蛇のように鋭く、
気迫は獲物を狙う本能を剥き出しにした猛獣そのもの。

その姿を見て、メルもルーネも震えることしかできなかった。


「何事だ!?」

そこへノルドが飛び込む。
セリカもその場へやってきていた。

「これは・・・!?」
「テオ!?」

テオドールはノルドの方を見る。
そして、素早い動きでノルドの首元を狙った。

「くっ・・・!」

ノルドは手に持つレイピアでテオドールの攻撃を防ぐ。
幼い見た目だったが、力が強く、油断すれば首を掻っ切られそうであった。
そこへ、ノルドはテオドールの足を掴んで床に投げつけた。

しかし、テオドールはしなやかな動きで着地、再びノルドに向かって突進した。


「なにっ!?ごあぁぁっ!!」

テオドールはノルドの足を蹴り、バランスを崩したところで
足を掴んで床へと力いっぱい叩きつけた。

「テオ、やめなさい!」

セリカは魔導書を開いて魔術を放った。
閃光がテオドールを襲うがそれを素早い動きで避けるテオドール。

そしてテオドールの蹴りが左頬に直撃し、セリカは吹き飛ばされる。



兵士たちは怖気づいて前に出ることができなかった。
テオドールはそれを見て兵士たちにも襲い掛かる。



「せ、セリカ!あれはおそらく、「闇竜ファラク」に憑りつかれているものと!」

幼いコハクがセリカを介抱しながら叫ぶ。
セリカが壁を使って立ち上がるが、足元がおぼつかない。

「そ、そのようね・・・どうすれば・・・」
「私に考えがある。」

倒れていたノルドが胸を抑えながら立ち上がり、セリカとコハクに考えを伝える。
2人は驚き、やるせない顔でノルドを見る。




「・・・・それで本当にいいのですか、陛下?」
「息子を救えるなら・・・それで。」
「・・・・。」



















「それで?」
「あとは、よく覚えてないけど・・・・」

メルはうーんと、頭を抱えながら説明する。


「ノルド様は謁見の間に魔法陣を書いて自分を囮にテオの中にいるファラクを封じ込めようとしたんだ。」





















「グゥゥ・・・・」

テオドールはノルドに向かって唸る。
ノルドは黙ってテオドールを見た。



「グアアァァァァァァーッッ!!!」

テオドールは咆哮を上げてノルドの胸に爪を立てた。
ノルドはその瞬間を待っていたかのようにテオドールを抱きしめる。
その瞬間、ノルドの足元の魔法陣がカッと光始め、二人を包み込む。

「ギッ!?ガアアァァァァァーッッ!!」

テオドールは暴れてさらにノルドの胸に深く爪を立てる。

「あぐっ・・・!!」
「陛下!」
「近づくな!このまま耐えれば・・・!」

ノルドはテオドールを決して離さなかった。

そして光は消え去り、テオドールは元の心優しい少年に戻る。
ノルドはそれに満足したように、笑みを浮かべ、
その場から崩れ落ちるように倒れた。



「すまないな、テオ・・・・」
























「・・・・なるほど。」

ラーマはそうつぶやいた。


「うん、そしてそれから、ノルド様は亡くなって、テオは感情を表に出さなくなってしまった。
 それもこれも、ぼくが悪いんだ・・・
 ぼくが・・・・」
「先王は、世間では病死とされていましたが、まさかそんなことが・・・」
「・・・・・・。」

一同は黙り込んでしまった。



すると、部屋の扉が開いた。

「ヒスイ様とコハク様が目覚められましたよ。」

侍女がそういうと、そそくさと立ち去った。
ラーマとエルドゥ、アルトはたちまちパッと明るい表情になる。

「よし、双子の顔を見に行くか!」
「そうですね!」

「しっかりしろよ、殿下の親友!
 殿下の傍で殿下を支えられるのはお前とルーネ様の役目なんだぞ!」

ラーマはメルの肩に手を回して笑った。
メルも、少し黙って頷いた。


「・・・・うん。ありがとう。」