二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.107 )
- 日時: 2018/03/06 21:17
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
第六章 少女の歌声
出発の前日、メルシアとゼウラがテオドールの下へやってきた。
「王子、ちょっといいか?」
「ゼウラにメルシア・・・一体どうしたんですか?」
テオドールは首をかしげて尋ねる。
メルシアは両手を合わせて握りしめる。
「あの、私たちを正式に騎士団に入れてもらいたいと思いまして・・・」
「・・・ですが、姉上の救出にあなた方は無関係です。
無関係の民間人を巻き込むのは・・・・」
「いや、無関係じゃないさ」
テオドールの言葉を遮るゼウラ。
ゼウラは続けた。
「俺たちは共に剣を交えて、協力して共和国を解放した。
ついでにファクトライズ公国の解放もな。
もう民間人と騎士の関係ってもんでもないだろ。」
「・・・・・。」
テオドールは少し考える。
共和国の危機に二人は騎士団に協力してくれた。
民間人の立場であるにも拘らず、だ。
「今一度お聞きします。
騎士団に入って、何をなさるのですか?」
テオドールは鋭い目で二人を見て、尋ねる。
答え次第では、是が非でも断り、共和国にいさせるようアタールに願い出るつもりでいた。
ゼウラとメルシアは答える。
「守るべき者のための、風となる。」
「大切な人のために、剣を取ります。」
テオドールは、その答えを聞くと、二人に手を伸ばした。
顔つきは穏やかなものであった。
「ゼウラ、メルシア。
あなたがたを騎士団に加えます、守るべきもののために・・・・
民のために、共に戦いましょう。」
大陸歴983年2月8日
騎士団は準備を完了し、旅立つ時がきた。
新たに騎士団に加わった者を含めて、総勢1000名の勇敢な騎士たちが
共和国からの進軍を開始した。
数時間前・・・
「テオ、君に会わせたい人物が何人かいるんだ、
ちょっと時間いいかな?」
アタールはテオドールを呼び止めた。
「問題ありませんよ。」
「こちらへついてきてください。」
アタールに案内されて、テオドールはある部屋に入る。
部屋には、オルダンに化けていたゾロアークの盗賊、「アッシュ・ヨーク」
他数名がテオドールを見て、一礼した。
「実はこの方がたを騎士団に加えてほしい。
君が眠っている間に集めた有志なんだよ。」
アタールがそういうと、赤髪短髪の狐目盗賊、アッシュがテオドールに向かって叫ぶ。
「テオドールさん!俺を騎士団に加えてほしい!
ついでに弟子のジーヴァもつける!」
「ちょ、師匠!拙者はついででござるか!?」
「当然だろ!」
以前テオドールに毒の矢を放った暗殺兵・・・
「ジーヴァ・バグ・タイラント」がアッシュの失言に突っ込んだ。
まさにコントである。
「あなた方は帝国軍でしたよね、なぜ我ら騎士団に?」
アッシュは真剣な顔つきになる。
だが細く閉じている目は開かない。
「俺、共和国を内部から潰せって前金もらって依頼されたけど、
失敗したからどのみち帝国に殺されるし・・・・
ニンフィアのお嬢さんが、閣下に頼んだらしいんだ。
「帝国軍の捕虜を解放してほしい」って。
だから、お嬢さんに恩返しがしたい。」
ジーヴァもうんうんとすごい勢いで頷く。
「拙者らは一度受けた恩は忘れないでござる。
ルーネ殿は我らの恩人!
なので騎士団に入り、ルーネ殿のためにこの命を捧げたいのでござる!」
「頼むよ王子!」
アッシュとジーヴァは深く頭を下げた。
「いえ、その思いだけで十分です。
アッシュ、ジーヴァ、共に戦いましょう。」
テオドールは二人に手を伸ばし、握手した。
二人は満面の笑みを浮かべる。
「えーっと、あなたがたは?」
テオドールはすぐ隣にいた少年と少女に問いかける。
少女は少年の後ろに隠れて、テオドールを見る。
「あ、えーっと・・・・
僕らも騎士団に入れてもらいたいなって思って、ここに来たんだ。」
少年は気さくに答える。
少女は若草色のふわっとしたセミロングの髪で、空色の瞳でこちらを不安そうに見ている。
髪には花びらが6枚集まっている濃いピンクの花・・・グラデシアの花と呼ばれる花の髪飾りを飾っている。
服装はエメラルドのような色のコートを羽織っているが、
とてもじゃないが戦いに向いているとは言えない。
少年は少女に顔がそっくりで、右わけの緑色の髪が特徴的だ。
目は青く、凛々しい顔つきである。
深緑のコートを羽織っているが、
やはりこちらも戦いに向いているとは言えない格好である。
そんな二人が騎士団に加入したいと願い出たのだ、
何か理由があるはずに違いないと踏んだテオドールは、二人に尋ねる。
「お二人は、なぜ騎士団に入りたいと願うのです?」
「変わりたいんだ。」
テオドールに向かって強くはっきりと言う少年。
「レーベンがあんな目にあったのに、誰一人国を守ろう!とか
国のために戦おう!って決意する人がいない。
だから僕たちが変わらないといけないって・・・・
そう思って騎士団に入ろうって決意したんだよ!」
「は、はい!
私、戦うのは嫌だし、争いは苦手ですが・・・
でも・・・でも、逃げてるだけじゃ何も変わらないと思うんです!」
二人の訴えに、テオドールは目を細めた。
「お二人、お名前を聞かせてください。」
「は、はい!
僕はアクライ・セルア・レーフィトリアだよ!」
「えと、シーナ・ミエス・レーフィトリア、です!」
「「アクライ・セルア・レーフィトリア」、
そして「シーナ・ミエス・レーフィトリア」・・・・
あなたがたを騎士団に歓迎します。
共に民を守る剣となりましょう。」
テオドールは二人に握手を求め、手を伸ばした。
二人はぱあぁと明るい表情で彼を見て、
テオドールの握手に応じた。
「はい、よろしくお願いします!」
「よろしく、王子様!」
新たな仲間を加えた騎士団はディーテ共和国の北端・・・
フェティエ山脈のふもとまで来ていた。
フェティエ山脈は低い土地でも雪が降って、移動に支障が出る。
しかし、ここを超えねばルフト・ド・ドレール連合王国にたどり着くなど
夢のまた夢なのである。
騎士団は、ルフト・ド・ドレール連合王国の王都メイベルを目指し、進軍していた。
しかし、フェティエ山脈へ差し掛かるその前に
なにやら人の皮が焼ける臭いが漂っていた。
「な、なんだ、この臭い!?」
ラーマは顔をしかめる。
騎乗していたマリーもぐぎゅうと声を漏らす。
「あちらの方です、行ってみましょう!」
アルトが指さす方向へ、騎士団は進むことにした。
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.108 )
- 日時: 2018/03/06 21:43
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
臭いがだんだんきつくなり、臭いに混じって
木が焼ける臭いと熱気が騎士団に迫ってくる。
「これは・・・・!?」
「ひ、ひどい・・・・」
テオドールが驚いて目を見開き、ルーネが絶句する。
その理由は、目の前の光景である。
木々は焼け落ち、集落があったであろう場所には、
今も炎に包まれている天幕、斧や尖った木が集落の住民達の顔や背中を貫き、
炎で焼きただれ、元の姿を確認できないが、
皆共通して青い髪であった。
「・・・・天幕、青い髪、天幕の中の楽器・・・・
おそらく「チルタリス族の移動住居」と思われます。」
アルトは顔をしかめながらテオドールに伝える。
「ひ、ひどいです・・・こんな・・・・!!」
「なんだよ、これ!?」
シーナとアクライがこの光景を見て驚きを隠せない。
「皆、生存者がいないか捜索してください。」
テオドールは騎士団に伝え、騎士団はそれぞれ散らばった。