二次創作小説(紙ほか)
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.114 )
- 日時: 2018/03/07 19:40
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
ラーマはマリーに騎乗したまま、空から生存者がいないか捜索していた。
ラーマは歯を食いしばる。
「生存者、いてくれよ・・・!!」
ラーマの脳裏にはある場面が浮かんでいた。
家族諸共故郷である村が焼かれ、全てを失い、呆然と炎に包まれる村を見ている自分の姿を。
ラーマは首を振って捜索を続けていた。
地上では、騎士団が消火活動しつつ、生存者の確認を急いでいる。
水族はメルシア他数名のみで、川も少し離れた場所にしかないので、
消火にはかなり手間取った。
「一体ここで何が起きたんでしょうね?」
アルトが木のバケツに水を汲みながら、一緒に水を汲むリラに話しかけた。
リラはうーんと声を出しながら頭を悩ませている。
「チルタリス族の楽器が目当てでもないし、
チルタリス族の秘宝目当て・・・・でもないだろうし・・・」
「渡り鳥で各地を転々としているチルタリス族が
誰かの怒りを買った・・・なんてことはないでしょうか?」
「温厚な人たちばかりだからそれはないと思いたいけどね。」
リラの答えにアルトはますます難しい顔をする。
「まあ、今は消火活動をしましょう。
ドリズル、ちょっと重いけどこれを運んでちょうだい。」
リラはアルトと自分のバケツをドリズルの身体に巻き付けた。
ドリズルは顔をしかめていたが、なんとか低空飛行をしつつ、バケツを運んでいた。
火は鎮火し、集落全体が見渡せるようになった。
天幕は布が燃え尽き、中身が丸見えである。
ふとコハクは、子供を抱いてうつぶせになって倒れている
青い髪の女性の死体に気が付く。
「どうした、コハク?」
ヒスイがコハクに尋ねる。
コハクは子供に触れる。
「・・・・!この子、まだ生きています!!」
コハクは騎士団に向かって叫んだ。
テオドールとルーネがコハクに近づく。
「生存者が?」
「はい殿下、この子を・・・・」
コハクが女性の死体をそっとどかせて、子供を抱き上げる。
子供は青い髪のウェーブがかかった、後ろ髪を二つに結わえたおさげの、
煤けた白いワンピースを着ている、まだ年端もいかない少女だった。
瞳を閉じて眠っているように見える。
「とくに外傷もありませんし、気絶しているだけだと思います。」
ルーネは少女の額に手をあてて、テオドールに伝えた。
「どうやらこの女性はその子の母上のようですね。」
テオドールは女性の死体を見ながらつぶやく。
「殿下、他に生存者・・・は・・・・」
ラーマは上空から降りてきて、生存者がいないことを報告しようとテオドールに近づいた。
しかし、少女の姿を見た瞬間、ラーマは固まってしまった。
「・・・・?どうしました、ラーマ?」
「え、あ、いえっ・・・・そ、その子は?」
ラーマは振るえた指で少女を指さす。
「ああ、先ほど救出した生存者です。
・・・・ラーマ?」
ラーマは顔色が悪くなる。
テオドールはその様子に、ラーマに声をかける。
「ラーマ、どうしたんですか?」
「あ、いえ・・・すみません、ちょっと水被ってきます。」
ラーマは歩いて川に向かった。
マリーもラーマについていく。
「どうしたんでしょうね、ラーマは」
「わからない・・・」
コハクのつぶやきにテオドールは目を点にしながら答えた。
「・・・・リーナにそっくりじゃねえか畜生!
あいつは死んだんだ、俺の腕の中で・・・!」
ラーマは川に来て水を被りながら必死に言い聞かせている。
「生きてるはずがねえ、この目ではっきり見た、
手で触れて確認したんだ・・・!」
脳裏に炎に包まれる村が見える。
ラーマ以外、全員無残な姿で死んでいた。
ラーマの妹、リーナも・・・
「クソッ!!」
ラーマが騎士団の元に戻ってくると、少女が目覚めていた。
「おかえりラーマ・・・ってびしょびしょじゃないですか!」
コハクが驚いてラーマを見る。
ラーマは、笑いながら手を振った。
「大したことねえよ・・・女の子の方は目覚めたみたいだな。」
少女はエメラルドブルーの瞳をラーマに向けていた。
「おじさん、濡れているのです、風邪ひいちゃうです!」
「お、おじさん・・・」
ラーマはがっくりと肩を落とす。
ヒスイがすかさずラーマの肩をたたいた。
「おじさんだってよ、ラーマおじさん」
「うるせえ、ローブ破るぞ」
「ねえ君、お名前はなんて言うの?」
コハクは優しい声で少女に尋ねる。
少女はえへんと声を出しながら答えた。
「ニナは「ニュナンビュス・エクリッスィルナ」です!
今日はちゃんと全部言えたのです。
長いので「ニナ」と呼ぶといいのです!」
- Re: ポケタリアクロニクル-聖戦の伝承- ( No.115 )
- 日時: 2018/03/08 12:12
- 名前: テール (ID: LAu9zylb)
ニナが保護されて、テオドールは集落の近くにある開けた場所で野営を行おうと提案した。
この辺りは水場も近くにあり、周りもよく見えるので最適な場所である。
陽は完全に落ち、薪が燃える明かりで、周辺は少し明るくなっていた。
「ニナ、どうでしょうかそのお洋服!
とっても似合ってますよ!」
コハクが歓喜の声を上げながら両手を合わせる。
ニナの服装は、青いエプロンドレスの、スカートにスリットが入っている
なんともふわふわしたものであった。
スリットからは銀色のクリノリンがのぞいていて、ふわっとしたカボチャパンツを履いていた。
頭には水色のベールをかぶっていて、まるでシスターであった。
ニナはエプロンドレスの端を掴んで、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「・・・・ごわごわしてて動きにくいのです」
「でも先ほどの服よりはかわいいですよ!」
「む!そ、そうですか?」
ニナは顔をにやけさせていた。
コハクは続ける。
「そのお洋服は、昔セリカが着ていたのですが、ごわごわするって理由だけですぐ脱いでしまわれたんです。
そこで私はひそかにその服を改造して、誰かに着せようと思ったんですが、
まさか役に立つ日がこようとは!」
「ま、まあそれはさておき、よかったですね、かわいい服をもらえて!」
ルーネがニナに笑顔を向けた。
「はい、ありがとうです、コハク!」
ニナがぺこりと頭を下げた。
テオドールはニナに詳しく話を聞こうとする。
「ニナ、ここでなにがあったのですか?
なぜチルタリス族が襲われたのですか?」
「うーん、覚えていないのです・・・
変な男の人がいっぱいここにきて、それでそれで・・・」
ニナは腕を組んで唸る。
「テオ、多分ショックで一部分だけ記憶喪失をしているのかもしれません。」
「変な男の人がいっぱい・・・もしかしたら、バール山賊団の残党がこの辺で屯っている可能性があります。」
ルーネはテオドールを見て首を傾げる。
「でもバール山賊団は、あの時、ほぼ鎮圧したと思うんですけど・・・」
「しかし全員を捕らえた訳ではありませんからね、
恐らくまだ略奪行為を行っている輩もいて不思議はないでしょう。」
テオドールがそういうと、
複数の足音がこちらに近づく音が聞こえた。
「誰だ!?」
テオドールは手に剣を構え、闇の中へと叫ぶ。